Thursday, June 11, 2020

世界が崩壊しない前に 29: 貧困と格差 4




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貧困や格差は経済を本当に悪化させるのだろうか?


**格差が拡大すると経済発展を阻害する**

(今の自由放任主義経済や金融偏重経済の問題は別に見ます)

多くの人は、日米の経済は株価が上昇し、好調だと首を傾げるかもしれない。
実態は、90%の国民の所得がほぼ伸びておらず、一部の人が恩恵を受けているに過ぎない(日本だけではないが)。

一番悲惨なのは日本です。

日銀が市中銀行に幾ら金をばら撒いても、まったくインフレが起きなかった。
(逆に、これをもってMMT(現代貨幣理論)は、日本政府は国債発行や税収に頼らずに、国民の為の財政支出が可能だと提言している。重要な指摘ですので別に解説します。)
実体経済は浮上せず、金融経済だけを潤したリフレ論者は迷惑なだけだった!

経済再生に失敗した理由は、単純だが重大な致命傷による。
国内需要を担う国民の90%の人々の所得が低下し続けているので、銀行に金をばら撒いても消費が伸びるはずがない。
つまりインフレ(2~3%)は起きない(アベノミクス前から自明だった)。

一方金持ちや大企業は消費や物づくり(実体経済)より利益率の高いに金融投資に大金を注ぎ込む。
現在、庶民の預金金利は0.1%(日本)だが、金持ちや企業の資金運用(米国のファンド)は8%ほどの利益を上げ続けている。

こうして格差拡大で消費は増えず実体経済も伸びず、それがまた格差拡大を広げているのが現在の経済システムなのです。


 
< 2. 表の顔 >

なぜこんな愚策がまかり通るのか。
政府は経済刺激と称して金融投資で利益が得られるように規制緩和と金融緩和を行う。
これは現在の経済システムがバブル崩壊を繰り返し、さらに巨大化しているからです。
政府はこの金融危機をリカバリーするために行わざるを得ないのです。
まるで蟻地獄、底無し沼のようです。


 
< 3. 裏の顔: 2012年と2016年の比較 >

努力は必要ですが、この表と裏の顔の違いを理解することは重要です。

あるジャ―ナリストは指摘する。
20世紀最大の二つの危機―1929年の大恐慌と2008年のリーママンショックに先行して格差が激しくなっていた。
今も?

ある経済学者は言う。
少数のエリート階級に資本が集中すると、デフレを誘発し、投機的バブルを招き、経済回復力の弱体化を招き、金融崩壊のリスクを高める。
衝撃が繰り返されると、信頼が損なわれ、経済成長が減速し、これがさらに格差拡大に結びつくと。

ある社会学者は、金持ちが地球を破壊すると言う。
経済格差が拡大すると、「虚栄的消費活動」が活発化し、資源の浪費を高め、これがまた資源の枯渇を早める。
この「虚栄的・・」とは、超金持ちの消費スタイルに近づこうと各階層の人々が真似る競争状態を指します。


 
*4

ここで基本に立ち返ります。

「自由競争こそが最高、格差など気にしない」
この考えがなぜ国民に浸透したのか?

実は、格差が縮小し最も経済が成長した時代は2回の大戦後と1930年代の大恐慌後でした。
この時期は、国家が強力に富裕層や金融家を抑えて、労働者の賃金向上などを図った(ニューディール政策など)。

この事実が現在のエリートや富裕層にとって都合が悪い為、大金を費やしシンクタンクや学者、マスコミを動員して否定しているのです。
真実は明白なのですが、多勢に無勢と言うところでしょうか。

これ一つとっても、格差が拡大してしまうと、ナチス支配と同様に反転の困難さがわかります。


次回に続きます。

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