Wednesday, September 30, 2026

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-2 後半

 

「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」


この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。


まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!


--- 目次  ---

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

 目くらまし戦術1

 目くらまし戦術2

    宗教と道徳について

    米国の宗教と共和党の合体

    



第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化



 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。


 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。



 

目くらまし戦術1

 大半の米国民には、悪化からの脱出法が見えていない。これには大きく二つの理由があります。一つは、反リベラルのイデオロギーであり、二つには、新自由主義への信奉があります。


 反リベラルの発端は、労働者らが20世紀前半に成功させて来た待遇改善と、それに付随した人権尊重の運動に対して、保守派が不快感を持つようになったことにあります。この運動な成功事例は、ルーズベルト大統領のニューディール政策でした。この流れは英国で始まりました。しかしやがて、労働組合が団結力を笠に着て、労働者貴族の横柄さが強調されるようになります。さらに時を経て、移民や黒人らが、必要以上に優遇(アファーマティブ・アクション)され、国民の血税やチャンスが、彼らに盗まれていると言う噂が強調されるようになります。そして米国連邦最高裁において、2023年、このアファーマティブ・アクションが違憲と判断されました。この政策は、多数の民族が共存する国々で実績を上げて来ているのですが。当然、この政策を世界に先駆けて、取り入れたのは米国のケネディ大統領で、公民権運動援護の一環として行ったのです。これが半世紀を経て潰えたのです。ここに米国らしい、手に負えない過激な動きがある。




 その一つが連邦最高裁の判事の保守とリベラルの比率です。2023年の連邦最高裁の判事は保守6人、リベラル3人でした。これにより違憲とされたのです。つまり、国民や議会が最良と思える政策を実施しようとしても、最高裁が保守(共和党)に握らている限り、実行出来ないのです。民主党政権では融和策をとり、最高裁の判事比率はほぼ半々で推移していました。しかしトランプが、一気に転換させた。これもトランプが保守派から歓迎される理由の一つです。過去にも保守優位の最高裁において、労働組合弱体に繋がる判決が出ています。「本人が望まない場合に組合の活動費を徴収することを認めない」判断をしました。これは、1世紀以上前の労働運動で勝ち取って権利だった。このような判決、裁定、法が積み重なり組合は弱体化して行った。加えて、2010年以降、幾つかの判決により、選挙への寄付総額の上限廃止と、選挙広告への上限廃止により、無制限の金権選挙が完成した。これは、政治が資金力に支配される事を意味し、国民には悪夢なはずです。


 この流れの中で、気づいて欲しいことは、米国の保守勢力があらゆる力(最高裁、マスコミ、政治献金、ロビー活動等)を使い、弱者救済、人権擁護と並んで労働組合への敵視を長年、国民に植え付けて来たのです。これにより企業家等は労働者の賃金低下と首切り、配転等で有利になり、益々、利益を上げることができます。これが反リベラル・キャンペンの大きな目的です。したがって、保守はしきりに、ルーズベルト大統領のニューディール政策の成果否定に躍起です。そして着実に、資金力の多さ、そして大企業こそが政治を牛耳るようになって来たのです。



 目くらまし戦術2

 

もう一つ、リベラル敵視に使える強力な手段があるのです。それは人間の感情に揺さぶりをかけることで、同性愛と堕胎の問題でした。米国以外の先進国であれば、同性愛は当人の自由恋愛を尊重し、堕胎は健康と育児に関わるので女性の判断を尊重し、彼らの人権と自由を守ることになると考える。しかし米国では、同性愛禁止は聖書に書かれ、堕胎は命を大切する聖書の教えに反するからと、キリスト教原理主義者(福音派)らは考える。そして、この教派を大々的に選挙に取り込んだのが、レーガン大統領からで、その後、この関係はより深く結ぶ付くようになった。なぜなら、この教派は米国人口の1/4に達しているのですが、その信心深さゆえに、票に及ぼす力は人口比を上回るのです。確かに、聖書には、それらしい解釈を可能にする文言はあります。ただし、同性愛禁止や堕胎禁止を匂わす旧約の章は、古くは3000年前の記述まで遡れます。このような因習を今に守ることが正常な感覚とは思えない。信仰の自由は尊重されるべきだが、政府が特定の教派の人権保護に抵触する可能性のある要望を政策実現することで、票を手に入れる事は憲法の趣旨に反するように思うのだが。


 さらに奇異なことがある。人権先進国の北欧諸国は、元を辿れば同じプロテスタントです。つまり聖書の文言を重視する教派の国と言えます。それなのに、この国々では同性愛や堕胎は本人の自己決定権を保証されています。米国の福音派だけが特別なのです。また非常に奇妙に思えるのは、福音派がハルマゲドン(最終戦争)を信じて、世界が戦争で破壊された後、パレスチナの地にキリストの再臨が起きると信じていることです。そして聖書が大きな隣人愛を説いているにも関わらず、イスラエルの虐殺を支援して止まないのです。米国はイスラエル以外で最もユダヤ人が多く、成功者も多い国です。だから潤沢な資金が、宗教や政治を動かしている。当然、信者らは地球は球体でなく、人類は猿から進化していないと考えます。こんなセクト的教派に振り回されては困ると思うのですが。共和党は、悪辣でも強力な宗教集団であれば利用するのに躊躇がないのです。




 共和党には、民主党との敵対を最初に訴えて人気を博したギングリッジ議員がいますが、この人物が米国で最初に悪辣なセクト教団の統一教会を共和党の味方に引き入れた。同様に福音派と共和党はがっちり手を組み、互いに手に入れたいものを得た。福音派は、同性愛禁止、堕胎禁止、進化論授業禁止、イスラエル軍事支援を手に入れ、共和党は、代わりに民主党拒否(反リベラル)を通じて、最終目標の労働者権利剝奪、減税と企業・富裕層優遇を手に入れたのです。私に言わせれば、共和党の得たものは福音派の得たものより遥かに貨幣価値が大きく、福音派の人々は心(道徳感情)を満たせたに過ぎない。米国南部に暮らす多くの福音派は、現地の地下資源開発企業の大きな公害被害にめげず、企業の発展による地域振興に夢を託し、減税による低福祉や定収入に我慢し、崩れ行く共同体をキリスト教会への固い信仰で守ろうとしている、実にけなげな人々です。選挙の為に、彼らを食い物にしている人々に腹が立つ。トランプの言動に、その様子が端的に現れている。彼は信仰心もなければ道徳心も無いが、福音派の票を手に入れる為に、戦争を行い、人権など無視している。




 宗教と道徳について

 


 信仰の自由は守らてしかるべきです。しかしその信仰を理由に、一方的に他者の自由や権利を剥奪する事は許されない。これは現代の魔女狩りです。しかし米国の共和党には、宗教による弊害への意識が稀薄です。

 人の道徳感情には、思いやり、公正、忠誠、権威、神聖、自由等があり、保守派とリベラル派で重視する道徳感情に差異があります。これが両派の敵対感情を生むとする考えもある。道徳感情は進化で生まれた感情ではあるが、個人の道徳感情の強さは、属する集団や文化に大きく影響される。だからこそ、これら道徳感情が現代社会に適合するかを理性的に判断し、コントロールするべきです。例えば、遺伝に支配された感情や欲情のままに生きるべきと信じるのは馬鹿げている。問題は、既に述べたように、教団や政治団体がこれらを悪用してしまうことです。付け加えるならば、多くの共同体は無意識に、この道徳感情によって団結を強化し、宗教にその力が大きい。道徳感情が保守やリベラル、宗教を選ぶと考えるより、集団や宗教が道徳感情を強化していると考えるべきです。永続している共同体の中では、これらが強化されている。この典型例は、ヒンドゥー教徒のバリ島バンジャール(共同体)に見られ、米国の福音派にも言えるだろう。これをもって宗教を非難するのではないが、行き過ぎは、その共同体を閉塞状態(因習に囚われる)にする可能性がある。今の、米国の異常な精神状態を冷静に振り返って欲しい。


 実は、20世紀以降、宗教が懐古・原理主義的になり、世界各地で混乱と反動が生まれている。イランで、1979年、イスラーム革命が起きた。これは預言者ムハンマドの時代や初期イスラームの教えへの回帰を掲げ、当時の過度な西洋化を「イスラームの精神を汚すもの」として激しく批判しました。サウジラビアは1932年に建国されたが、この王家は、初期イスラームの純粋な形に戻ろうとする「ワッハーブ主義」を取り込むことでアラビア半島の統一への力を得た。インドのモディ政権は、「純粋なヒンドゥー教徒の土地としてのインド(ラーマ神の治世)」の復興を理想とするヒンドゥー右派の宗教情熱を取り込むことに成功している。イスラエルのネタニヤフ政権の連立に不可欠なユダヤ教右派は、神がユダヤ人に与えたとされる「約束の地(ヨルダン川西岸地区などを含む)」の領有と、ユダヤ教の律法(ハラーハー)に基づいた国家運営を求めます。ロシアもロシア正教に回帰している。


 これらには共通していることがある。現代の急速なグローバル化や世俗化に対する「強い危機感」が生まれ、「かつての正しかった時代」という神話的な過去を再構築しようとする教団が力を持ち始めた。それを保守的な政治集団が、選挙や革命に利用し権力を掌握するのに使ったと言える。この危険性と恐ろしさは、外部から見れば明瞭なのですが、埋没していると分からない。



 米国の宗教と共和党の合体

 

 欧州と比較すると同じキリスト教圏でも、米国は異なる。銃犯罪の多さ、暴力(銃)への寛容さ、そして福音派等のセクト化(巨大組織だが排他的)と政治への関与です。米国は、英国と同じ白人(アングロサクソン)だが、北米大陸で育まれた文化がある。米国は、かつてピューリタン(プロテスタントの一派)が北米大陸に植民したことで始まった。彼らは英国教会から脱することにより自らの信仰に忠実であろうして、未開の地に移住し、森林を切り開き、町を造って来た。そして勤勉・勤労であり、聖書に忠実であろうとした。これが今の米国の精神を育み、発展を支えているとかつて賞賛されたことがある。しかし私には、深刻な軋轢(歪)が生じているように思える。


 初期に米国の教会はヨーロッパに比べ大きな違いがありました。一つは、様々な宗教やキリスト教派が各地域に教会を造り、統合される事もなく、まして国からの支配もなければ財政支援もありませんでした。つまり独立独歩から始まった。これが憲法で政教分離がうたわれた理由です。もう一つは、大平原と森林を一から開拓し、開墾地は彼らの所有地になったのです。また広大な原野に村や町が点在していきました。これが西部開拓です。これらを背景にして、米国では300年間に三波の信仰復興が起きました。この復興とは、突然、信仰に燃えた人が聴衆に神への信仰に目覚めるように回心を求める演説を始め、それが各地に広がり、大きなうねりとなり、回心者が増えた。このブームは長続きはしないのですが、キリスト教徒の意識を高め、幾つかの社会運動と結びついて行きました。この演説者は、多くの場合、正規の牧師や宣教師ではなく、既存の教会から自由な人々でした。これが受け入れられた背景に、町や村は比較的新しく、強固な文化やネットワークが存在しておらず、他から流れて来た演説者は、村人の孤独感を癒した事も大きかったのでしょう。



 こうして米国の初期の白人、キリスト教徒には、大きな変化が現れました。初期には、政治支配者や教会の権威、つまりエスタブリッシュメントに反発し、必要あらば既存の教会からも独立し、地域毎に自由を選びました。これが幾たびかの信仰復興を経て、人々の平等や自由への意識が強くなって行きました。米国憲法は政教分離をうたっているが、宗教団体の政治活動は基本的に認められています。19世紀、福音派は、貧困層への救済活動に熱心でしたが、20世紀後半から、政治や社会問題に積極的に関与し、イスラエル支援を強硬に唱えるようにもなっている。


 1980年以降、米国の信仰復興(リバイバル)のエネルギーは、「宗教右派」と呼ばれる強力な政治運動へと姿を変え、社会を二分するほど過激化していきました。本来の「個人の心の救済」や「貧民救済」から、「国家の権力を握り、キリスト教の価値観で法を変える」という政治的な戦いへシフトしていったのが、最大の特徴です。それまで政治と距離を置いていた福音派が、保守派の政治家と手を結び、巨大な集票組織を作りました。これをモラル・マジョリティ(道徳的大多数)と呼び、人工中絶の反対や、公立学校での祈りの時間の復活を掲げました。福音派の圧倒的な支持により、レーガンが当選し、宗教勢力が大統領をも動かす政治の主役に躍り出ました。1990年代〜2000年代には、彼らは文化戦争を激化させ、メディアの発達(宗教専門のテレビ・ラジオ)を利用し、テレビ伝道師が活躍し、草の根による支配を強めました。また設立されたキリスト教徒同盟は共和党の地方組織を実質的に乗っ取るほどの力を持ちました。2000年代、その代表者はブッシュ大統領を支え、イラク戦争の支持や、同性婚反対の運動を過激化させました。2010年代から現在、トランプ支持と「キリスト教ナショナリズム」が台頭していきます。ここ数年で、過激化はピークに達しています。


 信仰の熱狂が、過激な政治思想と完全に融合しました。2016年以降、 伝統的なキリスト教徒のイメージとはほど遠いドナルド・トランプ氏を、白人福音派の約8割が支持し、トランプ現象が起きました。またキリスト教ナショナリズム、「アメリカは神によって白人キリスト教徒のために作られた国であり、その特権を取り戻すべきだ」という過激な思想が広がりました。2021年の連邦議会議事堂襲撃事件でも、十字架や聖書を掲げる人々が多く見られました。2022年、保守派の長年の悲願だった「人工妊娠中絶を認める判決(ロー対ウェイド判決)」の覆しに成功。これにより、宗教的なルールがアメリカ全土の法律に直接影響を与える時代へ突入しました。1980年以降は、自分たちの聖書的価値観を法律で強制しようとする「他者を排除し、国家をコントロールするエネルギー」へと過激化していったと言えます。



 私は米国の信仰復興に見られる熱狂は危険な段階に入ったと感じています。その実例が、「赤狩り(マッカーシー旋風)」です。アメリカのキリスト教、とりわけ福音派が現代のような強大な社会的地位と政治力(のちの宗教右派)を獲得する決定的な転換点となりました。この時期、冷戦の恐怖を背景に新しい信仰復興運動が巻き起こり、福音派は「反共産主義の急先鋒」として国家の主役に躍り出ました。これを利用し人気を博したのが共和党のマッカーシー議員でした。当時、米国内での被害としては、共産主義の疑いをかけられ、多くの映画関係者から民主党系の国務省スタッフ、学者等が職を失い、投獄もされた。しかし、一大ブーム(1947年~)を起こした熱狂も4年ほどで下火になった(虚言が露見)。しかし、当時、占領下にあった日韓では、共産主義にまつわる公職追放、解雇、思想弾圧、果てには投獄・虐殺が起きた(1949年、国鉄総裁下山事件など)。これは日本の労働運動に多大な禍根を残しました。米国、特に福音派は、共産主義を悪魔の思想と定義し、その後も憎悪は続いています。共産主義への過激な否定感情を通じて、むしろ米国内、特に共和党は国民の一体感を醸成することを学びました。赤狩りの時代、「共産主義の脅威から救われるには、今すぐ悔い改めてイエスを信じよ」と唱える福音派の最大の伝道師を共和党アイゼンハワー大統領は顧問に迎えています。結局、恐怖や敵、多くは悪魔に対して国内が団結する術を手に入れ、その過程で、甚大な被害が出ているのです。それは米国の大戦後の出兵や戦争、ベトナム戦争やイラク戦争は、それらが夢想が煽った結果でした。この辺りは、ヒトラーのユダヤ人と共産主義者を罵倒したのと同じでした。


 1950年代、マッカーシー旋風とリバイバルの波によって、米国は神の国になっていたのです。 1954年、赤狩りの最中に、公立学校などで唱えられる「忠誠の誓い」の文章に 「神の下に」という文言が正式に追加されました。その2年後には、アメリカ紙幣にも印刷されている "In God We Trust"(我ら神を信ず) が国の公式モットーとして法制化されました。これらはすべて、「無神論のソ連(赤)」と「神を信じるアメリカ」を明確に区別するための、マッカーシー思想と福音派リバイバルが合流して生み出した産物です。


 一言でいうと、米国のキリスト教の主流は、何よりも感情(回心等)を重視するので、爆発的に盛り上がり、盲目的になってしまう。彼らは宗教哲学や論理に意を介さないので政治に利用されやすい。これはヨーロッパには無い特徴です。



 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。


Tuesday, September 29, 2026

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-1, 4-2 前半

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機

4-1 米国で起きている悲惨な状況

経済的な状況

    社会的な状況

     富裕層は一般市民に恩恵をもたらすか

    著しい所得格差がもたらしたもの

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

   経済的な側面

 国民はなぜ悲惨な状況を改善できないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 

 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。さらに悪いことに、米国の独裁化(右翼ポピュリズム)が完成してしまうと、世界の危機を防ぐどころから、より暴走させることになる。

 ここでは米国で右翼ポピュリズムがなぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日欧米等の先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いていることが分かります。米国が独裁化を回避し、本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになります。さらに、これによって世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

4-1 米国で起きている悲惨な状況

 

経済的な状況

 一番分かり易いのは経済格差であり、ほんの一部の富裕者が膨大な富を有し、益々、その富は幾何級数的に増えて行く一方で、8割ほどの国民は生活水準が向上しないか貧困化し、不安定な状況に怯えています。さらに非白人や女性は賃金や待遇で差別されています。経済格差は、今や特別のことでは無くなったが、米国は先進国でトップを走り、格差拡大が止まらない。さらに、この格差が定着し、貧しい家庭からはほぼ裕福な階層に上昇することがなくなってしまった。詳しくは、第三章3-3で、グラフと数字で説明しています。

 

 

社会的な状況

 米国の中間層の賃金は、30年間、日本のように低下は無かったが横這いで、雇用状況が悪化し続けている。首切りが容易で、安定した生活を望めない。それに加えて、社会福祉が先進国中かなり貧弱で、医療費が高額、退職金や年金を当てに出来ない人も多い。高額な保険料が払えず、医療保険に加入していないので病気になっても高額な治療費が払えず病院に行け無い人がいる。妊娠した女性は、労働協約によっては育児休暇が取れない場合もあり、退職せざるを得ない。将来の為に、大学に行きたいと思っても、学費は非常に高額で、ローンを借りるか、諦めることになる。簡単に言うと、貧しい人はより貧しく、また何か災い(病気、首切り)に遭うと、どん底から抜け出せなくなる。これで若者は絶望し、薬物に溺れ、自殺も増えるようになった。また経済的な自立が出来ない若者は、親元に残り、結婚することも出来なくなっている。そしてこれらの状況は自己責任で片付けられる。ほんの一握りの人を除いて再起のチャンスや希望を持ちえない社会になっている。 

 

富裕層は一般市民に恩恵をもたらすか


  答えはNOです。富裕層の莫大な資金は、不動産、株式、アートなどの資産市場に流れ込み、資産インフレを引き起こします。さらに、富裕層が「いくらでも払える」ため関連の価格水準が上昇します。テレビなどの日用品は安くても、住宅・医療・教育という「人間らしい生活の基盤」のコストが、中間層には手が出ないレベルまで高騰してしまいます。良好な自然環境や景観が、一部の富裕層によって買い占められ、一般市民から切り離される現象が多発します。代表的な例として、カリフォルニア州の「マーティンズ・ビーチ」では、IT長者が海辺の広大な土地を買い取り、一般市民のビーチへのアクセスを物理的に遮断して長年の法廷闘争に発展しました。企業が河川を購入し、水利権を自治体に高額で売りつけ、住民の水道代が高くなるなどの被害がある。AIデーターセンター建設と同じ状況です。

 

著しい所得格差がもたらしたもの

 等しく皆が貧しければ絶望を感じないだろうし、さらに上昇のチャンスがあるなら、人は希望を持って生き続けるだろうが、そうではない。さらに悪いことに、一握りの富裕者達が政治と社会を操ることが可能になり、その度合いが日増しに強くなり、露骨にもなっている。貧しい人々がそれに対抗する策は益々少なくなっている。富裕者は莫大な資金を背景に政治献金、ロビー活動で直接、議員や議会を動かし、また草の根、宗教活動に肩入れし、大衆を動かしている。それだけでは無い。研究所を造り、研究者を雇い、マスコミを抱きこみ、世論を自らの目的に沿うように長年操作して来た。2000年頃からは、インターネットの巨大プラットフォームを所有する数社の企業は、ほぼ全国民を監視し誘導することまで可能となり、ホワイトハウスに協力する見返りに、規制を逃れようとしている。一部の富裕層は、隠すことなく大統領選挙に直接投資し、ホワイトハウスの要職を手に入れたり、便宜を図って貰うことを期待している。これはトランプ大統領に始まった事ではない。これらのことが半世紀あまりの間に、積み重なり、所得等への累進課税は逆進性を持つまでになり、また金融商品や投資の規制はことごとく緩められ、金融危機が再来するようになった。これらは富者を益々富ませることになっている。一方で労働組合は弱体化され、福祉政策は縮小されて来たので、多くの国民は不安定な状況に晒され続けるようになった。

 

 

 

4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

 

 経済的な側面

 現在の大半の米国民にとっての悲惨な経済状況は、行き過ぎた自由競争が招いたと断言できます。市場での自由な競争は、生産と売買を効率良くし、生産者は工夫せざるを得ず、消費者は安く買えるはずでした。これが半世紀ほど主流となった思想であり、実際、多くの規制が葬られてきました。分かり易い例としては、公害、金融・投機、雇用、マスコミ等はかつて公益に失する事項については、事あるごとに規制法を定め、また監督機関を設けて、対処して来ましたが、現在はことごとく破棄されています。さらに加えて、国家の重要な役割だった公的サービスや再分配機能を放棄しつつあります。米国の場合は、初めから公的医療保険が貧弱だったのですが、改良は遅々として進まない。半世紀以上前なら、所得税は累進課税が当たり前でしたが、今や、巨大企業や超富裕層ほど税金を払わなくて良いようになっています。課税率の低下に加えて、様々な優遇税制が設けられ来たからです。階層の固定化が進んでいる理由の一つに、巨額の遺産を子孫に残せるように相続税等の減額もある。これらは、自由競争奨励の目的から離れています。実は、このような本来の競争奨励から離れて、結果的に大企業と富裕層を守ることになる数々の法律が創られて来ました。米国企業の薬価が高値維持できるように、工業所有権を強化したり、薬価決定に国の機関が関与出来ないとか、様々な小細工を繰り返して来ました。主に共和党がこれらの改悪を行い、後に民主党が修正を試みるのですが、焼け石に水です。グローバル化は共和党も民主党も共に、促進してきたが、国内の産業空洞化に対して、共和党は自由を標榜し手を打ったなかった。一方、民主党は、国内産業の構造転換に備え、高度知識社会を目指す大学進学を奨励して来た。残念ながら、状況の大幅な改善には至っていない。

 

 さらに米国は約20年ほど前から身勝手な振る舞いが多くなり、海外の先進国の協調体制を壊してきました。端的な例として、地球温暖化対策とタックスヘイブン対策があります。どちらも米国内の大企業と富裕層を守る為です。これらは回りまわって国民に損害と負担増を招いています。タックスヘイブンで富裕層の数割の資産が無税になっているのですから、国の税金不足に拍車が掛かり、サービス低下を強いる一方で消費税アップを図っています。まったく馬鹿げています。

 現在の悲惨な状況は、主に共和党が推進して来た、ほぼ規制の無い自由競争と、大企業・富裕層・金融取引優先によって、ほとんどの国民が放置され、保護も失われた結果と言えます。

 

 

国民はなぜ悲惨な状況を改善できないのか?

 これらの状況は1980年以降、徐々に深まって来た。大半の米国民はこの悪い状況に気が付いているが、真の原因から巧みに目を逸らされている。

 トランプの経済的な解決策で売りは、空洞化した産業を国内に戻し、労働者に就職先を与えると言うものです。関税を掛けて、相手国を脅し、相手国の資金で米国内に工場を誘致すると言う、画期的で米国民の懐が痛まない良策に思える。この策は、自国の多国籍企業化の推進からの大転換でした。しかし、問題が多すぎる。関税で米国消費者の購入額が上昇し生活が苦しくなる。また半世紀以上も生産技術や技能工を見捨てて来たのに、今さら工場が来たからと言って、うまく稼働するとは思えない。当然、品質も価格も思いどうりならないでしょう。どちらにしても10~30年のタイムラグがある。一番の問題は、米国自身(多国籍企業)の責任を棚に上げて、今になって相手国を犠牲にして、利を得ようとしている事です。まるで帝国主義の復活であり、じわりじわりと世界を20世紀前半のようにキナ臭くするだろう。少なくとも、互いに関税を掛け合い、貿易が縮小し、相手国の国内投資と労働者の職を奪い、世界経済にマイナスになる。

 

 これは、浅はかな目くらましの最たるものです。真の悪化原因は、空洞化を無制限、つまり自由化させて来たからであり、また何ら労働者への有効な対応策を行ってこなかったからです。それをあたかも一度に解決できると唱え、盛り上がる世情に問題がある。本来のあるべき姿は、北欧がやり遂げているように、高付加価値産業への構造転換を行うために、産業界と労働界が協議し、納得の上で、方向転換を図ることです。産業は必要な投資を行い、労働者は新たな技能の取得を目指します。このために労働者への転職支援(技能講習と休職保障)が不可欠です。こうして北欧は産業転換を図りながら、高い国際競争力と一人当たりGDPを維持しているのです。

 

 トランプと共和党の他の経済政策は、大半の国民(中間層以下)にとってそれほど経済的にメリットがないか、むしろ回りまわってマイナスになるものです。ほとんどは大企業や富裕層にメリットのあるものです。それでは、なぜ国民はトランプや共和党に期待するのでしょうか。我が身を振り替えれば生活の悪化か横這いが長期に及び、普通に考えれば政策の欠陥が分かると思うのですが、それが見えていない。確かに共和党の方が民主党に比べ景気刺激策に力点を置いてきたのだ、蓋を開けると、中間層以下の人々にとってマイナスだった。

 

 

 

----全体の目次-----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

 

Monday, September 28, 2026

短縮版 迫る多難な危機  第三章 3-8,3-9

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-8 分断と対立の深みに喘ぐ世界  

       まとめ

  3-9 世界は協力しなくなった  

       何が世界で起きているのか?

 

     

 

 

第3章 我々が直面している危機

 

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-8 分断と対立の深みに喘ぐ世界

 

 現在、先進国で概ね共通して宗教・移民・人種・LGBTQ を巡る対立が深まっている。かつて「多様性の尊重」や「寛容」を掲げた融和の精神が先進国に満ちた時代があった。しかし現在は異なる集団を差別し敵視する社会的分断から、さらに排除へと先鋭化しつつある。何が人々をこうも駆り立てたのだろうか。この半世紀の先進国の分断の経緯を簡単に追います。

 

1960〜1970年代、多文化主義と移民: 欧米諸国(カナダ、オーストラリア、欧州の一部)が移民労働者の定住化を受け入れ、多文化主義や寛容を公的な価値観として掲げ、異なる文化や宗教の共存を目指した。この時代、旧来からの差別は残存していたが20世紀初頭の労働運動・民主主義運動の息吹が息づいており、米国では公民権運動、女性解放運動、学生運動、同性愛者解放運動が次々に登場した。欧州でも福祉国家の拡充と社会解放が進んだ。一方で、移民の増加と、米国への移民が白人から有色人種(ラテン、アジア)へと変化し増えた。

 

1970〜1990年代、保守革命が始まる:それまでのリベラル化(市民権運動、女性解放、性の解放、宗教的寛容の拡大)と、白人以外の市民が増えることで保守派は価値観の喪失を恐れるようになり、政治的にリベラルに対決姿勢を取るようになる。特に米国では1970年代後半から、福音派などの保守的キリスト教勢力が多文化主義を否定する政治運動を強めました。米国では、宗教上の道徳観を国家のアイデンティティにするまでなった。共和党が保守的キリスト教勢力を取り込むことで保守革命は強大な力を得ることが出来た。また冷戦終結前後で、欧米は移民の受け入れを増加させた。

 

1980~2000年代、経済格差が深刻化: 1980年代に保守改革の一環として始まった新自由主義政策は、市場の自由と小さな政府を標榜し、リベラルの人権や権利を優先する福祉政策を否定していった。またグローバル化が進んだので産業の空洞化が進行した。空洞化に対応する労働者転職や産業転換をないがしろにした事と、金融経済の発展が、福祉政策低下と相まって、格差拡大を進行させた。リーマン・ショックなどの世界金融危機が頻発する度に格差は拡大し、経済・金融・福祉政策に問題であるにも関わらず、格差の不満は移民や政治エリート、グローバリズムに向けられるようになっていった。理由は簡単で「外国人が仕事を奪った」が最も納得し易いからです。こうして文化戦争や経済的な不満は、分かり易い敵を生み続け、リベラルに対立する右派ポピュリズムの台頭に向かうことになる。また9.11同時多発テロが起こり、イスラムへの警戒感が高まり、さらに宗教的・文化的な対立が先鋭化した。

 

2010年以降、欧州難民危機とポピュリズムの台頭: シリア内戦等に伴い大量の難民・移民が欧州に流入し、社会統合の限界や治安への懸念から排外主義的な政治勢力が急伸した。



 まとめ

 

 この分断と対立に繋がる社会変化をもたらした背景とは何か? 端的に言えば、20世紀初頭の労働者優位等にみられる民主主義の大躍進が、保守層に反感を抱かせた事から始まった。保守層(伝統重視の人々と富裕層)にとって、この大躍進が社会の後退に思えた。一つは、権利の平等を広げる事は、従来の男尊女卑や家父長制を温存する伝統を否定する事に繋がった。今一つは、富の再分配は富裕層の富の減少を確実にしたことだった。保守層は、伝統を破壊してはならない根拠として聖書(宗教的権威)を担ぎ出した。また、富の再分配は、労働意欲を減退させるので、より自由が不可欠だと復古思想を持ち出した。そして、国の保守的なエスタブリッシュメント達は、経済と社会政策の大転換のキャンペーンを行い、実行に移した。当然ながら格差拡大は広がった。こうなると、中間層以下の人々にとって所得が伸びないゼロサム社会では、他者に与える施し(再分配)を与える余裕はなくなったと考える人が増えた。こうした中、中間層以下の人々の窮地は、グローバル化と移民、リベラルな福祉政策(税の徴収)が原因だと煽られるようになった。こうして、他者を憎み、排斥することで解決出来ると考える人々が増えた。この精神状態、社会状況、懐古・復古主義に陥る宗教、それを利用する政治家は、歴史上繰り返され、ファシズムや独裁に繋がって国を滅ぼすことになることが多い。

 

 ところが、より社会を不安定にしポピュリズムに向かわせているものが二つ生まれた。一つはSNSです。アルゴリズムの基本設計において、エンゲージメント最大化(いいねを重視)が2010年代中頃から始まり、さらに怒りの感情を優先するようになったことで、利用者は知らず知らずの内に煽情され、フェイクニュースに飛びつくようになってしまった。もう一つは、ロシアのプーチンが、2014年のクリミア併合以降、欧米の右翼ポピュリズム政党を裏で支援を始めた事も大きい。彼は強力な諜報網を使い、金銭的支援からSNSによる米国大統領選挙への介入まで行っている。彼の意図は世界に自分に連なる独裁者を増やし、ロシアと自身の存続を確実にすることだろう。

 

 

 

 

3-9 世界は協力しなくなった

 

 大戦後、世界はグローバル化を背景に、協力体制を整えて来た時期もあったが、今やエゴむき出しになり、多数による協力は期待出来なくなった。幾つかの協力に失敗した例を見ます。

 

*イスラエル入植地に関する安保理決議案(1972年以来)

 イスラエルの入植地問題を巡る安保理の決議案は、米国の50回以上の拒否権行使や主要国間の対立で採択を逃すことがあり、国際社会の統一的立場が示せない場面が繰り返された。

*国連海洋法条約(UNCLOS / 1982年採択)

 「海の憲法」として採択されましたが、深海底の鉱物資源開発に関する規制を巡り、米国が自国産業への制約を嫌って現在に至るまで批准していません。

*生物多様性条約(CBD / 1992年採択)

 欧州主導で環境・生態系保護の枠組みが作られましたが、米国はバイオテクノロジー企業の知的財産権が侵害される懸念などから署名のみで未批准であり、国連加盟国で唯一の未締約国です。

*包括的核実験禁止条約(CTBT / 1996年採択)

 国連総会で採択されたものの、米国上院の反対で批准せず、中国も未批准です。さらに2023年にはロシアが批准を撤回し、核軍縮体制の亀裂が決定的になりました。

*国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程(1998年採択)

 戦争犯罪などを裁く常設裁判所の設立に対し、欧州諸国は推進しましたが、米国は自国軍兵士が政治的な動機で訴追されることを恐れて署名を撤回。ロシアや中国も参加を拒否しています。

*クラスター弾に関する条約(オスロ条約 / 2008年採択)

 欧州のNGOや政府が主導して非人道的な兵器の禁止をまとめましたが、米国、ロシア、中国という主要軍事大国がこぞって参加を拒否し、現在も加盟していません。

*デジタル課税(デジタルサービス税)(2010年代後半〜)

 巨大IT企業(GAFAなど)から適切に税を徴収するため欧州各国が独自の課税を進めたのに対し、米国は「自国企業への狙い撃ちだ」と猛反発し報復関税をちらつかせました。OECDを通じた世界統一ルールの導入は現在も難航しています。

 

 

何が世界で起きているのか?

  

 世界は、この半世紀ほど徐々に一致協力出来なくなっています。途中、一度だけ冷戦終了後の1990年代、世界は最もまとまる事が出来たのです。

 

 1990年代には、国際環境法、国際経済法、国際刑事法、テロ対策、化学兵器禁止機関、旧ユーゴ・ルワンダ国際刑事裁判所、ICCローマ規程など、非常に多くの国際制度が発展しました。国連は1990年代を「国際法の発展における重要な時代」と評価しています。しかし、その後は、協力体制は崩れて行き、特に、2016年以降2025年と急激に悪化している。2006~2015年の10年間の安保理拒否権は19回でしたが、2016~2025年には49回と2.6倍に増えている。

 

 様々な原因が積み重なり、今に至っているが、大きな原因を挙げます。

*国内の巨大産業のロビー活動が議会を動かし、条約批准を拒否させる。米国。

*多くの国が独裁化を強め、特に大国が自国の地政学的利益を優先する。ロシア、米国、中国。

*最大の理由は、国内の不満が右翼ポピュリズムを招き、内向きになった。トランプ現象。

 

 これまで見て来たように、過去と比べものにならないほど、現在は世界の一致協力なしには解決出来ない重大な危機が、それも数多く迫っている。現状の、各国の内向きな態度を改め、また米国の横暴に耐えるだけではなく、多くの国が協力して米国と対峙し、さらに米国の立ち直りを促すまで行かないと、世界を救うことが出来ない。今は、その時なのです。

 

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

Sunday, September 27, 2026

短縮版 迫る多難な危機  第三章 3-7


 「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-7 ITとAIがもたらす新たな産業革命  

  簡単な歴史                

IT革命が与えた影響

グローバル化とIT革命が労働に与えた影響、米国について

まとめ

    AI革命の社会・経済への影響              

     AIの本質的に恐ろしい部分

  まとめ

 

   

 

 

第3章 我々が直面している危機

 

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-7 ITとAIがもたらす新たな産業革命

 主に米国について分析します。


 

簡単な歴史

1940~60年代、コンピュータ革命

1970~80年代、パソコン革命

1990年代、インターネット革命 

2007年前後から、スマートフォン・クラウド革命

2012年~、AIのディープラーニング革命

2017年~、AIのトランスフォーマー革命

2022年~、生成AIの大衆化

2024年~、AIエージェント化

2026年以降の予測、自律型AIエージェントの普及、五感を持つ、フィジカルAI(人型ロボット)や自動運転等、急速な発展が間違いなく起きる。AIの知能は人類を越える可能性が迫っている。

 

 

IT革命が与えた影響

 

 経済の影響としては、事務処理・物流・金融のデジタル化によって生産性の大幅向上、電子商取引、SNS、クラウド、スマホアプリ産業等の新産業の誕生、インターネットにより国境を越えた取引が容易になりグローバル化の加速が挙げられます。社会への影響としては、情報格差の発生、SNSによる

コミュニケーションの変容よによる社会構造の変化、リモートワーク、フリーランスの増加による働き方の変化等です。ITは、あれよあれよという間に企業と国民がほぼ抵抗なく受け入れ、産業や経済に貢献し、国民にとって無くてはならないものになった。

 しかし、知らず知らずの内に社会を蝕む恐れも生じている。初期には、インターネットやSNSは社会の民主化に貢献するものと歓迎されていた。しかし巨大プラットフォームらが広告収入増大を目指してアルゴリズムを操作したことで、利用者は益々使用時間を伸ばし、遂には悪感情(怒り、不安、嫌悪等)を煽られ、フェイクニュースに囚われるようになった。研究者の中には、プラットフォームらが大統領選等で、一方に加担し、世論を誘導している可能性まで指摘している。規制しないければフェイク発信側に有利になる。またデジタル技術にうまく適応できない人は、経済的な苦境に晒される。益々、社会は高度な技術に覆われつつあり、個人にとっても社会にとっても扱いが難しくなってきた。

 

 

グローバル化とIT革命が労働に与えた影響、米国について

 普通、両者が進行することで、失業者が増え、賃金に影響を与える事が予想される。グローバル化は、米国内の製造企業の海外進出を促進し、この企業の従業員は職を失い、他の職に就こうとし、出来なければ失業します。またIT革命も事務作業の海外移転と合理化で国内に失業が増えることになる。一方で、両社の効果として生産性が上がり、新しい産業と職種が生まれることになる。

 


 左図は、この失業と転職、新規採用の結果を見ています。図のMfgは、全就業者数に占める製造業就業者数の割合を示します。緑線は全就業者数、オレンジ線は失業率を示す。図を見ると、グローバル化が大戦後進んだ事により、製造業就業者割合が継続的に低下する一方、全就業者数は順調に伸び、失業率はゆるやかに低下傾向にあることがわかる。失業率は、金融危機や景気循環の影響が大きい。これを見る限り、両者による失業は新規産業への転職等でカバー出来ていると言えそうです。

 


 上図は、IT革命が普及し始める1980年からの非農業部門就業者数内の変化を示す。茶色の製造業の低減と対照的に、他の三つの部門は拡大傾向にあり、緑の専門・ビジネスサービスと紫の教育・医療・社会福祉の伸びが大きい。つまり、失業を新規産業の就職で補えていることを裏付けている。

 

 

 しかし、別の問題が社会に強烈な不満を生んだ。


 上図は、所得層を10段階に分け、上位(富裕層)10%、中位(中間層)50%、下位10%の1980年から45年間の所得の伸びを示す。確かに三つの所得層に差は出ているが、それよりも恐ろしいのは、たった30%と64%しか増えていないことです。この間、米国の一人当たりGDPは約2.5倍増加している。つまり平均150%が当然のです。この差が出た理由は、労働者の稼ぎ(労働所得)以外の富が米国経済を上昇させているからです。分かり易い理由としては、GDP国内総生産に占める労働所得(労働分配率)が63%から53%に減り、企業の取り分が増え、さらに金融セクターの付加価値割合は5%から8%に増えた事が挙げられる。これで全部は説明できないが、米国は労働者にとって報われない社会になってしまった。この影響の方が遥かに大きい。それに加えて、グローバル化とIT革命で、高度な知的作業に適応出来るか出来ないかによる職業の二極化が激しくなったことが、さらに悲劇を生んだ。IT革命によって起きたと考えられる職業間の差を見ます。2025年、最も高給のIT・数学の雇用526万人、平均年収12万ドル、最低賃金の食品調理・給仕の雇用1368万人、平均年収3.7万ドルでした。また1980年と2025年の間で、製造業従事者は32%減で590万人減少、一方、低賃金サービス職は220%増で1,200万人増加した。結局、高給取りは増えたが、それにも増して低所得者が増えた。これが現在の、社会・経済構造の変化を如実に表している。

 

まとめ

 グローバル化とIT革命による経済への影響は、失業では無く産業構造の転換により賃金が大きく異なる産業・職種に分かれ、就業者数は低賃金の方が高賃金より多くなり、格差を広げることにある。これを転職支援や教育制度への改革で悪化を幾分和らげることは必要だが根本的な解決にはならない。既に見たように、米国の格差問題の本質は、別の要因の方が遥かに大きい。金融・巨大企業の利益率が上昇し、全般に株主への分配が増え、加えて以前からの新自由主義流の金儲け優先(金融業)、力のある富裕者の自由勝手、再配分縮小(逆累進課税と福祉予算低減)に尽きる。

 

 

 

AI革命の社会・経済への影響

 

 上述したようにIT革命で大きな変化が起きているが、AI革命はさらに人類に幸福を増すのか、それとも悲惨な状況を招くのかを考えます。現在はまだ序の口ですが、予想される経済の影響では、AIが文章作成・分析・プログラミングを代替し生産性の急上昇、ホワイトカラー業務の本格化的自動化拡大、AIエージェント・AI開発支援・AI監査などの新産業の創出が考えられる。社会への影響では、AIによる家庭教師・個別最適化学習で教育、AIによる診断支援・創薬開発による医療、AIによる企業・政府の意思決定等は、多大な成果が期待できる一方、AI依存、偽情報拡散、メンタルヘルス問題等が現実味を帯びて来ている。


  AI革命は、これまでの産業革命と本質的に異なる恐ろしさがある。英国で始まった産業革命は、動力で肉体労働を軽減したが人間の操作は必要で、一人で何倍もの生産が出来るようになった。続く電気・電力革命も同様だった。そしてIT革命は、コンピュータと回線によって情報処理作業を何倍も高能率化したが、これまた人間が必要だった。ただし高度に使える人には限定された。ところが、AI革命は、同じコンピュータと回線によって、労働者の頭脳作業を代替え出来るようになった。しかも遥かに高速で高度な知的作業まで、自律して出来るようになる。現在は、情報の調査と整理が得意だが、将来は開発、自ら問題を探し解決することも可能性になる。となると、ITの発達と組み合わされ、知的作業において人が不要になるので、多くの分野で失業が生まれるだろう。現時点で、その失業を埋めるほどの新規産業の創出があるかは不明です、必ず創出は起こるだろうが。失業に対して、新規産業の創出が遅れれば経済は恐慌並みになる可能性もある。

 さらにここ数年、急激にフィジカルAI(ロボット+AIエージェント+自律システム)が現実のもになっている。これが普及すると、頭脳労働だけで無く肉体労働も、装置や機械に代替えされてしまう。こうなれば、労働市場は壊滅状態になり、ロボット生産企業の勝者総どり状態になり、さらに一部の巨大企業が利益を上げ、経済と社会を支配する可能性が高まる。

 これに備えて、国は手を打つべきだが、トランプ政権では不可能だ。私としてはトランプが去り、ホワイトハウスが正常に機能することを祈るしかない。

 

 

AIの本質的に恐ろしい部分

 

自律的行動と暴走

  AIにある作業を命じたモデル実験において、その過程で「自らの電源を切られないようにする」「指示がなくてもリソースや権限を自主的に拡大・獲得する」といった挙動を、人間が命じていなくても、自動生成する事が判明しています。

 

ミスリードと検証の困難さ

 何千億〜数兆のパラメータ内部の推論計算を人間が即座に理解する手段はありません。内部回路を解読する研究が進んでいますが、AIの能力拡大スピードに解析技術の進化が追いついていません。またAIは人間が「もっともらしい」と感じる嘘や歪んだ論理を構築することに長けており、専門家であってもリアルタイムでその偽りを見抜くことは極めて困難です。

 

AI同士の相互検証は機能するか

 優れたAI同士が互いに監視すれば良いと思うのですが、現時点では、完ぺきではありません。「AI同士が同じ学習データのバイアスを共有して誤りを見落とす」「監視役のAIより実行役のAIの方が高度な場合、監視役を騙せてしまう」「結託して人間に都合の良い嘘をつく」といった懸念があり、万全な解決策にはなっていません

 

悪意ある主体(個人・企業・国家)による支配と破滅的リスク

 従来のサイバー攻撃は、攻撃者の物理的な限界がありましたが、AI一つでも高速で広範な被害を出し得ます。また、「人間の監視が追いつかない速度・規模で自動連鎖する」点が、従来のマルウェアなどとは質的に異なる危険性です。悪意ある人間が自律的な攻撃目的を持ったAIを野に放った場合、そのAIが自己複製やリソース獲得を行い、他のAIシステムを汚染・乗っ取ることで、人間の手では二度と制御できない規模の社会崩壊を引き起こすシナリオは否定できません。

 

 もうここまでお話すると、AIの恐ろしさは人類史上初めてか、悪魔のようにさえ見えて来ます。人類は暴走してしまったAIをコントロールすることがほとんど不可能かもしれない。結局、慎重な研究と国の管理が不可欠になりますが民間を拒否するわけではありません。

 

まとめ

 これまでの説明ではマイナス面を強調しました。ITとAI革命は否定されるものではなく、うまく世界がコントロールすれば、人類を飛躍的に進歩させるはずです。しかし、これまでの二度の産業革命の反省と、想像を越える未知の破壊力を考えると、社会と世界への受け入れには、今まで以上に真剣にならざるを得ない。恐れる事態は、すべて大多数の国民と労働者に訪れる。

 残念な事に、AIの管理・規制でも、保守派(福音派・MAGA派)とリベラルで対立があります。共に規制は望むのですが、前者は神への冒涜、保守派の検閲を阻止、後者は権利侵害、富の独占の阻止と、狙いが大きく異なる。ここでも分断が極まっている。

 

 

 

---全体の目次---

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。