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Sunday, June 21, 2020

世界が崩壊しない前に 32: コロナに見る日本政府の危機管理 2



*1

今回、はからずも行政サービスの稚拙さから腐敗と癒着の体質が露呈した。
さらに経済政策の根本的な欠陥も浮かび上がった。



 
< 2.アジアでも遅れをとった日本 >


* 行政サービスと経済政策の問題 *

今回、致命的な体質が露呈した。
1. 国民向けの経済施策は政府の念頭に無い。
2. 国民向けサービス体制は手詰まり。


当初、政府は復興と銘打って牛肉券や旅行クーポンを高らかに謳った。

これは弱っている業界を助け、その出費の大半が余裕のある人々の懐から出ることになり、一挙両得だと好感する人もいただろう。

実は、これは経済理念と国民目線の無さを示している。

これでは本当に苦境に陥った店舗の救援が出来ず、また裕福な人の節約を助長するだけです。
例えば、政府が復興の為と称して、ダイヤモンドや世界一周クルーズの購入費を半額負担すると言っているに等しい。
結局、ふるさと納税と同じ人寄せパンダで、自民党に群がる業界団体を潤し、逆累進課税にもなる。

必要なのは他の先進国が実施ているようなコロナにより困窮している事業体や失業者への素早い直接給付です。
日本では、なんとか一律10万円給付が成った。

経済対策の遅れを見ていると、政府が国民の経済弱体化を甘く見ていることがわかる。
政府は、放置することにより国民と事業体が、失業・倒産・大学中退などで再起出来なくなることを意に介していない。

一方、日銀は金融不安払拭の為に株式の爆買いを加速させ、金融緩和に邁進している(米国でも)。
これは更なる金融危機の芽を大きくし、結果的により巨大なバブル崩壊が襲い、大規模な倒産と失業、そして格差拡大が圧し掛かるだけです。
ここ60年繰り返してきた。


なぜこんなことになったのか?

一にも二にも、政府の経済政策が、産業界をリードする大企業と金融界を優遇することだからです。
国民の事は二の次三の次に過ぎに成り下がった(この問題はいずれ説明します)。


もう一つの問題は、持続化給付金支給などに見られるサービス体制の欠陥です。

今回、パソナや電通がほとんどのサービス業務で幾度も中抜きをしていることが露見した。
両社は以前から政府と癒着し、巨大な利権と実権を握り、非正規問題とマスコミ支配と言う日本の二大悪を担って来た。
両社を経由した業務がお粗末になるのは必然です。
これは国民へのサービス体制の不備と言うより、根絶しなけらばならない自民党・官僚の腐敗・癒着の構造です。

しかし問題の根はさらに深い。

それは1980年代から自民党と官僚が共同で推進して来た、偽りの構造改革・緊縮政策の一つの結果です。
ポイントは、公務員を減らし民間委託に奔走したことです。

既に日本の雇用者に占める公務員比率はOECD諸国の最低になり、平均の1/3に過ぎない。
だが減って当然の巨額の特別会計は減らず、行政の改善も見られない。
つまり、無数の外郭団体と民間(政商のパソナや電通など)と言う隠れ蓑に予算は食い尽くされ続けている。

さらに悪い事に、このサービスは以前の体制より遥かに非効率になっている。
そこでは、一部の天下りが高給を貪るが、多くの従事者は非正規に代えられ、薄給と不安定な身分に落とされ、意欲とスキルは低下し続けている。
あらゆる省の外郭団体、第三セクターが劣化の危機に晒されている。
民間ともなれば、従業員はさらに規制の無い過当競争に晒され、全てが劣悪になる。

これが現在、日本を覆い尽くす政府による国民サービスの実態です。

この問題の本質は、見かけの改革だけで政府・官僚・政商の腐敗と癒着が強固になり、さらにその不透明さと隠蔽により、全貌が掴めなくなったことです。

特に日本は米国流の自由放任経済に加えて、自民党長期政権を放置したことが災いしている。
このような状況で、様々な地球規模の危機に対応出来るはずがない。


次回に続きます。




Friday, June 19, 2020

世界が崩壊しない前に 31: コロナに見る日本政府の危機管理 1





*1

今回のコロナ危機は、日本政府が見掛け倒しだったことを露見させた。
これで、今後迫りくる様々な危機に対応出来ないことが明白になった。
3回に分けて解説します。


 
*2


* 日本政府の三つの欠陥 *
今回は二つを見ます。

パンデミックなどの危険予知と予防策

以前から警鐘が鳴らされていたにも関わらず、感染症関係の予算削減、医療体制(保健所、感染症病棟)の縮小が進んでいた(他の先進国でも)。
現政権で加速すらしている。

これは中央政府だけでなく自治体においても同様で、緊縮と改革を売りにした首長に多い。
概ね、彼らは科学的知見が乏しく、声高に経済優先(?)を唱える(トランプ大統領など)。
日本は、原発事故の予防でも同じだったが、まったく教訓を得ていなかった。


コロナの感染対策

・クルーズ船寄港拒否のドタバタ
・武漢で発生後も中国観光客の勧誘キャンペーン
・海外からの日本人帰国者の水際対策の抜け
・オリンピック固執による対応の遅れ
・学校閉鎖や満員電車などの三密回避のアンバランス
・補償の無い自粛要請による不公平と洩れ
・捉えらきれないクラスター分析
・設備があるのにPCR検査が不足し、説明と運用のドタバタ
・医療従事者用備品や衛生用品の不備と支給遅れ

全国に指揮しなけらばならい政府の言動には一貫性もスピード感もなく、不信感を買った。
一部の手軽な感染防止を訴えはするが、その一方で感染を野放しにしてしまった。
それに比べ自治体の首長の言動は遥かに国民の信頼を得た。

この結果は明らかだ。
東アジア沿岸部の台湾、韓国、中国、シンガポールは欧米に比べ人口当たりの感染者・死者数が非常に少ないが、日本は群を抜いて一番多い。
これらの国は衛生意識、BCGワクチン接種、さらに有効なウイルス抗体が備わっている可能性があり、同じ土俵で戦いながら日本だけが成績が悪い(山中伸也教授の説)。
日本は発生源から最も遠いのに、最も近い台湾より遥かに劣っている。
両国のマスク配布の対応でも差は歴然としていた。

結果から見れば、大臣が大言壮語した高い民度と言うより、政治(内閣と官僚)がお粗末と言うことになる。


次回は、経済対策についてみます。


Thursday, June 11, 2020

世界が崩壊しない前に 29: 貧困と格差 4




*1


貧困や格差は経済を本当に悪化させるのだろうか?


**格差が拡大すると経済発展を阻害する**

(今の自由放任主義経済や金融偏重経済の問題は別に見ます)

多くの人は、日米の経済は株価が上昇し、好調だと首を傾げるかもしれない。
実態は、90%の国民の所得がほぼ伸びておらず、一部の人が恩恵を受けているに過ぎない(日本だけではないが)。

一番悲惨なのは日本です。

日銀が市中銀行に幾ら金をばら撒いても、まったくインフレが起きなかった。
(逆に、これをもってMMT(現代貨幣理論)は、日本政府は国債発行や税収に頼らずに、国民の為の財政支出が可能だと提言している。重要な指摘ですので別に解説します。)
実体経済は浮上せず、金融経済だけを潤したリフレ論者は迷惑なだけだった!

経済再生に失敗した理由は、単純だが重大な致命傷による。
国内需要を担う国民の90%の人々の所得が低下し続けているので、銀行に金をばら撒いても消費が伸びるはずがない。
つまりインフレ(2~3%)は起きない(アベノミクス前から自明だった)。

一方金持ちや大企業は消費や物づくり(実体経済)より利益率の高いに金融投資に大金を注ぎ込む。
現在、庶民の預金金利は0.1%(日本)だが、金持ちや企業の資金運用(米国のファンド)は8%ほどの利益を上げ続けている。

こうして格差拡大で消費は増えず実体経済も伸びず、それがまた格差拡大を広げているのが現在の経済システムなのです。


 
< 2. 表の顔 >

なぜこんな愚策がまかり通るのか。
政府は経済刺激と称して金融投資で利益が得られるように規制緩和と金融緩和を行う。
これは現在の経済システムがバブル崩壊を繰り返し、さらに巨大化しているからです。
政府はこの金融危機をリカバリーするために行わざるを得ないのです。
まるで蟻地獄、底無し沼のようです。


 
< 3. 裏の顔: 2012年と2016年の比較 >

努力は必要ですが、この表と裏の顔の違いを理解することは重要です。

あるジャ―ナリストは指摘する。
20世紀最大の二つの危機―1929年の大恐慌と2008年のリーママンショックに先行して格差が激しくなっていた。
今も?

ある経済学者は言う。
少数のエリート階級に資本が集中すると、デフレを誘発し、投機的バブルを招き、経済回復力の弱体化を招き、金融崩壊のリスクを高める。
衝撃が繰り返されると、信頼が損なわれ、経済成長が減速し、これがさらに格差拡大に結びつくと。

ある社会学者は、金持ちが地球を破壊すると言う。
経済格差が拡大すると、「虚栄的消費活動」が活発化し、資源の浪費を高め、これがまた資源の枯渇を早める。
この「虚栄的・・」とは、超金持ちの消費スタイルに近づこうと各階層の人々が真似る競争状態を指します。


 
*4

ここで基本に立ち返ります。

「自由競争こそが最高、格差など気にしない」
この考えがなぜ国民に浸透したのか?

実は、格差が縮小し最も経済が成長した時代は2回の大戦後と1930年代の大恐慌後でした。
この時期は、国家が強力に富裕層や金融家を抑えて、労働者の賃金向上などを図った(ニューディール政策など)。

この事実が現在のエリートや富裕層にとって都合が悪い為、大金を費やしシンクタンクや学者、マスコミを動員して否定しているのです。
真実は明白なのですが、多勢に無勢と言うところでしょうか。

これ一つとっても、格差が拡大してしまうと、ナチス支配と同様に反転の困難さがわかります。


次回に続きます。

Sunday, June 7, 2020

世界が崩壊しない前に 28: 貧困と格差 3







*1

前回、貧困と格差は国によって作られていることを見ました。
貧困と格差は人権の問題に留まらず、危機をもたらすとしたら?


多くの人は、国が貧困と格差を是正し過ぎると、労働意欲を減じ競争心が無くなり、経済に悪影響すると信じさせられている。
だから悪化していても気にも留めない。

しかし事はそんな単純ではないし危険でさえある。
また格差が少ない国でも経済が豊かで成長している国があるので、明らかに誤解(洗脳)です。


**放置すれば騒乱や世界を後退させる引き金になる**

概ね二つのポイント、社会的なものと経済的なものがあります。

貧困な国ほど教育と医療、経済の水準が低くなり、人口増・伝染病・紛争を引き起こし易く、悪循環を招く。
外部からの衝撃、特に伝染病、大国の貿易や通貨の圧力に弱いために容易に悪化する。
こうして武力衝突、難民や伝染病などを周辺に、そして世界に広めることになる。
今回のコロナ危機で判明したように、先進国であっても格差が大きい米国や英国では弱者が感染爆発の被害者になった。


歴史を振り返れば、貧困と格差拡大は社会騒乱の引き金になっている。
それは大国や一度興隆した国ほど暴力的になるようだ。
ローマ帝国や中国の名だたる王朝が崩壊する時、格差が拡大し暴動が起きていた。

 
< 2.英国が帝国主義を終えた時期 >

グラフの赤線は英国がアフリカの支配を終えた時期を示す。
経済が後退し帝国主義に走った19世紀後半の大英帝国では、この2百年間で最も格差が大きかった
また他国よりも酷かった。

 
< 3. ドイツと日本のファシズム期 >

グラフの赤線はヒトラー総統の時代、緑の矢印は日本の大陸進出の時代を示す。
共に格差が酷い。
20世紀前半のドイツと日本は、一時の栄光の後に訪れた大恐慌が大失業をもたらし、貧困と格差による社会不安がファシズムへと突き動かした。


これは普遍的な社会現象と言え、様々な識者が警告を発している。

ある疫学者は、先進工業国23カ国を比較すると、健康指数が悪化するのは、GDPが下がった時ではなく、格差が拡大した時であることを発見した。
また同時に犯罪率、幼児死亡率、精神疾患、アルコール消費量などにも重大な影響を及ぼしている。

ある経済学者は、格差は改革の意欲をそぎ、人々の信頼を失わせ、フラストレーションを高め、政治や行政に対する信頼を失わせると指摘する。
また棄権が増え、選挙の票は金で買われ、富裕層が公的機関への支配を強めている。

まさに日米、先進国で起こっていることです。


次回に続きます。






Saturday, June 6, 2020

世界が崩壊しない前に 27: 貧困と格差 2




*1

前回、世界と日本の状況を見ました。
今、世界で何が起きているかを見ます。


前回、世界の絶対的貧困率が減少する一方、国家間と国内の格差が広がっていることを見ました。


 
< 2.富裕層の所得の推移 >

米国の所得上位10%が1940~1970年代、全国民所得の35%を占めていたが、その後上昇を始め2007年には50%になった(上記グラフとは別)。
同時期、上位1%の占有率は10%ほどから24%になった。


 
< 3.世界の億万長者 >

格差の諸相

ほんの一握りの人間に富が集中し加速している。

1970年代、所得税の最高税率は英で90%を越え、米で70%あったが、その後英米共に40%まで急速に下げ、日本も追従した。

世界の株式と債券の総額は1980年10兆ドルだったが、2009年には126兆ドルになり、12.6倍となったが、この間の世界実質GDPは2.8倍に過ぎない


主な要因

大国や多国籍企業の身勝手な経済・外交・軍事的な干渉が発展途上国の貧困を助長している(アジア通貨危機など)。
せっかく途上国自身の努力、そして国際機関や先進国による支援などにより豊かさを手にしているのだが。

ニュー・ワールド・エコノミー(容易に国境を越える、瞬時に伝わる情報、日々進む知識集約化、熾烈な競争)が進み、教育・情報力や資金力などの差が益々格差を広げている。

以下が一番の元凶です。
ここ40年間、米国を筆頭に自由放任経済の国では、金融緩和と規制緩和(合併や競争激化など)によって巨大企業ほど収益が上がり、さらに減税(法人税、逆累進課税など)で富は集中し加速した。
さらに実体経済より金融経済で高収益が得られるようになったことで、実体経済に資本が向かわず停滞するようになった。

これにより経済が成長しても90%の国民の所得が伸びず、日本では低下すらしている。

様々な要因が絡んではいるが、けっして偶然ではない。

最も問題なのは、大資本や企業が野放しにされていると言うより、多くの先進国が競うように、これらを優遇していることにある。
当然、北欧などのように格差を押さえながら成長も手に入れている国は多い。


次回、貧困と格差の問題を見ます。

Friday, June 5, 2020

世界が崩壊しない前に 26: 貧困と格差




*1

貧困と格差が悪化し続けた先にあるもの・・

いつの世にも貧困と格差はあった。
動物は弱肉強食なのだから、これも自己責任だ。
自由競争こそが経済成長を約束する。
世界経済は成長しているのだから貧困や格差問題はやがてなくなる。

一方、歴史を振り返ると、悪化する貧困や格差が大衆の怒りを爆発させ、ファシズムや革命へと進む事例は事欠かない。

現在、世界はどちらに向かっているのだろうか?

最も豊かな国20ヶ国と最貧国20ヶ国の所得格差はこの40年間に倍増し、40対1になった(2000年で)。
この格差は開発が遅れているアフリカでさらに加速している。

それでは国内の格差はどうか?
アメリカではトップ5分の1と最下層5分の1の所得比は1990年には18対1だったが、2000年には24対1になった。
この間、大卒と高卒の学歴による収入格差も倍増している。
最初はアングロサクソン系(英米)の国々で目立ったが、現在急速に各国に広がっている。
国内の格差拡大は、ラテンアメリカでも1980年代か目立ち始めたが、現在では中国でも都市と農村の差が大きくなっている。

貧困はどうだろうか?
貧困には絶対的と相対的がある。
絶対的貧困とは2015年で1日1.25$以下の収入を指し、相対的貧困とは国民の所得中央値の半分以下の収入を意味する。


 
< 2. 2015年の絶対的貧困率 >

円の大きさと数値が絶対貧困率を示し、西アフリカなどでは最大58%になった。
世界の絶対的貧困率は1990年36%、2015年10%と減少傾向にあり、全体的に見れば世界は豊かになりつつある。
しかし、これは脆く、いとも簡単に崩れるだろう。
今回のコロナ危機などの衝撃は、貧困地帯により多くのダメージを与えるからです。


 
< 3. 2010年、OECD各国の相対的貧困率 >

このグラフから皆さんに読み取って欲しいことがあります。
それは同じ資本主義国でありながら北欧やベネルックスの国々は、すべて貧困率が低いと言うことです。
つまり貧困は自己責任だと納得してしまう前に、政治社会にこそ、その原因があることを知って頂きたい。


 
< 4. 日本の相対的貧困率の趨勢 >

相対的貧困率で日本はアメリカに次いで第4位になった。
二つのグラフから、日本はいつの間にか格差大国に墜ち、かつその傾向は強まっている。
2015年に貧困率が少し低下していますが、これは景気の波によるものです。
今後、コロナ危機による大規模な景気後退により、2008年のリーマンショック後のように貧困率は確実に上がります。

次回に続きます。



Tuesday, May 12, 2020

世界が崩壊しない前に 25: 細るエネルギー供給








*1


今回は、私達の経済活動や生活に不可欠なエネルギーの将来についてみます。


電気・ガス・ガソリンが無くなる生活を想像できるでしょうか。

かつてオイルショックで経験したように、ここ半世紀、石油価格の上昇下降が世界経済を揺さぶるようになった。
米国は石油が狙いで、中東に軍事干渉することが度々あった(イランなど)。
日本が太平洋戦争に突き進む切っ掛けも石油禁輸でした。

現在、エネルギー源のほとんどは地下資源(石油、石炭、天然ガス、ウラン)ですが、いつまで採掘可能なのか?



 
< 2. 石油生産量のピークは過ぎた >

IEA(国際エネルギー機関)は2010年、在来型石油(シェールガス・石油を除く)の世界生産のピークは2006年に越えたと発表した。
これは従来の油田が枯渇して行く中で、新しい油田の発見が少なくなり、採掘コストが高くなっているからです。

益々、採掘コストが上昇している為に、地球奥深くに化石燃料があっても役に立たない。
石油では、20世紀初頭、1単位のエネルギー投資で100単位のエネルギーを得られたが、ここ25年間で35~11単位と急速に低下している。
一時、花形だった北海油田も限界が見えて来た。

これを補ってくれたのが2010年代に始まった米国のシェールガス革命でした。
しかし、ここ数年、採掘会社が急激な赤字に陥っている。
理由は坑井の寿命が短く、次から次への開発にコストが掛かり過ぎているからです。
FRBは低利融資でこれら会社を何とか存続させているが続かないだろう。
さらにコロナ危機で原油先物価格が一時マイナスまでになった。
これで米国のシェールガスは立ち行かなくなるかもしれない。


 
< 3. 低下する世界の原発発電量 >

残念な事に、期待のエネルギー源も様々な副作用を持っている。

原発は大災害、シェールガスは公害を引き起こしている。
日本列島の原発は断念せざるを得ない。
地震と津波が頻発する列島、放射線廃棄物の処理、海洋汚染による漁業資源への悪影響を考慮すれば当然です。

またメタンハイドレートや石炭、バイオ燃料(生産時)は、温暖化ガス(炭酸ガスなど)排出で地球温暖化に悪影響を与えます。


 
< 4. 増え続けるエネルギー消費 >


* 何が問題か? *

上記三つのグラフは危機の到来を示している。

世界のエネルギー消費は増え続けるが、エネルギーになる地下資源は枯渇に向かっている。
もし化石燃料輸出国が、枯渇への不安と自国の消費増を受けて、輸出を絞り、さらには禁止したら・・・。
輸入大国の日本は・・・?
コロナによるマスク入手の困難とはわけが違う。

国民が耐え偲ぶだけで過ごせるとは思えない。
悪くすれば強奪の戦争が勃発するかもしれない。

日々、限界に近いづいている。
打開策を講じなければならない。


次回に続きます。





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Friday, May 8, 2020

世界が崩壊しない前に 24: 掘り尽くす鉱物


*1


宇宙誕生から138億年間で生まれた元素や地球の鉱物を、人類はこれから数十年ほどで使い切ってしまう。
その先は・・・





*2

青銅と鉄は文明と強国の象徴でした。
紀元前、もしヒッタイトとケルトが鉄器を持っていなかったら、ガンジス川や黄河流域で鉄の農耕具が普及していなければ、歴史は大きく変わっていた。
金と銀は繁栄の象徴であり、昔から通貨の役割を果たして来た。
建物から自動車、携帯電話、薬品、太陽電池まで鉱物無しでは造れず、生活は不可能だ。

国際環境開発協会が15年ほど前、よく知られた八つの金属(鉄、アルミ、鉛、ニッケル、銅、他)の残りの可採年数は15~81年と発表した。
推定埋蔵量は500~1100年分あるが、採掘には膨大な損失が伴う。
環境省の2009年の資料によると、可採年数は金20年、銀19年、レアメタルのクロム15年、インジウム18年とある。

ここ半世紀、かつて指摘された地下資源の可採年数を越えても、掘り尽くした物はなく、今も採掘は続いている。
しかし確実に可採年数は短くなっている。


* 何が問題か? *

可採年数は、世界経済(消費)の伸び、新規に発見される埋蔵量、リサイクル量、そして採掘コストによって決まる。

だが埋蔵量は増えても、鉱石の品位が下がり続けており、益々採掘にエネルギー(コスト)と水の使用量が増える。
また鉱山から出る鉱さいや処理液はこれまでの数十倍に達し、環境破壊と深刻な公害を招く。
さらに農業や漁業資源を減らすことにもなる。

最大の懸念は、生産と埋蔵している国が大きく偏在していることです。

中国の生産量は金で1位、レアアース(17元素)では世界シェアの96%に達する。
埋蔵量の世界シェアでは、リチウムはチリで75%、プラチナは南アフリカで88%と偏在している。
一方、日本はベースメタル(鉄、銅など)とレアメタル(リチウム、コバルトなど)は100%輸入に頼っている。


* もし枯渇の危機が来れば! *

希少元素や鉱物の枯渇は、コロナ危機のマスクのように2ヶ月ほどの品不足では済まない。
今回の日本政府の対応を見れば、危機管理(体制とシミレーション)が出来ていなかった事と、隣国との協調体制が取れないことで傷口を大きくしてしまうことが理解出来たはずです。

おそらく悲惨な争奪が始まるだろう。
既に石油、ダイヤモンド、ウランのように、アフリカや中東で資源を奪い合う為に、大国から武器が大量に供給され内戦を生んでいる。

放置すれば必ず破局が来ます、甚大な被害を伴う危機が。

将来に備えた危機対応が不可欠です。


次回に続きます。




Sunday, May 3, 2020

世界が崩壊しない前に 23: 映画「太陽の蓋」を紹介





*1


福島原発事故を今一度教訓として欲しい!
無料動画「太陽の蓋」を紹介します。
また私の想いを詩にしました。


 
*2

* 「太陽の蓋」を見た感想 *
https://www.youtube.com/watch?v=x29d7YMhmm8

なぜ日本は、いまだに危機に上手く対応出来ないかが良くわかる。
それは体制が麻痺しているからに尽きる。

数人の首脳が全身全霊であがいても・・・
そんな虚しさの中にも光明を感じることがあった。
身を挺して原発の残った人々と陣頭指揮を執られた人が居たことを。
そして突然の巨大な災厄にもめげず、立ち向かった多くの人々がいたことを。


*「憂いの詩」 私の想いを託しました *


何を恐れるのか

座して逡巡する君よ

持して朽ち果てる故国こそ恐れよ

いま船出する時

渇きや荒波を恐れるな

出でて求めよフロンティアを

闇の中、頼れるのは己一人と覚悟して

家族を愛し、友と手を携え

いざ立ち上がれ



次回に続きます。




Tuesday, April 21, 2020

世界が崩壊しない前に 21: コロナは我々日本の弱点を教えてくれた 6





*1


今回は、大きな視点からコロナ危機を見ます。
歴史的に見れば、この災厄は古い体質を打破する好機です。


 
*2

* ペストと宗教改革 *

人類は誕生以来、病の克服に悪戦苦闘して来た。
病は、人の負の心理に深く作用し、宗教やタブーなどの形成に大きく関わって来た。
そして最悪のペストが、逆に宗教に大打撃を与え社会に転機をもたらした。

ペスト菌による伝染病は14世紀から16世紀にかけて、幾度も猛威を振るい、ヨーロッパの多くの町を全滅させ、全人口の30%以上の命を奪った。

当時、人々はどう対応したのか?

当然、まだ病因が菌だとは知らなかった。
多くは怪しげな行為、毒蛇の肉、香草、便所の悪臭などで避けようとした。
信仰心の篤い人は、これを神の怒りと捉え、身体に鞭打つ行者集団も現れた。
またユダヤ人が毒を撒いたとのデマが流れ、多くが虐殺された。

有効な処置は、発症者の隔離、渡航者の約1ヵ月の隔離、村の通行遮断ぐらいでした。

こうして人々は悲惨な状況が好転しないのを見て、神と教会への信仰に疑いを持ち始めた。

一方、ヨーロッパでは幾つかの要因が引き金となって、聖書を客観的に見る風潮(人文主義)や医学(外科)の萌芽が起きていた。

こうした中、神学者ルターが1517年、ローマ教皇を正面切って批判した。

これが当時、体制に不満を抱いていた農民や諸侯に火を付けた。
農民は一揆を起こし、暴利を貪っていた修道院などを襲い、また諸侯は守旧派(カソリック)の領地を奪った。
こうして百年に及ぶ戦争がヨーロッパに拡大し宗教改革も拡大した。

その結果、キリスト教はプロテスタントとカソリックの二派に分かれた。

プロテスタントの聖書の原点に戻る姿勢は、1500年もの間に巨大で強固になっていた教会制度と信仰形態(ミサ)を拒否し、また皇帝の上に立つ教皇の存在も否定した。
これは人々の意識に大変革をもたらした。

宗教改革後、欧米の人々は、より自由な生き方を求め、さらに理想の政体を求めるようになった。、
これがフランス革命や共産主義思想の誕生などに繋がった。

人々は伝染病に敗れはしたが、何が真実で何が無意味かに気付き、さらなる進歩を手に入れたのです。


一方、日本はどうでしょうか?

実は、日本は大きな変革のチャンスを失ってしまった。
大戦突入と言う大きな失敗に対して真摯に反省しなかった。

問題の要点を例えで説明します。
ブラック企業は勤める人にとっては悪夢ですが、まだ辞める手もあるし、告発することも可能です。
しかし、国の軍事独裁を一端許すと、逃げる手も正す手もありません。

つまり問題は敗戦より、何が独裁化と戦争突入を招いたかを理解することが重要です。
これなくしてはまた悲劇が再来することになる。


私達が力を合わせてコロナ危機を乗り越えた暁には、より良い社会を目指して政治を変えて行きましょう。


次回から、また本来の課題に戻ります。



Friday, April 17, 2020

世界が崩壊しない前に 19: コロナは我々日本の弱点を教えてくれた 4




*1

今回は、コロナ危機で感じた悲哀について記します。


 
*2


* クラスター班の活躍と苦悩 *

先日、NHKのドキュメンタリーで、日本の新型コロナウイルスのクラスター対策班の奮闘を見ました。

2ヵ月が経ち、これからも続く疲労困憊の中での東北大学押谷教授と北大西浦教授らの熱意と誠意には感動を覚え、感謝してもし切れない。

西浦氏は感染の第一波をクラスター分析と隔離で抑えたが、第二波を防止出来なかったと言い、言外に我々は絶望の淵に立っていることを示唆していた。
確かに、3月中旬までの少ない感染者数と3密を避ける提案は、この班の業績かもしれない。
一方で彼らは、人形浄瑠璃の黒衣(くろご)のようで目立たず、今は非難もされている。


何点か残念に思ったことがある。

彼は、第二波は空港での検閲と隔離が上手くいっていないからだと言葉すくなく指摘していた。
また人員不足で寝る暇も無いクラスター班への増員が無く、政府の無理解に一言嘆いていた。

さらに不思議なのはドキュメンタリーで、NHKが上部機関(新型コロナ対策本部、厚生省、政府)との連携や対応をほとんど描いていなかったことです。

常識で考えて、感染対策の執行機関の協力なしでは彼ら対策班の苦労は報われず、それこそ孤軍奮闘で終わってしまう。
むしろ私には彼らは人身御供として晒されているように思えた。
それでも彼らは実に謙虚で他者をまったく非難しない。


もう一つは、西浦氏はまだCR検査の制限に拘っていることです。

明らかに状況が変わっているのに手法を変えない事には無理がある。
この件の説明では、急に歯切れが悪くなった。

本来なら、第二波の状況悪化に備えて、政府がPCR検査の拡大や空港の検疫体制の強化を行うべきで、西浦氏がその評価を語ってこそ対策班と言える。
ここでも、何か他者への遠慮が働いているように感じた。

結局、コロナ危機に対して、重要な役割(感染対策の立案)を果たすべき班が、協力も支援もなく孤軍奮闘していることが露呈した。

まさに80年前の日本の再現です。
戦況全体を俯瞰し指揮する最高責任者がおらず、各指揮所(天皇、政府、海軍、陸軍、現地派遣軍)がバラバラに行動し、長期視点が無く、遂には補給が途絶え、玉砕で有終の美を飾ることが国民に求められた。


次回に続きます。





Thursday, April 16, 2020

世界が崩壊しない前に 18: コロナは我々日本の弱点を教えてくれた  3





*1

今回は、発想の転嫁が出来ない不幸を見ます


 
< 3.摩訶不思議な批判潰し >

孫氏がTwitter上で休業補償のアンケートを行うと、当初賛成が圧倒的に優勢でしたが、深夜の間に反対票が30万入り、呆気なく反対に逆転した。
ここまで酷い操作を私は知らない。


* 休業補償をしない件 *

今、感染爆発を防ぐには人との接触を80%減らす必要がある。
そこで都道府県の首長は国に休業補償を要求するが、政府は前例が無いとし頑なに拒否している(噂では財務省が許さないらしい)。

国が休業への強制力を持たないことや、補償をやり始めると政府が破綻すると言う論点ずらしもある。
ここでは、この二点への反論と、日本の先進国からの周回遅れについては触れない。

日本で感染爆発が起きれば重篤患者は30万人になる可能性がある。
そうなると医療介護費・経済損失も含めた彼らの生命価値を一人3億円として90兆円の損失が出る。
さらに膨大な数の感染軽症者、失業する非正規や新卒が生涯に亘り、その累計経済損失は数百兆円になるだろう。

ここで休業補償総額20兆円(=GDPの内の年間民間消費300兆/12ヵ月X80%)で全国民に1ヵ月休業してもらい、感染爆発が起きないとする。
すると差し引き70兆円が浮くことになる。
実施は一部の都市で可能だから10兆円で済むかもしれず、前述の失業者の莫大な被害も抑えられるので、さらにメリットは巨大になる。

発想を転換すれば、国民は救われる。

実は、我が国は様々な名目で金をばら撒いて来ている。
農家への米の減反費用、様々な助成金、輸入関税も周り回って同様の結果になる(農産品だけでも年間8兆円)。
箱ものなどの土建投資も然り(年数兆円~十数兆円)。
法人減税は30年間の累計で300兆円になり、消費増税分はほぼ消える。
首相は短期間で諸外国に60兆円をばら撒いた。
日銀はこの10年間で国債を400兆円、ETF(上場投資信託)を30兆円買った(これが政府の財政支出の足枷になるかも)。

これでも国民の命を守る為に微々たる金しか出せないのなら・・・。

こんな試算もあった。
かつての米国の南北戦争で80万人が死亡し、甚大な被害が出た。
後に、南北戦争を回避する方法として、ある経済学者は事前の補償を提案している。
「北部側が、南部の奴隷所有者から奴隷開放による損害補償を提案すべきだったと」

双方で膨大な軍事費を使い、町を破壊し、死傷者を出し、結局、南部は奴隷も失った。
結果から見れば、補償での戦争回避が良策です。

冷静になって先を読むことが出来れば、危機の被害を少なく出来るのです。


次回に続きます。