Friday, October 2, 2026

短縮版 迫る多難な危機  4-3

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-3 手強い相手

   破綻は不意に必ず訪れる

   歴史は繰り返す

   テクノ・リバタリアン(テクノファシズム)

   様々な経済理論

 

 


第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化


 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。

 

 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

4-3 手強い相手

 規制や監視を単純に強めるだけで、経済にブレーキを掛けず、国民の所得を上げ、暮らしを良くすることが出来るのかと不安に思うかもしれない。しかし、現状しか道がないと思うのは、詐欺師の思うツボです。異なる味方を紹介します。

 

 破綻は必ず不意に訪れる

 

 私は1970年代から、幾多のビジネス書、特に半年から数年先の経済を予測してきた本を読んで来ましたが、間違いなく予想を外している方が目につく、当たることはほぼない。著者の多くは投機家ではなく、当時著名な学者でした。例えば、昭和バブルの時代、5年かけて株価は4倍になり、景気は絶好調でした。しかし1990年にバブルが崩壊し、株価は半年ほどで半減し、当然、地価も景気も急降下でした。巨大企業は残れたが、暴利を貪ろうとした企業と人々は、夜逃げしたり、消えていった。貴重な資産を無くした人が周囲に何人もいた。暴落前後の土地と株式の日本全体の評価損はおよそ1400兆円、GDP3年分が吹っ飛んだのです。被害は甚大でした。これを当時、日本の識者は予測出来たと思いますか? 私は当時、関心を持って世情を見ていました。一部の人は投機に浮かれ、多くの人は投機に乗り遅れたことを後悔し、この景気は危険だと思っている人はほぼいなかった。一人のエコノミスト(経済企画庁内)は崩壊の1年前に、資産インフレへの危険性を著書で指摘していましたが、「1年後に崩壊する」という具体的な期日や大暴落には触れていませんでした。

 

 米国では、2008年のリーマンショック時、金融の神様と呼ばれたグリーンスパン議長でさえ、この崩壊を予見できなかった。彼は、後に米下院の公聴会で「市場の自己修正機能を過信し、自由市場モデルの欠陥を見抜けなかった」と発言している。一方で、数人のエコノミストは1~3年前ほどから異常に気づいていました。ただし暴落の期日の予想までは無理だったようです。これらのことから幾つかの教訓が得られます。トランプが株価を非常に気にしているように、これは株価が大統領支持に直結しているからです。国民の年金や資産の多くは株で運用されているからです。株式は最大の投機対象であり、投機家は借金で投資を行い、ついに国内の民間債務総額がある水準を越えると、過去に幾度も金融危機を起こしています。つまり、現状では金融危機は繰り返す運命にあるのです。バブル崩壊の詳細メカニズムは不明で、的確に予測出来ません。これまで金融危機は4~8年間隔で繰り返して来たのですが、今回は珍しく、リーマンショック以降18年以上も起きていないのです。単純に、マグマが大量に蓄積されていると私は恐れています。現在の経済状況は、絶好調と言うより、綱渡りに近いと考えられます。

 

 トランプの手腕は素晴らしく、期待できるのでしょうか。彼のビジネスキャリヤは汚点の連続です。彼の不動産事業は倒産の繰り返し、法の範囲ですが負債をかぶらず、また違法ギリギリのあくどい手段で入居者の追い出し、また税金をほとんど払っていない(開示を拒否している)。彼は悪徳弁護士なしで事業を継続することは無理だった。プーチンは、トランプが苦境の時、うま味のある案件を提示し助け続けている。トランプの人気はテレビ番組「アプレンティス」で造られたものでした。トランプは科学的知見がほとんど無いので、これからの産業革命を指揮するのは不可能だろう。それはコロナ蔓延時のあたふたぶりで証明済みです。

 

 

 歴史は繰り返す

 

 共和党やトランプの造り出した経済は、巨大企業と富裕層が巣くってしまった経済、また単に衰退しつつある経済になったと言う方が正しいかもしれない。少なくとも、この半世紀の間に大半の国民にとって良い経済ではなくなった。人類史上、大半の国民が経済も含めて上昇気流に乗れた時代があった。英米において19世紀後半から20世紀初頭だった。これは英国の産業革命の成熟期であり、遅れて米国の大量生産方式が進展した時代でした。労働者が始めて政府や権力に対峙して、交渉出来た時代だった。人類史上における画期だった。

 

 ところが反動が起きた。第二次世界大戦後、主に二つの事が欧米を揺るがすことになる。一つは、特に英国でしたが、20世紀初頭は福祉国家に近く、国有企業による財政赤字増大と労働組合による賃金上昇とストに困っていた。もう一つは、米国が、4回の中東戦争でイスラエルを支援したことにより、アラブ諸国が米国を封じ込める為に、OPEC(石油輸出機構)を創設し、原油価格を数倍に上げた。後に30倍を越えることになるが、ずーと後のことです。これにより世界は急激なインフレに見舞われることになった。また米国の保守層が、リベラル的な労働者・黒人・女性等の人権擁護により、社会・文化の急激な変化を恐れたようです。そこで保守層は、レーガンを前面に押し出し、インフレ対策として、金融操作(マネタリズム)を進める一方、一気に労働組合潰しを始めた。この時、英国と日本も同調し、国有企業と労働組合潰しを推し進めた。こうして、20世紀前半に一世風靡した労働運動と累進課税は終わりを告げたのです。つまり、かつての封建時代の惨状に状況に戻ってしまったのです。

 

 こうして見てくると、現在の米国の資本主義だけが、資本資本主義でないことが理解していただけると思います。実は、別に模範例があるのです。それは北欧諸国です。北欧は資本主義を基盤としています。当然ですが、自由市場、私有財産、海外貿易、労働組合(加入率7割)もあります。それに加え、手厚い再分配(医療費原則無料・学費無料・年金完備)がなされており、社会民主主義と呼ばれています。ただ税金は最も高い部類に属します。しかし日本と比べて、税金と公的な掛け金の合計の所得に対する比は、少し多いぐらいです。北欧は、この体制で、幸福度と一人当たりGDPのランキングで200ヵ国中、1位~6位ぐらいに入ることが多い。他の資本主義国より良いシステム、労使間の協調、転職の支援、労働者擁護、男女平等、小学校から環境・政治意識の高揚等があります。それでも、常時、システムアップを図っており、腐敗の無いのが一番です。

 

 つまり、今の米国の資本主義が最良では無く、様々な形があり、かつては別の形でうまく行っていたのです。

 

 

 

 

 テクノ・リバタリアン(テクノファシズム)


  ここ10年ほどで、国の舵取りに大きな波乱要因が加わった。それはテクノ・リバタリアンの出現です。イーロン・マスクやピーター・ティールなどがその代表で、「高度な数学的・論理的知能と巨額の富を持ち、最先端テクノロジーによって国家の規制を排した自由な社会を実現しようとする思想・人物」のことです。庶民が彼らの思想が危なっかしいからと遠ざけようとしても、政治は彼らの資金力と発信力を利用することになる、トランプが露骨に利用して来たように。大統領就任式の時に、名だたるGAFAの代表者たちが寄り添っていたのが、今の時代を象徴していた。トランプと一度決別したイーロン・マスクは、2026年の中間選挙で、また共和党支援に1億ドル以上を投じるとしている。残念ながら、彼の知名度と資金は、その思想の是非に関わらず大量の票を獲得するでしょう。そして、テクノ・リバタリアンの思い描く政策が実現したら、米国はどうなるのか? 懸念される点を整理します。

 

 先ず、彼らが目指す政治思想リバタリアニズム(自由至上主義)の問題です。これまで、米国の惨状は、自由放任の金融投機、寡占により機能しない自由市場、富裕層による政治支配、その結果として貧富の拡大が続いていると説明して来ました。ところが、彼らは公権力や国家の介入を極限まで排除し、個人の自由と自己責任の最大化を目指している。具体的には、自由な理想社会を造る為に、選ばれた天才だけが政治を担い、愚民は政治に口出さなくても良いと言うことになる。イーロン・マスクの現実の経営手腕、Twitter買収時の人権・倫理関連部門の全員解雇から、類推できる。

 リバタリアンにも様々な人物がいて、極端なケースでは、政府は不要でインターネット上で国民は平等に関り、暗号通貨で経済を回すとし、空想に近いものもある。言い換えると、天才と巨大資金による独裁から無政府主義まであり、共通しているのは、19世紀後半から20世紀前半、欧米が目指して来た自由民主主義とは相容れないもので、非常に危険です。



 歴史を振り返ると、同様の横暴な人物に振り回された事例がある。時代を牽引した二人の発明家兼経営者を例に挙げます。18世紀半ば、英国の産業革命に火をつけた一人アークライトは、水力紡績機の特許を取得し、これが近代的な工場制機械工業の先駆けとなった。彼が建てた工場では、何万人もの労働者が囲いに入れられ、厳しく管理された。労働者には時計の針のように規則正しい行動と単調な作業が強要され、人間の本能に逆らうような過酷な時間管理と労務管理の原型が作られたとされています。このような経営者の横暴が当時蔓延っていたからこそ労働運動が起きたのです。

 米国でも幾つか類似の事例があり、有名なのは自動車の大量生産システムを確立したフォードです。彼が労働組合を敵視し、組合を最後まで認めなかったことは有名です。私設警察・スパイ組織を作り、工場内に多数のスパイを潜入させ、労働者が組合の噂をしていないか四六時中監視させました。労働者同士が仕事中に私語を交わすことすら禁止され、違反者は即座に解雇されました。工場で、全米自動車労組が合法的なビラ配りを行おうとすると、雇われたギャングらが襲撃し激しい暴行を加えた。フォードは自分が思う労働者像に叶う場合は高給を出し、気に食わなければ即解雇しました。現代ではアマゾンも労働者に対して同様な振る舞いを見せていました。

 

 ここで成功している起業家の能力・性格について注意すべきことがあります。イーロン・マスクやピーター・ティールは素晴らしい能力を持っているが、自閉症傾向(アスペルガー症候群)が有り、シリコンバレーの起業家に多い。この傾向は、他者との意思疎通や感情の理解に困難をもたらす。従って、上述の二人の経営者にも言えるのですが、彼らは労働者、市民、弱者への共感に乏しい。ある心理学者は、経営者には社会性パーソナリティ障害が多く見られ、他者の権利を軽視し社会規範を守らない傾向があると言う。我々周辺にもブラック企業、ワンマン会社はあり、結構、成長しているケースがあります。つまり、共感力を持たないテクノ・リバタリアンは事業に専念してもらい、政治への直接参加は避けるべきなのです。

 

  

 様々な経済理論

 

 この半世紀、様々な奇抜な経済理論が生まれては消えていくのを見てきました。国の舵取りを大きく変える時に、学者に経済理論を並び立てられ、そちらは危険だ、こちらだと言われると返す言葉がない。しかし、実はほとんど失敗するか役立たずだった。幾つかの理論を簡単に振り返ります。

 

 最近では、現代貨幣理論があります。これは「自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても破綻(デフォルト)しない」と言う、累積財政赤字トップの日本にとっては夢のような解決策です。数人の議員は、熱心に説き、大勢は無視です。私も惹かれますが、やはり怖い。提唱者は、通貨発行が大量になり、インフレが加速すれば、課税して抑え込めば良いと、唯一の欠点に対して、解決法を提示している。これが信用できない。理屈は簡単だが、政治的には簡単ではない。暗号資産についても同様の不安があります。暗号資産(仮想通貨)で良く言われるのが、ブロックチェーンは完璧なので贋金のような事態は起こらず、マイニング(実質的な通貨発行権)も管理出来ているので、順調に伸びるとされている。しかし、2016年、イーサリアムが約60億円ほど不正流出したのを皮切りに、その後も、様々な攻撃や不正流出が起きている。しかし最重要な事は、人類がこの300年間、国(中央銀行)が貨幣発行と管理で苦しんで来た経緯を考えると、雨後の竹の子のように、暗号資産が参入してくる事態は、とてもじゃないが許容できない。インフレ抑制のために貨幣供給量を減らすとか、失業者を減らす為に供給量を増やすとかの制御を適切に出来るはずがない。現状は、金儲けに目がくらんで、ねずみ講のように、先駆けた者が多くの利益を得られるからであり、今一つは資金洗浄の為に利用したいのでしょう。私には愚かな喧噪にしか映らない。

 

 レーガン政権が当時華々しく喧伝した「ラッファー曲線」と言うのがありました。非常に単純で分かり易いものでした。これは税率を下げれば労働や投資の意欲が高まって経済が活性化し、最終的には税収が逆に増加するという主張でした。私はあまりの単純さゆえに驚いた。しかし、結果としてこの政策は巨額の財政赤字(と貿易赤字)をもたらすことになりました。失敗は、国防費の巨額増、議会に拒否された社会補償費削減、FRBの高金利政策による景気の落ち込みが、大きかったようです。この理論はサプライサイド経済学(供給側の経済学)の一部ですが、この逆がケインズのデマンドサイド経済学(需要サイド経済学)です。実は、この半世紀はこの学派が対立し、レーガン以降、それまでのデマンドサイド経済学に代わってサプライサイド経済学に取って代わられたのです。サプライサイド経済学は、減税や規制緩和により、企業の生産意欲や供給力を高める。「モノを作れば売れる」という考え方がベースにあります。デマンドサイド経済学は、政府支出(財政出動)や減税などで、人々の消費や需要を刺激する。「買いたい欲求(有効需要)が経済を動かす」という考え方がベースにあります。ニューディール政策はデマンドサイド経済学の成功例でした。現状の悲惨さは、サプライサイド経済学によると言えます。

 

 これらの経済政策の失敗事例から学べる教訓は、経済政策や経済のコントロールは難しく、必ず修正が必要だと言うことです。しかも、修正の目的が国民の利益に叶うべきなので、民主主義が不可欠なのです。必ず、常時、民主主義体制が維持されている必要があるのです。独裁は絶対に避けなければなりません。

 

 

 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

Thursday, October 1, 2026

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-2 後半2部

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。

Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

   真実はどうして葬られたのか 1

    真実はどうして葬られたのか 2

    すがり続けた夢の果てに

    基本的な考え方

 

 

 


第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 

 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。

 

 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

 

 真実はどうして葬られたのか 1

 

 いくら信仰心が高まっても、現代は科学の知見があまねく社会を照らしている。数千年前に遡る聖書の予言や格言に先進大国が振り回されるとは思いもよらなかった。実は、宗教のみが真実を覆い隠す役割を果たしたのでは無い。もう一つ深い闇が社会を覆いつくしているのです。

 

 


  分かり易い例があります。2017年、トランプ政権のスパイサー大統領報道官は、トランプ氏の就任式に集まった群衆の規模について「過去最大の人々が就任式に参加した」と主張した。しかし、メディアによる空撮写真や公共交通機関の利用データなどからは、前回のオバマ大統領の就任式時よりも少ないと指摘された。これについて、コンウェイ大統領顧問がテレビ番組に出演した際、「スパイサー報道官が示したのは嘘ではなく“代替的な事実(alternative facts)”である」と述べ、正当化していました。トランプの発言は虚言の方が多いのですが、虚実取り交ぜ、応援者には夢を与え続けて、批判に対しては報道機関と国民を煙に巻いてきました。実は、この煙に巻く事で、永らく米国民は真実と科学的知見から遠ざけられて来たのです。

 


 

 1950年代、喫煙と肺がんの因果関係が指摘され始めると、大手タバコ会社は共同で「タバコ産業調査委員会」などの偽装団体を創設しました。これは中立的な研究機関を装いながら、実際には業界に都合の良い偽物の専門家を雇い、科学的論争が未解決であるかのようなプロパガンダを流し続けたのです。さらに、あえてタバコと直接関係のない、癌の発生プロセスなどの広範な生化学研究に巨額の資金を提供し、因果関係の結論決定を遅らせる時間稼ぎを行いました。タバコ会社自身は、すでに「ニコチンには強い依存性があり、タバコは癌を引き起こす」という真実を突き止めていました。1980年代に受動喫煙の害が証明され始めると、タバコ会社は「お抱えの科学者」に資金を出し、「科学的な証拠が不十分である」とする論文を発表させました。この間も、真実のデータはすべて極秘とされ、1990年代の米連邦議会の公聴会でも、タバコ会社の最高経営責任者たちは「ニコチンに依存性はない」と宣誓供述をして嘘をつき続けました。しかし、あるタバコ会社の開発担当副社長は内部告発により解雇され、さらに会社とギャングから激しく攻撃された。しかし彼の証言などにより1998年、大規模な損害賠償請求訴訟において歴史的な和解(勝訴)が成立した。

 

 実は、この「確実な証拠がない」「議論はまだ続いている」という「疑念の製造」戦略は、今も形を変え蔓延し続けているのです。最も危険なのは、天然ガス・石油掘削会社と共和党による地球温暖化隠しです。他にも、保守系シンクタンクが様々な、「疑念の製造」戦略に加担しています。このような目くらましが、半世紀以上、巨額の資金をつぎ込んで垂れ流されているのですから、大半の国民は真実を見ることが出来なくなっている。一人一人が科学的論拠を確認するのは困難です。

 

 

 

真実はどうして葬られたのか 2

 残念ながら、21世紀、特に2010年以降は、さらに困難な状況に追い込まれている。単純だがトランプの前回の4年間で3万回を越える虚言は、史上圧倒的な量です。彼は1日に10~20回、虚言や紛らわしい言説を吐いている。選挙集会等で、自陣営の聴衆を喜ばすために、また報道機関から批判的な質問を受けると、彼はほとんど虚言か誇大な言説を連呼する。報道機関等のファクトチェックに膨大な手間と時間が掛かり、究明に追いつかない。さらに巧妙なのは、大手マスコミを毎回、フェイクニュースと罵り、トランプを絶賛するFOXや一部のインターネットニュースサイトのみが真実を報道していると付け加える。今も、トランプ氏支持者は頑強に彼を信じて疑わない。しかし、これはほんの序の口です。

 

 既に、インターネット上で嘘がこだまのように反響している事は周知の事実です。この状況を差す言葉、ポスト・トゥルース(Post-truth)が2016年に有名になりました。これは世論形成において客観的な事実よりも、感情的な訴えや個人の意見のほうが強い影響力を発揮する状況を指しています。イギリスのEU離脱(ブレグジット)やアメリカ大統領選でのトランプ勝利など、世界政治がデマで大きく動いた事例でした。このような状況が生まれた背景の一つに、SNSの普及によって、誰でも簡単に世の中に対して個人的な意見を表明することが可能となったと同時に、多くの情報を瞬時に流通・拡散できるようになったことが挙げられる。利用者が見たい情報だけを見る「エコーチェンバー」や「情報のサイロ化」(広く連携できない孤立化)が進んだことが大きい。SNSの普及は、個人的な考えの影響力を増殖させた一方で、フェイクニュースと呼ばれる事実と異なる情報が短時間で世界中に流布されてしまう状況も招いた。その結果、テレビやラジオ、新聞、雑誌といったオールドメディアの影響力は相対的に低下し、客観的事実が軽視されるようになった。このエコーチェンバーは、人間の心理(自分にとって心地良い情報を選択)とSNSや検索エンジンのアルゴリズムが、個々の利用者の興味(情報)を分析し、望みを叶えるように優先表示している事で、加速している。利用者はさらにこれが繰り返され、より狭い範囲の情報に閉じこもるようになる。この状況を巨大プラットホーム(Google、メタ等)が莫大な広告料欲しさに、コントロールし、トランプの1期の選挙から、選挙に有利になるように細工した可能性がある。当然、大統領就任後、リベラルが望むSNSの規制を反故にするのと引き換えを目指してのことのようです。この選挙時に、ロシア(プーチン)がトランプを勝たせるために、ヒラリー候補にダメージを与える為に、SNSで攻撃していたことが、ほぼ確実視されている。

 

 深刻度が増すポスト・トゥルース時代と混迷を深める経済・社会にあって、我々はどう対処すべきなのか? 

 

 

 すがり続けた夢の果てに

 米国民の多くがこの夢に幻惑され続け、さらに何割かの人が神の下に在り続けるなら、地上では諦めても良いと思っているかもしれない。その夢とは、新自由主義の単純すぎる例、トリクルダウンです。これは、シャンパングラスを積み上げ、最上段にシャンパンを注ぎ、やがて最下段にまで滴り落ちる例えで示されます。富裕層や大企業が豊かになることで、最終的に貧困層など社会全体にも富が浸透・波及するという考え方です。半世紀待っても、最上位のグラスが大きくなるだけで、下には零れませんでした。

 もっとも罪な経済イデオロギー「完全な自由市場こそが消費者に最大の利益をもたらす」は、自由主義の小さな政府と自己責任論と並ぶ三大テーマの一つです。このテーマの前者二つとマネタリズム(金融数量説)は、当時絶大な信頼を得ていたノーベル経済学者ミルトン・フリードマンが提唱したものです。半世紀も経た今となれば、どれも齟齬をきたしている。むしろ米国の災厄は、これら理論の呪縛から抜け出せないことにある。この市場原理(自由市場)については、共和党も民主党も共に推進し、他の小さな政府、自己責任論、マネタリズムについては、民主党は抑制気味でした。

 政府が規制をなくして市場を完全に自由にすれば、無数の企業が競い合って効率化が進み、価格が下がり、消費者が最大の利益を得ると考えたのですが、理想どうりにはならなかった。規制緩和が進んだ結果、予測とは逆に「勝者総取り(ウィンナー・テイク・オール)」の現象が起きました。規模の経済やネットワーク効果(IT大手プラットフォーマーなど)により、市場は競争が激化するどころか、少数の巨大企業による寡占・独占が進みました。その結果、価格支配力が強まり、中小企業の排除や、富の極端な集中(格差の拡大)という弊害が生まれた。

 

 当時、フリードマンが最も信頼されたのは、彼の金融数量説の採用によって、当時のインフレを抑制出来たことにあり、画期的でした。金融数量説の信奉から金融技術の進展が起こり、自由競争が重視された事と重なり、投機が巨大になり、実体経済と金融経済が乖離しました。そして巨額の利益は金融から生まれるようになり、投機が行き過ぎると、景気は加熱するが、やがて金融危機が繰り返すようになった。もう一つの問題は、多くの国で資金が投機に向き、本来の設備投資に向かなくなったことも長期的経済成長を抑えることになった。

 

 現在、多くの経済学者によって、現状の新自由主義による経済運営は、様々な問題を生み出しているとし、個々の政策について批判され、修正が求めらている。もつとも保守系、富裕層、大企業はこれに反対していますが。

 

 

 基本的な考え方

 

 現状の経済状況を観察すると、異常であることは疑いない。明らかな事は、貧乏人はより貧乏に、金持はより金持ちに、しかも固定化されて来ている。また社会保障等が先進国中遅れたままです。当然、これは人為的な政策による結果です。なぜなら1980年代以降、多くの経済・社会指標が急激に悪化して来たのですから。

 行き過ぎ積み重ねらた政策が問題でした。大幅な規制緩和による自由競争、徹底した自己責任への転嫁、富裕層や企業に偏った大幅な減税など大きい。これらの弊害については、個々に簡単に触れて来ました。ここでは要約と、考え方を提示します。

 

 先ず規制が必要です。私たちは長年に渡り、規制緩和こそが、良策と洗脳されて来ました。しかし、これは間違いです。一言で言えば、規制過ぎてもだめだが、規制が無いのも問題なのです。適切な自由競争を生むには、寡占を防ぐ規制が必要です。スポーツで言えば体重別の競技だからこそ良い場合があるように。自己責任を自覚してもらうことは勤労精神を育む上で需要ですが、個人の状況(健康、生まれた家庭、人種、失業)や不意の事故等で、その後のチャンスが閉ざされる事は、社会にとってマイナスです。この理解は難しい。特に共和党支持者は、これら逆境にある人々に、税金が盗まれていると思わされて来た経緯があります。富裕層の減税総額と逆境を支える福祉費の比較をしてみましょう。概算ですが、富裕層の課税を大戦前の税率に戻すと、年間数十兆円が国庫に入ります。さらにキャピタルゲインの優遇措置で富裕層は年間何十兆円も逃れています。もっとも米国は規制が緩いのでタックスヘイブンに多くは逃げてしまうでしょうが。民主党がよく行う雇用対策費用は年間20~30兆円でしょうか。つまり富裕層に税金を負担していただくと財政赤字を増やさず、まともな福祉政策が戻ってくるのです。

 

 重要な事は、政府の政策実施にあたって、適正なフィードバックが可能にしておく事です。現在は、明らかに間違っている政策であっても、変更、元に戻すことが出来ない。それは、富裕層と大企業が、豊富な資金力を使って、選挙などで優位に立ち、長年に渡り政府と国民を手懐けて来たからです。共和党は1980年代から急激に企業・富裕層優遇に舵を切り、民主党とは袂を分かっています。その政策は、法人税・所得税・配当税・相続税等の減税、規制緩和、労組への規制強化、企業補助等で、拡大の一方です。例えば、2025年の共和党の大型減税法案は、「年収100万ドル超の上位0.6%の1百万人が、年収10万ドル未満の1300百万人よりも大きな減税を受ける」とCenter on Budget and Policy Priorities(予算・政策優先事項センター)が分析しています。これが今の米国であり、トランプの実績なのです。

 

 どうか真実から目を逸らさないようにしてください。

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。