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Sunday, June 7, 2020

世界が崩壊しない前に 28: 貧困と格差 3







*1

前回、貧困と格差は国によって作られていることを見ました。
貧困と格差は人権の問題に留まらず、危機をもたらすとしたら?


多くの人は、国が貧困と格差を是正し過ぎると、労働意欲を減じ競争心が無くなり、経済に悪影響すると信じさせられている。
だから悪化していても気にも留めない。

しかし事はそんな単純ではないし危険でさえある。
また格差が少ない国でも経済が豊かで成長している国があるので、明らかに誤解(洗脳)です。


**放置すれば騒乱や世界を後退させる引き金になる**

概ね二つのポイント、社会的なものと経済的なものがあります。

貧困な国ほど教育と医療、経済の水準が低くなり、人口増・伝染病・紛争を引き起こし易く、悪循環を招く。
外部からの衝撃、特に伝染病、大国の貿易や通貨の圧力に弱いために容易に悪化する。
こうして武力衝突、難民や伝染病などを周辺に、そして世界に広めることになる。
今回のコロナ危機で判明したように、先進国であっても格差が大きい米国や英国では弱者が感染爆発の被害者になった。


歴史を振り返れば、貧困と格差拡大は社会騒乱の引き金になっている。
それは大国や一度興隆した国ほど暴力的になるようだ。
ローマ帝国や中国の名だたる王朝が崩壊する時、格差が拡大し暴動が起きていた。

 
< 2.英国が帝国主義を終えた時期 >

グラフの赤線は英国がアフリカの支配を終えた時期を示す。
経済が後退し帝国主義に走った19世紀後半の大英帝国では、この2百年間で最も格差が大きかった
また他国よりも酷かった。

 
< 3. ドイツと日本のファシズム期 >

グラフの赤線はヒトラー総統の時代、緑の矢印は日本の大陸進出の時代を示す。
共に格差が酷い。
20世紀前半のドイツと日本は、一時の栄光の後に訪れた大恐慌が大失業をもたらし、貧困と格差による社会不安がファシズムへと突き動かした。


これは普遍的な社会現象と言え、様々な識者が警告を発している。

ある疫学者は、先進工業国23カ国を比較すると、健康指数が悪化するのは、GDPが下がった時ではなく、格差が拡大した時であることを発見した。
また同時に犯罪率、幼児死亡率、精神疾患、アルコール消費量などにも重大な影響を及ぼしている。

ある経済学者は、格差は改革の意欲をそぎ、人々の信頼を失わせ、フラストレーションを高め、政治や行政に対する信頼を失わせると指摘する。
また棄権が増え、選挙の票は金で買われ、富裕層が公的機関への支配を強めている。

まさに日米、先進国で起こっていることです。


次回に続きます。






Saturday, June 6, 2020

世界が崩壊しない前に 27: 貧困と格差 2




*1

前回、世界と日本の状況を見ました。
今、世界で何が起きているかを見ます。


前回、世界の絶対的貧困率が減少する一方、国家間と国内の格差が広がっていることを見ました。


 
< 2.富裕層の所得の推移 >

米国の所得上位10%が1940~1970年代、全国民所得の35%を占めていたが、その後上昇を始め2007年には50%になった(上記グラフとは別)。
同時期、上位1%の占有率は10%ほどから24%になった。


 
< 3.世界の億万長者 >

格差の諸相

ほんの一握りの人間に富が集中し加速している。

1970年代、所得税の最高税率は英で90%を越え、米で70%あったが、その後英米共に40%まで急速に下げ、日本も追従した。

世界の株式と債券の総額は1980年10兆ドルだったが、2009年には126兆ドルになり、12.6倍となったが、この間の世界実質GDPは2.8倍に過ぎない


主な要因

大国や多国籍企業の身勝手な経済・外交・軍事的な干渉が発展途上国の貧困を助長している(アジア通貨危機など)。
せっかく途上国自身の努力、そして国際機関や先進国による支援などにより豊かさを手にしているのだが。

ニュー・ワールド・エコノミー(容易に国境を越える、瞬時に伝わる情報、日々進む知識集約化、熾烈な競争)が進み、教育・情報力や資金力などの差が益々格差を広げている。

以下が一番の元凶です。
ここ40年間、米国を筆頭に自由放任経済の国では、金融緩和と規制緩和(合併や競争激化など)によって巨大企業ほど収益が上がり、さらに減税(法人税、逆累進課税など)で富は集中し加速した。
さらに実体経済より金融経済で高収益が得られるようになったことで、実体経済に資本が向かわず停滞するようになった。

これにより経済が成長しても90%の国民の所得が伸びず、日本では低下すらしている。

様々な要因が絡んではいるが、けっして偶然ではない。

最も問題なのは、大資本や企業が野放しにされていると言うより、多くの先進国が競うように、これらを優遇していることにある。
当然、北欧などのように格差を押さえながら成長も手に入れている国は多い。


次回、貧困と格差の問題を見ます。

Friday, June 5, 2020

世界が崩壊しない前に 26: 貧困と格差




*1

貧困と格差が悪化し続けた先にあるもの・・

いつの世にも貧困と格差はあった。
動物は弱肉強食なのだから、これも自己責任だ。
自由競争こそが経済成長を約束する。
世界経済は成長しているのだから貧困や格差問題はやがてなくなる。

一方、歴史を振り返ると、悪化する貧困や格差が大衆の怒りを爆発させ、ファシズムや革命へと進む事例は事欠かない。

現在、世界はどちらに向かっているのだろうか?

最も豊かな国20ヶ国と最貧国20ヶ国の所得格差はこの40年間に倍増し、40対1になった(2000年で)。
この格差は開発が遅れているアフリカでさらに加速している。

それでは国内の格差はどうか?
アメリカではトップ5分の1と最下層5分の1の所得比は1990年には18対1だったが、2000年には24対1になった。
この間、大卒と高卒の学歴による収入格差も倍増している。
最初はアングロサクソン系(英米)の国々で目立ったが、現在急速に各国に広がっている。
国内の格差拡大は、ラテンアメリカでも1980年代か目立ち始めたが、現在では中国でも都市と農村の差が大きくなっている。

貧困はどうだろうか?
貧困には絶対的と相対的がある。
絶対的貧困とは2015年で1日1.25$以下の収入を指し、相対的貧困とは国民の所得中央値の半分以下の収入を意味する。


 
< 2. 2015年の絶対的貧困率 >

円の大きさと数値が絶対貧困率を示し、西アフリカなどでは最大58%になった。
世界の絶対的貧困率は1990年36%、2015年10%と減少傾向にあり、全体的に見れば世界は豊かになりつつある。
しかし、これは脆く、いとも簡単に崩れるだろう。
今回のコロナ危機などの衝撃は、貧困地帯により多くのダメージを与えるからです。


 
< 3. 2010年、OECD各国の相対的貧困率 >

このグラフから皆さんに読み取って欲しいことがあります。
それは同じ資本主義国でありながら北欧やベネルックスの国々は、すべて貧困率が低いと言うことです。
つまり貧困は自己責任だと納得してしまう前に、政治社会にこそ、その原因があることを知って頂きたい。


 
< 4. 日本の相対的貧困率の趨勢 >

相対的貧困率で日本はアメリカに次いで第4位になった。
二つのグラフから、日本はいつの間にか格差大国に墜ち、かつその傾向は強まっている。
2015年に貧困率が少し低下していますが、これは景気の波によるものです。
今後、コロナ危機による大規模な景気後退により、2008年のリーマンショック後のように貧困率は確実に上がります。

次回に続きます。



Friday, May 8, 2020

世界が崩壊しない前に 24: 掘り尽くす鉱物


*1


宇宙誕生から138億年間で生まれた元素や地球の鉱物を、人類はこれから数十年ほどで使い切ってしまう。
その先は・・・





*2

青銅と鉄は文明と強国の象徴でした。
紀元前、もしヒッタイトとケルトが鉄器を持っていなかったら、ガンジス川や黄河流域で鉄の農耕具が普及していなければ、歴史は大きく変わっていた。
金と銀は繁栄の象徴であり、昔から通貨の役割を果たして来た。
建物から自動車、携帯電話、薬品、太陽電池まで鉱物無しでは造れず、生活は不可能だ。

国際環境開発協会が15年ほど前、よく知られた八つの金属(鉄、アルミ、鉛、ニッケル、銅、他)の残りの可採年数は15~81年と発表した。
推定埋蔵量は500~1100年分あるが、採掘には膨大な損失が伴う。
環境省の2009年の資料によると、可採年数は金20年、銀19年、レアメタルのクロム15年、インジウム18年とある。

ここ半世紀、かつて指摘された地下資源の可採年数を越えても、掘り尽くした物はなく、今も採掘は続いている。
しかし確実に可採年数は短くなっている。


* 何が問題か? *

可採年数は、世界経済(消費)の伸び、新規に発見される埋蔵量、リサイクル量、そして採掘コストによって決まる。

だが埋蔵量は増えても、鉱石の品位が下がり続けており、益々採掘にエネルギー(コスト)と水の使用量が増える。
また鉱山から出る鉱さいや処理液はこれまでの数十倍に達し、環境破壊と深刻な公害を招く。
さらに農業や漁業資源を減らすことにもなる。

最大の懸念は、生産と埋蔵している国が大きく偏在していることです。

中国の生産量は金で1位、レアアース(17元素)では世界シェアの96%に達する。
埋蔵量の世界シェアでは、リチウムはチリで75%、プラチナは南アフリカで88%と偏在している。
一方、日本はベースメタル(鉄、銅など)とレアメタル(リチウム、コバルトなど)は100%輸入に頼っている。


* もし枯渇の危機が来れば! *

希少元素や鉱物の枯渇は、コロナ危機のマスクのように2ヶ月ほどの品不足では済まない。
今回の日本政府の対応を見れば、危機管理(体制とシミレーション)が出来ていなかった事と、隣国との協調体制が取れないことで傷口を大きくしてしまうことが理解出来たはずです。

おそらく悲惨な争奪が始まるだろう。
既に石油、ダイヤモンド、ウランのように、アフリカや中東で資源を奪い合う為に、大国から武器が大量に供給され内戦を生んでいる。

放置すれば必ず破局が来ます、甚大な被害を伴う危機が。

将来に備えた危機対応が不可欠です。


次回に続きます。




Wednesday, April 15, 2020

世界が崩壊しない前に 17: コロナは我々日本の弱点を教えてくれた 2







*1


今回は、日米首脳に共通する問題を取り上げます。


* 「武漢ウイルス」発言 *

両首脳の他国を毛嫌いする態度が、コロナ危機で失策を招き、国民は大きな災厄を被ることになった。

日本は、マスクの8割をほとんど中国から輸入している。
コロナ危機で中国はマスクを増産し、ここ1ヵ月で38億枚を世界に輸出した。
政府は増産と言いながら、「中国産は使わない」と言う閣僚の発言に忖度した担当官は3月に中国からの追加輸入を断念していた。


米国の疾病対策センター所長は「トランプ政権のメッセージは『中国に協力するな。彼らは敵だ』ということだ」と語っていた。
これで両国間の防疫協力関係は完全に切れてしまった。
米国は中国のコロナの詳細情報を手に入れることが出来ず、感染症対策の初動の遅れに輪をかけることになった。

必需品から医療情報まで、グローバル化社会では一時の断絶が致命傷になる。
将来、中国でほとんど産出されているレアアースの報いは桁違いになる。


* もう一つの厄介な性癖 *

このタイプの首脳は、敵を峻別する傾向にあるので、直ちに国境閉鎖やクルーズ船寄港拒否などで解決を図ろうとする。
これがすべて悪いとは言えないが、問題はその後の対応がお粗末になる事です。

たとえ閉鎖を実施しても、侵入を防げず、感染者は国内に広がって行きます。
米国は閉鎖を素早く行ったが、初動で遅れ、感染爆発を招いた。

このタイプの首脳は、科学的な重要性を理解出来ず、目立たない緻密な政策を疎かにするようです。


 

< 2. 米国の二人の大統領の違い >

現在、米国は国連安保理で「武漢ウイルス」を宣言に入れることに拘り、紛糾し宣言が骨抜きになっている。
これが以前の大統領なら、エイズ対策で国連が一致して対策を執ることが出来た。

トランプの下で国際保健分野は冷遇され、CDCの予算も削減されつつある。
エボラ出血熱時に設けられた国家安全保障会議のパンデミック担当チームは18年に解体された。
さらに米中の通商対立が加速し、米国は防疫情報で孤立するようになった。


 
< 3.2015年、ビルゲイツのTEDでの発表 >

ゲイツは今後、戦争よりもパンデミックで大量の死者が発生するかもしれないと警告していた。

今の両国政府は国家安全保障を歪めている。
安全保障は軍備だけでなく、伝染病、資源の枯渇、災害などから国民の健康と安全を守る事も範疇にあるのです。

不安、不穏な社会ではタカ派的な言動を売りにする首脳は非常に人気を得る。
この態度は、大国が他国から利益を奪う時には有効かもしれないが、伝染病のような世界的な危機に際して国民に大きなダメージを与える。
このような日米の首脳は、百害あって一利なしと言える。

重要な事は、国民が人気だけでトップを選ぶ愚を避けることです。


次回の続きます。



Tuesday, April 14, 2020

世界が崩壊しない前に 16: コロナは我々日本の弱点を教えてくれた 1





*1


数回に分けて、コロナ危機への政府の対応を採り上げて、問題点を明らかにします。
そして、来るべき世界的な危機を回避するヒントを探ります。

「全国の医師・看護師・病院、そしてコロナ危機に対応しておられ方々に感謝と敬意を表します」


 

< 2.自民党コロナ対策本部のメンバー >


* 国が布マスク2枚を国民に配布する件 *

無いよりは良いとの意見もあるが、布製なら各自が洗濯と手作りで、不織布なら蒸気消毒(蒸し器)で、難なく解決できる。
まして布マスクは不織布マスクより感染防止能力が低い。

マスク調達を担当した官僚が世間の悪評に耐えらえず、
「医療用マスクの枯渇を防ぐ最良の手段なのに、広報が悪くて国民に理解してもらえない」との嘆きを発信した。

私が驚くのは、2ヵ月半の期間と466億円をかけて、これしか出来ずに平然と他人のせいにしていることです。
(政府は1月28日にマスク増産に動き、2月12日に菅官房長官が来週以降、不足は緩和されると発言した。そして首相が4月1日に「マスク2枚配布」を表明し、4月12日以降順次届けるらしい。)

現場を知る者なら、不織布マスク製造機を35台発注し、1か月後には月産3億枚の生産を開始していただろう。
(製造機は日本製で、設計図もあるので制作費は総額30億円ほど、納期1ヵ月で可能だろう。日本でもマスクと不織布を製造しているから、空き工場を使い生産出来るだろう。)

実際に、既に台湾はマスクを7倍の月産3億枚に増産し、孫正義氏は日本の為に中国に月産3億枚を発注し、アイリスオーヤマは国内増産用の設備を発注している。

マスク配布にどんな意図があるか知らないが、この件は政府や官僚に、「最も必要な事を適切に施す能力が無い」ことを示している。
恐らくは、内閣に危機が無いか、政策立案者ら(官僚や大臣)に広い領域亘る専門家が揃っていないことの表れだろう(現場を知らない)。

残念ながら日本の中枢を占める官僚は法科出が占め、最近は忖度や誤魔化しの能力だけが目立ち、国民目線の欠落が酷い。

さらに加えて自民党コロナ対策本部の議員には、テレビやツイッターでウヨに人気があり、安倍人気を盛り上げた功績で参加した人物が目立つ。

当然、主要なポストに専門性など期待できない。
これでは今後繰り返し訪れる世界的な危機に対処できないだろう。



次回に続きます。

Wednesday, April 8, 2020

世界が崩壊しない前に 14: 18歳少女の戦い 1





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今回は、地球温暖化を強烈に訴えるグレタさんを紹介します。


 
*2


彼女は2018年末の「国連COP24」で訴えた。

「私は希望を語りません。
 何にもしないこのままではだめ!
 世界のシステムを変えなければならない。」

これに対してトランプやプーチンら首脳は、彼女の異常さを指摘し、操られていると嘲笑る。
日本にも同様の発言をする人はいる。


グレタさんについて

彼女は環境問題に関心を持つと自分で勉強を始め、やがてSNSで温暖化懐疑派に討論を挑むようになった。
感化された両親は、彼女に温暖化の現地調査や気候学者との対話の機会を与えた。

そして満を持して彼女はストックホルムの国会議事堂前で、一人でストライキを始めた。
彼女は幼少期より自閉症、強迫神経症があり、両親はストを始めるまで発作の再発を恐れていた。

彼女には始めるにあたり戦略があった。
先ず、SNSで実況中継を発信し続けた。
さらに緊張に耐えながら多くのメディアによるインタビューに答えた。

これらにより彼女の期待以上に、ストは世界に急速に知られ、彼女のメッセージの真意が世界に伝わった。
9月には161ヵ国で400万人が参加した地球温暖化ストップのストライキが行われた。
その後、彼女は数々の世界的な温暖化対策会議に引っ張り出されるようになった。

彼女の姿勢を示すエピソードがある。

ストライキ中に、ある男がベジタリアン用のバーガーを差し入れた。
(肉牛の飼育には多くの炭酸ガス排出が伴うので)
スト仲間は食べたが彼女は食べなかった。
彼女は、「あなたが差し入れを望むなら、次回から別の店のものを提供して下さい」と提案し、彼は二度と来なかった。
彼は便乗して自社製品を宣伝しようとしていた。


元々、北欧では小学校から環境問題を学習させ、中学校から政治の学習だけでなく政策についても討議させている。
国民のほとんどはボランティア活動を通じて、地域社会と密接に繋がり、政治意識が高い。

また北欧各国は「持続可能な社会」の実践で先行しているが、市民レベルでも取り組まれている。

つまり、スウェーデン、北欧から彼女のような警鐘を鳴らす人物が出ることは当然なのです。
おそらく日本からは望めないでしょうが。


次回に続きます。

Wednesday, April 1, 2020

世界が崩壊しない前に 9: コロナ危機対応で見えて来るもの 1






前回、急所を掴んでこそ危機を察知出来ることを見ました。
これから2回にわけて、全体を見ない狭量さが危機を招く例を見ます。


お粗末なコロナウイルスへの対応


 
< 2.フォックスニュースの虚言「コロナは嘘だ!」の検証ビデオ >


当初、米国ではトランプ大統領と保守系フォックスニュースが「コロナは問題無い」とか「民主党のデマだ」と盛んに言い立てました。
この間、米政府の検査体制は出遅れ、多くの人は危機感を持たず、感染拡大を引き起こした。

当初、日本政府は感染者がいる寄港予定のクルーズ船を寄港させなかった。
結局、船内で感染爆発が起きる状態のまま引き受けた。
この時に、船からの感染者隔離や国内対策に本腰を入れるべきだった。
政府部内の「中国の細菌兵器」「武漢ウイルス」の発言は、米国と根は同じだ。

彼らには稚拙な逃避行動-危機の矮小化と先送り、が見られる。
一番困るのは、両国の首脳が共に非科学的・非論理的だと言うことです。
二人は不安を煽り、目立つパフォーマンスで人気を得ていることでも共通している。

そうは言っても、日本のコロナの感染状況は、今まで世界に類を見ない低水準で推移している。
これは日本政府の感染対応が適切だからだと、多くの人は感じている。
これが正しいなら、今後、感染爆発は行らないだろう。

私は素人だが、いくつかのデーターから今後、さらなる危機が起こると予想している。
要約すれば日本の現状は、ある条件がたまたま幸いし感染のスピードが遅かったが、対策の不備から感染者が知らぬ間に増大しているらしい。


 
< 3.著しく低い日本の感染状況 >

この横這いに近い状態は、世界に類を見ない日本人の衛生意識の高さ、加えて閉ざされた島国、マスコミの危機報道が幸いしたと信じたい。
しかし別の方法で比べると違う状況が見えて来る。


 
< 4. 縦軸を対数目盛りにした >
高橋洋一(嘉悦大)、@YoichiTakahashi

破線の日本、台湾、シンガポールが何故か同じ感染速度が遅い傾向を示している。
最も低い台湾は、確かに素早く画期的な対策を講じたが、実は中国からの旅行客が去年9月以降半減していたことも幸いしている。
(中国は、台湾が香港デモを支援したとして報復措置を取った)

何か共通の要因があるはずだ。
しかし韓国の途中からの急激な拡大も気になる。


 
< 5. 感染者数と致死率、3月26日のデーター >

これを見ると、三角印の国(結核予防のBCG接種が行われている国)は武漢を除いて、すべてで低い。
BCG接種は世界157ヶ国で実施されているが、欧米の15ヶ国だけが停止か限定しており、今回、酷い感染状況になっている。
これが日本、台湾、シンガポールが同じ傾向になった理由の一つだろう。
しかし、同じBCG接種をしていながら韓国も武漢も、突如急拡大した。

つまり日本は、まだ安心してはいけない。
気付かない不安要因があるはずだ。


次回に続きます。





Wednesday, March 25, 2020

世界が崩壊しない前に 8: 何が重要なのか 1





これまで危機への警鐘と対応について見て来ました。
どうすれば警鐘を生かし危機の防止に取り組めるのだろうか?


1. 警鐘が無視される主な4つの理由。

科学的な理解が困難、未来の事は後回しにする、強力な世論誘導がある、分裂している社会では論理が通じない。
加えて転換の難しが加わる。


2. 危機回避の正しい選択が困難

日本では原発からクリーンエネルギーへの転換が進まないが、最大の理由は既得権益を得ている人々が、今の社会経済の体制維持に巨大な力を使うからです。

このように問題(危険性、腐敗)、非効率(高負担、経済損失)が露見しても、一度、定着した事を捨て切れず転換できない社会・経済現象をロックイン現象と言います。
これは個人の消費行動から国策まで及び、特に経済的な規模が大きいほど抵抗が大きく、世論操作まで行われて転換が妨げられる。

一度、軍拡競争が始まるとほぼ止めることが出来ず、別の選択肢はなくなる。
双方の疑心暗鬼は深まり続け、膨張した軍需産業と軍隊は縮小を受け入れない。

1930年代、ドイツと日本は不満と恐怖を解消する為に、民主主義を捨て軍事独裁国家への道を選んだ。
国民はヒトラーに熱狂し、予想だにしなかった末路に至った。

このようなことが繰り返されたら、これからの危機に対応できず、人類の未来はないように思える。
しかし光明はある。

1980年代初め、フロンガスが南極上空のオゾン層を破壊し、放置すると紫外線が増大し人体を害すると分かった。
しかし80年代末には世界が協力してフロンガスの使用を禁止した。

これは地球システムの破壊を世界が一致して防止した最初の成功例でした(汚染物質の禁止は以前からあったが)。

なぜこうも素早く解決出来たのか?
フロンガス製造中止で影響を受ける産業と国が限られていたこと、代替えフロンが開発されたこと(但し地球温暖化の問題は残る)。

そうは言っても、世界が科学者の発見を受けて、経済負担が有りながらも、世界が一致協力出来たことは快挙に違いない。

一人の訴えが、社会を救った事例は他にもある。
南アフリカのマンデラは人種差別で、インドのガンジーは帝国支配の終りで、英国の経済学者ケインズは不況の克服で貢献した。



次回に続きます。




Thursday, March 19, 2020

世界が崩壊しない前に 7: 罠に嵌った人々







20世紀最大の罠と言えば、ファシズムへの暴走でしょうか。
人々は危機を脱しようとして、より悲惨な危機に陥った。
日本も同じですが、ドイツを見ます。


特報!!
 
< 2.いつか来た道 >


当時の状況
・ 巨額の戦後賠償と世界恐慌による大量の失業
・ 革命後の社会民主主義政権は安定せず、軍部の復権が進んでいた
・ 共産革命とソ連への恐怖が高まっていた

一人の天才アジテーター、ヒトラーが出現した。
彼は、かつてのドイツ帝国領土を取り戻し、共産主義者とユダヤ人を排除すべきと訴えた。
彼は清廉な人物と見なされ、若者に絶大な人気があった。
彼が行う政策、国民運動や大規模公共事業は功を奏し経済が好転した。
これでナチ党は国民の支持を得て国会の議席を伸ばしていった。

当時、政治を掌握していたのは元軍人の大統領でした。
彼は自ら任命した首相に政治を任せ、まだヒトラーを信用していなかった。
だがこの非力な首相は、人気のあるヒトラーの抱き込みを図った。

大統領が高齢で弱気になったと見るや、ヒトラーは一気に政権掌握に動いた。
彼は部下に国会議事堂を放火させ、それを共産主義者のせいにし、彼らの議員職を剥奪します(緊急事態条項と同じ)。
そしてナチスは過半数を占める第一党となり、ヒトラー総裁を決議させた。

この後、第二次世界大戦へと一気に突き進むことになる。
やがてユダヤ人追放が始まり、彼らの莫大な資産は国民に分配され、虐待や虐殺への批判は起きなかった。
同様の手口は中世スペインでもあった。

この間、ヒトラーを支えた巨悪があった。
ドイツのメディア王は彼を応援した(フォックスニュースや読売と類似)。
ドイツの鉄鋼王(兵器王)も彼を支えた。
英米系の大企業は、戦後までこの鉄鋼王に巨額資金を提供し利益を得ていた。注1.


ポイント

・ 国民は騙されたと言うよりヒトラーに狂信し続けた。
・ 安直な危機打開策が、最悪の被害を招いた。
・ 一部の国民は命を賭して抵抗したが制圧され、暴走を止めることは出来なかった。



次回に続きます。


注1. 「オリバー・ストーンの『アメリカ史』講義」p391より。




Saturday, March 14, 2020

世界が崩壊しない前に 6: 罠を知る





*1

前回、私達が原発に呪縛されていることを見ました。
これと似た国を越える罠もある。


米ソ軍拡競争を見ます。

突然、現れたソ連のゴルバチョフが、米国に核戦力削減を提案し、核軍縮条約締結が成った。
しかし、この後が続きませんでした。
それはなぜか?

当時、米国は自画自賛していた。
「ソ連は我々の軍拡競争に負けて経済的に弱ったのだ。
だから宇宙にまで軍拡すれば、遂にソ連はねをあげる。
平和になるぞ!」
人々は、軍拡競争こそが軍拡を終わらせ、危機は回避されると信じた。

しかし、30年後の今、間違いだと分かるはずです。


 

何が起きていたのか?

当時の米国大統領はレーガン、次いで父ブッシュでした。
ホワイトハウスはまったくソ連を信用せず、相変わらず軍備増強と軍事支配拡大で押し切ろうとした。

一方、ゴルバチョフは政治刷新の手腕を認められて、トップに立つことは出来たが、立場は危ういものでした。
彼が前例のない大幅な軍事的妥協(アフガニスタン撤退も)を提案すると、当然、軍部や保守派からの猛反発に晒された。

米国は、これ幸いと不平等な兵削減をソ連に迫り、また南米への軍事介入を進め、ソ連の制止も聞かず湾岸戦争に突入します。

湾岸戦争は、子ブッシュもやった人気取りの可能性が高い。
米国の駐イラク大使は、クウェートとイラクで緊張が高まっていた時、フセインに告げていた。
「ブッシュ大統領は、イラクの友好が優先であり、友人でないクウェートとの国境紛争には何の意見も持っていない」と。注1.
この戦争で大統領の人気は鰻登りとなった。

米国の中東やアジアへの軍事介入の経緯と、世界断トツトップの米国の軍需産業の伸張を知れば、頷けるはすです。


もし1980年代末、ホワイトハウスがゴルバチョフを信じ協力していれば、彼はクーデターで辞任することもなく、戦争は減っていたかもしれない。

結局、国民は真実から遠ざけられ、政府に振り回されている。


次回に続きます。


注1.「オリバー・ストーンの『アメリカ史』講義」p397より。


Tuesday, March 3, 2020

世界が崩壊しない前に 4: 人々はなぜ警鐘を無視するのか?






時には命を削ってまでも、警鐘を鳴らす人がいた。
しかし、ほとんど聞き入れられなかった。


なぜ人々は無視するのか?

前述の例、原発事故、資源枯渇、人口増、環境破壊、核戦争勃発、米国の監視体制、地球温暖化の危機から見えるもの。

1. 科学的な理解無しで危機を理解出来ない

原子炉の構造や安全設計の概念を理解していないと、推進側の権威者が唱える原発の無謬性を容易に信じてしまう。
多くの人は、その安全性の根拠が如何に抜けだらけかを見破ることが出来ない。

地球温暖化の危機を知るには、気候現象や地球史を知らないと、これまた煙に巻かれる。

中途半端な知識や感情論では無理。


2. 人は数十年先に訪れる危機に対して及び腰になる

おそらく数か月後に起こるとするなら対処するでしょう。
しかし10年、50年先となると、ましてやコストと手間がかかるものなら無視するでしょう。
さらに対策の費用対効果を見積り、優先順位を付けるとなると絶望的です。


3. 危機とその因果関係を否定し、世論を誘導する集団がいる

この力は非常に大きく、かつ国民が気付かないよう行われる。

現在、大きな危機の元凶はすべて人間だが、限られた人間によるものが多い。
彼らは防止策や規制により、利益の減少や賠償による損失を避けようとする。

例えば、現在、自由放任経済の恩恵を享受している人々は、かつてのルーズベルト大統領のニューディール政策(需要喚起、賃金上昇政策)を貶めて続けている。


4.人は論理よりも帰属集団の意向に沿って判断し易い

これは分裂を極める社会ほど顕著です。
例えば、人は組する集団が原発推進、敵対する集団が原発反対なら、迷うことなく原発に賛成する。
現在、都合の良い情報(フェイク)は幾らでも集まるので、事実は二の次となる。

今や未開地の部族間抗争に逆戻りした感がある。
残念ながら日本人は稀に見る高い帰属意識を持っているので陥りやすい。


次回に続きます。