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Sunday, October 4, 2026

要約  迫る多難な危機  

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

まえがき

 現在、深刻な危機が我々に迫っています。さらに大国の横暴が目に余るようになり、より危険度が増しています。今、我々と米国民が立ち上がらなければ世界は手遅れになります。

Make the world and people happy again!

 

 

 

世界は危機に晒されている   第一章の要約

 


 

 

 10を越える世界的な危機が我々に迫っている。戦争・紛争の増加、独裁国家の増加、経済格差の拡大、再来する巨大金融危機、投機マネーの暗躍、深刻さを増す地球温暖化、ITに続くAI革命の脅威、激しくなる国内の分断(右翼ポピュリズム)、分裂を始めた世界の協力体制等です。

 

しかし喫緊の課題は米国の独裁化で、これが完成してしまうと米国だけでなく世界が破滅する。

 

 

 

人類は危機を乗り越えて来た    第二章の要約

 

 今の米国を見ると、手の施しようがないようにも思えるが、人類は、様々な危機を幾度も乗り越えて来た。戦争の終結に向けて平和条約を締結した幾多の国々、独裁者や大国の侵略から独立を非暴力で勝ち取った国民、拡大した貧富の差の解消を目指した改革者、繰り返す金融危機への苦渋の対応、公害や環境破壊への多国間の協力体制、産業革命で対立を乗り越え民主社会を築き続けた労働者、社会の分断を未然に防いだ優れた指導者、世界の平和と幸福に貢献し続ける世界機関創立などがその例です。

 

 我々人類は、数千年の間、危機、苦難、社会や国同士の対立を乗り越え、より平和と幸福を勝ち取って来た。英知を持って行動すれば必ず道は開ける。

 

 

 

 

我々が直面している危機   第三章の要約

 

しかし、21世紀以降、世界は悪化の度合を急激に深めている。

 


 

 

 喫緊の課題を採り上げます。先ずはプーチンとウクライナ侵攻です。これは独裁者の常であり、放置すればヒトラーによる大戦の二の舞いになる。注意が必要なのはトランプがプーチンと繋がっている可能性が高い事です(事実を積み重ねれば見える)。

 

多くの国で、勢いを増す投機マネーの横暴さと税金逃れが格差拡大とインフレを亢進させ、福祉削減が追い打ちをかけるように国民を益々苦しめている。

 

 地球温暖化は、既に取返しのつかない状況に陥りつつある。長期戦になるが今から防止策の遅れを取り戻す必要がある。

 

いま始まったAI革命は、適切に制御出来れば、人類に大きく貢献するだろう。しかし、人知を超えたAIは人類最悪の脅威になる可能性が高く、既にこの危惧は現実になり始めた。放置すれば手に負えなくなる。

 


 

 悪いことに、世界から最も頼りにされていた米国でアメリカンドリームが潰え、貧困と絶望死が増えた結果、分断の嵐が吹き荒れ、遂にはトランプによる独裁が現実化して来た。この米国の悲劇をもたらした真因は、多くの先進国の経済にも深く根付き、各国で右翼ポピュリズムが吹き荒れ、世界は分裂を深めている。

 

 このまま行けば、米国は人類史に大きな汚点を残すか、最悪、世界と共に滅ぶかもしれない。

 

 

 

 

緊急に対応しなければならない危機   第四章の要約

 


 

 

「米国民は、なぜこんな悲惨な道を歩み続けたのか?」の謎を解くことで、そこから脱出する方策が見える。

 

ポイントは三つある。

 大半の国民に取って希望が無くなり、生活が苦しくなったのは、80年代に始まる新自由主義(共和党レーガン大統領が始めた)にあります。これは規制のない自由市場、労働者(福祉政策低減も)を見捨てる、累進課税の撤廃、金融業界重視等が、長い年月を掛けて富裕層・大企業を繁栄させ肥大化させた。これがインフレを亢進させ、政策が富裕層・大企業にコントロールされるようになり、結果的に大半の国民の賃金が上がらなくなった。この悪弊は、日欧等の先進国にも共通しており、いずれ大問題になる。

 

 グローバル化やIT革命も災いしているが、この期間でさえ就業者数は着実に伸びていた。問題は労働者が適切に高賃金労働へと転職出来なかったからです。これについて北欧各国はうまく対応している。米国共和党は何ら手を打たなかった。民主党は高度知識社会対応で高学歴化を促したが、効果は限定的でした。移民は、低技能職で多少低賃金化を招いたが、米国経済や高齢化に貢献しているのは確実です。一部の治安悪化は、差別による経済格差を放置していることの方が影響している。

 

野放しの自由は腐敗と独占を生み、国民にとって取返しの付かない悲惨な状況を招いた。

 

 

 二つ目は、これらの事実を隠すために様々な目くらましが行われた来た事にある。共和党と大企業(FOX等も)が長年流して来た「オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)」の洪水があり、トランプが完成させた。既得権益層(笑い)が、単純な陰謀論「ディープステート(闇の政府)」をでっちあげて国民を洗脳したが、それを信じてしまうほど社会は分断され、右翼ポピュリズムが勢力を持つようになっていた。トランプ現象は当然の帰結でした。このオルタナティブ・ファクトの歴史は、ニューディール政策を貶める事に始まり、フロンガスやタバコの害を無害と偽り、気候変動は起きていないと言い募る事に象徴されている。さらに、21世紀以降、インターネットとSNSが加わり、フェイクや怒りに煽情されやすくなってしまい、選挙が操られるようになった。加えて最高裁が保守派に牛耳られた事で、金権選挙がまかり通るようになり、益々既得権益層に有利になってしまった。

 

こうして米国民は真実が見えなくなってしまい、操られるようになった。

 

 

 三つ目は、キリスト教原理主義(復古・懐古主義)、これは米国特有です。ヨーロッパのキリスト教は世俗化が進んでいるのですが、米国のこの教派は、西部開拓の名残で、信仰は回心(理性を失うほどの情熱)が重視されており、幾度も熱情に駆られ米国社会を揺り動かして来た。これに火が着いたのは、大戦後の赤狩り(共産主義)に象徴されるように、非白人移民の大量流入とリベラルな人権運動への危機感からでした。彼らの異常なまでの恐怖感と敵意は、多くの海外侵攻を後押しして来ました。また米国には裕福なユダヤ人が多い事から、イスラエル支援に繋がるハルマゲドン信仰も勢いを得たのでしょう。

 

 共和党は、この教派を選挙に取り込んだ事で勢力を拡大し、かつ彼らの政策が科学的・論理的な帰結である必要がなくなり、自由度が増した。実は、この手口は、多くの疲弊した国で行われ、権力奪還を目指す既得権益層が、原理主義的な教派を取り込むことで成功している. サウジアラビアのイスラム原理主義、プーチンのロシア正教、イスラエル、イランやインドでも見られます。この同盟は権力者と教派には利益が多いのですが、間違いなく国民にとっては悲劇になります。この宗教問題は、今後も深刻な問題を起こすことになるでしょう。

 

宗教は、地域と人々に安らぎをもたらすが、往々にして人々を盲目にする。

 

 

 

放置すれば最大の危機、どう対峙すべきか   第4と5章の要約

 

 米国民が、この中間選挙で政治を正常に戻すことが出来なければ、今後、非暴力で二度と再起は出来ないでしょう。是非とも、米国の良心を世界に示していただきたい。これに成功しなければ、プーチン、トランプ、イスラエル、中国、北朝鮮が、世界を戦火のるつぼに投じる可能性が現実味を帯びる。さらに幾多の重大危機を止める事が不可能になってしまう。

 

 どうか良識ある米国民は、科学と真実を尊重し、不道徳極まりない人物を廃して、かつて希望があり成功した自由民主主義社会を取り戻してください。米国の若い人は、現在、苦しい状況が続いており、世界の為とか独裁阻止よりも、日々の糧の方が先かもしれないが、トランプでは、絶対に悪化するだけです。理由は明らかです。彼の大言壮語・虚言、非科学的・非論理的、政策を理解しない、エゴ・独善的、どれをとっても、これからの困難な時代に彼が不適任であることは明白です。

 

 ヒトラーは演説で国民を魅了したが、所詮、一介の画生・兵卒であり、政策は素人でした。初期には周辺に逸材がいて、上手くやれたのですが、後に彼らはヒトラーによって粛清された。トランプのビジネスキャリヤは、倒産の連続で、スラップ訴訟多用で、何とかやってこれたところがある。信じるに値しない人物は避けるべきです。

 


 

 

最後に

 米国が立ち直ることは容易ではないが、世界と歴史を見れば、けっして不可能ではない。残念ながら日本の中枢を担う官僚が内向きなので、このような危機に即して役に立たない。申し訳ありません。しかし社会制度は北欧の福祉国家が参考になるので希望はあります。

 

 

 

ながらく拝読して頂きありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

Friday, October 2, 2026

短縮版 迫る多難な危機  4-3

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-3 手強い相手

   破綻は不意に必ず訪れる

   歴史は繰り返す

   テクノ・リバタリアン(テクノファシズム)

   様々な経済理論

 

 


第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化


 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。

 

 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

4-3 手強い相手

 規制や監視を単純に強めるだけで、経済にブレーキを掛けず、国民の所得を上げ、暮らしを良くすることが出来るのかと不安に思うかもしれない。しかし、現状しか道がないと思うのは、詐欺師の思うツボです。異なる味方を紹介します。

 

 破綻は必ず不意に訪れる

 

 私は1970年代から、幾多のビジネス書、特に半年から数年先の経済を予測してきた本を読んで来ましたが、間違いなく予想を外している方が目につく、当たることはほぼない。著者の多くは投機家ではなく、当時著名な学者でした。例えば、昭和バブルの時代、5年かけて株価は4倍になり、景気は絶好調でした。しかし1990年にバブルが崩壊し、株価は半年ほどで半減し、当然、地価も景気も急降下でした。巨大企業は残れたが、暴利を貪ろうとした企業と人々は、夜逃げしたり、消えていった。貴重な資産を無くした人が周囲に何人もいた。暴落前後の土地と株式の日本全体の評価損はおよそ1400兆円、GDP3年分が吹っ飛んだのです。被害は甚大でした。これを当時、日本の識者は予測出来たと思いますか? 私は当時、関心を持って世情を見ていました。一部の人は投機に浮かれ、多くの人は投機に乗り遅れたことを後悔し、この景気は危険だと思っている人はほぼいなかった。一人のエコノミスト(経済企画庁内)は崩壊の1年前に、資産インフレへの危険性を著書で指摘していましたが、「1年後に崩壊する」という具体的な期日や大暴落には触れていませんでした。

 

 米国では、2008年のリーマンショック時、金融の神様と呼ばれたグリーンスパン議長でさえ、この崩壊を予見できなかった。彼は、後に米下院の公聴会で「市場の自己修正機能を過信し、自由市場モデルの欠陥を見抜けなかった」と発言している。一方で、数人のエコノミストは1~3年前ほどから異常に気づいていました。ただし暴落の期日の予想までは無理だったようです。これらのことから幾つかの教訓が得られます。トランプが株価を非常に気にしているように、これは株価が大統領支持に直結しているからです。国民の年金や資産の多くは株で運用されているからです。株式は最大の投機対象であり、投機家は借金で投資を行い、ついに国内の民間債務総額がある水準を越えると、過去に幾度も金融危機を起こしています。つまり、現状では金融危機は繰り返す運命にあるのです。バブル崩壊の詳細メカニズムは不明で、的確に予測出来ません。これまで金融危機は4~8年間隔で繰り返して来たのですが、今回は珍しく、リーマンショック以降18年以上も起きていないのです。単純に、マグマが大量に蓄積されていると私は恐れています。現在の経済状況は、絶好調と言うより、綱渡りに近いと考えられます。

 

 トランプの手腕は素晴らしく、期待できるのでしょうか。彼のビジネスキャリヤは汚点の連続です。彼の不動産事業は倒産の繰り返し、法の範囲ですが負債をかぶらず、また違法ギリギリのあくどい手段で入居者の追い出し、また税金をほとんど払っていない(開示を拒否している)。彼は悪徳弁護士なしで事業を継続することは無理だった。プーチンは、トランプが苦境の時、うま味のある案件を提示し助け続けている。トランプの人気はテレビ番組「アプレンティス」で造られたものでした。トランプは科学的知見がほとんど無いので、これからの産業革命を指揮するのは不可能だろう。それはコロナ蔓延時のあたふたぶりで証明済みです。

 

 

 歴史は繰り返す

 

 共和党やトランプの造り出した経済は、巨大企業と富裕層が巣くってしまった経済、また単に衰退しつつある経済になったと言う方が正しいかもしれない。少なくとも、この半世紀の間に大半の国民にとって良い経済ではなくなった。人類史上、大半の国民が経済も含めて上昇気流に乗れた時代があった。英米において19世紀後半から20世紀初頭だった。これは英国の産業革命の成熟期であり、遅れて米国の大量生産方式が進展した時代でした。労働者が始めて政府や権力に対峙して、交渉出来た時代だった。人類史上における画期だった。

 

 ところが反動が起きた。第二次世界大戦後、主に二つの事が欧米を揺るがすことになる。一つは、特に英国でしたが、20世紀初頭は福祉国家に近く、国有企業による財政赤字増大と労働組合による賃金上昇とストに困っていた。もう一つは、米国が、4回の中東戦争でイスラエルを支援したことにより、アラブ諸国が米国を封じ込める為に、OPEC(石油輸出機構)を創設し、原油価格を数倍に上げた。後に30倍を越えることになるが、ずーと後のことです。これにより世界は急激なインフレに見舞われることになった。また米国の保守層が、リベラル的な労働者・黒人・女性等の人権擁護により、社会・文化の急激な変化を恐れたようです。そこで保守層は、レーガンを前面に押し出し、インフレ対策として、金融操作(マネタリズム)を進める一方、一気に労働組合潰しを始めた。この時、英国と日本も同調し、国有企業と労働組合潰しを推し進めた。こうして、20世紀前半に一世風靡した労働運動と累進課税は終わりを告げたのです。つまり、かつての封建時代の惨状に状況に戻ってしまったのです。

 

 こうして見てくると、現在の米国の資本主義だけが、資本資本主義でないことが理解していただけると思います。実は、別に模範例があるのです。それは北欧諸国です。北欧は資本主義を基盤としています。当然ですが、自由市場、私有財産、海外貿易、労働組合(加入率7割)もあります。それに加え、手厚い再分配(医療費原則無料・学費無料・年金完備)がなされており、社会民主主義と呼ばれています。ただ税金は最も高い部類に属します。しかし日本と比べて、税金と公的な掛け金の合計の所得に対する比は、少し多いぐらいです。北欧は、この体制で、幸福度と一人当たりGDPのランキングで200ヵ国中、1位~6位ぐらいに入ることが多い。他の資本主義国より良いシステム、労使間の協調、転職の支援、労働者擁護、男女平等、小学校から環境・政治意識の高揚等があります。それでも、常時、システムアップを図っており、腐敗の無いのが一番です。

 

 つまり、今の米国の資本主義が最良では無く、様々な形があり、かつては別の形でうまく行っていたのです。

 

 

 

 

 テクノ・リバタリアン(テクノファシズム)


  ここ10年ほどで、国の舵取りに大きな波乱要因が加わった。それはテクノ・リバタリアンの出現です。イーロン・マスクやピーター・ティールなどがその代表で、「高度な数学的・論理的知能と巨額の富を持ち、最先端テクノロジーによって国家の規制を排した自由な社会を実現しようとする思想・人物」のことです。庶民が彼らの思想が危なっかしいからと遠ざけようとしても、政治は彼らの資金力と発信力を利用することになる、トランプが露骨に利用して来たように。大統領就任式の時に、名だたるGAFAの代表者たちが寄り添っていたのが、今の時代を象徴していた。トランプと一度決別したイーロン・マスクは、2026年の中間選挙で、また共和党支援に1億ドル以上を投じるとしている。残念ながら、彼の知名度と資金は、その思想の是非に関わらず大量の票を獲得するでしょう。そして、テクノ・リバタリアンの思い描く政策が実現したら、米国はどうなるのか? 懸念される点を整理します。

 

 先ず、彼らが目指す政治思想リバタリアニズム(自由至上主義)の問題です。これまで、米国の惨状は、自由放任の金融投機、寡占により機能しない自由市場、富裕層による政治支配、その結果として貧富の拡大が続いていると説明して来ました。ところが、彼らは公権力や国家の介入を極限まで排除し、個人の自由と自己責任の最大化を目指している。具体的には、自由な理想社会を造る為に、選ばれた天才だけが政治を担い、愚民は政治に口出さなくても良いと言うことになる。イーロン・マスクの現実の経営手腕、Twitter買収時の人権・倫理関連部門の全員解雇から、類推できる。

 リバタリアンにも様々な人物がいて、極端なケースでは、政府は不要でインターネット上で国民は平等に関り、暗号通貨で経済を回すとし、空想に近いものもある。言い換えると、天才と巨大資金による独裁から無政府主義まであり、共通しているのは、19世紀後半から20世紀前半、欧米が目指して来た自由民主主義とは相容れないもので、非常に危険です。



 歴史を振り返ると、同様の横暴な人物に振り回された事例がある。時代を牽引した二人の発明家兼経営者を例に挙げます。18世紀半ば、英国の産業革命に火をつけた一人アークライトは、水力紡績機の特許を取得し、これが近代的な工場制機械工業の先駆けとなった。彼が建てた工場では、何万人もの労働者が囲いに入れられ、厳しく管理された。労働者には時計の針のように規則正しい行動と単調な作業が強要され、人間の本能に逆らうような過酷な時間管理と労務管理の原型が作られたとされています。このような経営者の横暴が当時蔓延っていたからこそ労働運動が起きたのです。

 米国でも幾つか類似の事例があり、有名なのは自動車の大量生産システムを確立したフォードです。彼が労働組合を敵視し、組合を最後まで認めなかったことは有名です。私設警察・スパイ組織を作り、工場内に多数のスパイを潜入させ、労働者が組合の噂をしていないか四六時中監視させました。労働者同士が仕事中に私語を交わすことすら禁止され、違反者は即座に解雇されました。工場で、全米自動車労組が合法的なビラ配りを行おうとすると、雇われたギャングらが襲撃し激しい暴行を加えた。フォードは自分が思う労働者像に叶う場合は高給を出し、気に食わなければ即解雇しました。現代ではアマゾンも労働者に対して同様な振る舞いを見せていました。

 

 ここで成功している起業家の能力・性格について注意すべきことがあります。イーロン・マスクやピーター・ティールは素晴らしい能力を持っているが、自閉症傾向(アスペルガー症候群)が有り、シリコンバレーの起業家に多い。この傾向は、他者との意思疎通や感情の理解に困難をもたらす。従って、上述の二人の経営者にも言えるのですが、彼らは労働者、市民、弱者への共感に乏しい。ある心理学者は、経営者には社会性パーソナリティ障害が多く見られ、他者の権利を軽視し社会規範を守らない傾向があると言う。我々周辺にもブラック企業、ワンマン会社はあり、結構、成長しているケースがあります。つまり、共感力を持たないテクノ・リバタリアンは事業に専念してもらい、政治への直接参加は避けるべきなのです。

 

  

 様々な経済理論

 

 この半世紀、様々な奇抜な経済理論が生まれては消えていくのを見てきました。国の舵取りを大きく変える時に、学者に経済理論を並び立てられ、そちらは危険だ、こちらだと言われると返す言葉がない。しかし、実はほとんど失敗するか役立たずだった。幾つかの理論を簡単に振り返ります。

 

 最近では、現代貨幣理論があります。これは「自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても破綻(デフォルト)しない」と言う、累積財政赤字トップの日本にとっては夢のような解決策です。数人の議員は、熱心に説き、大勢は無視です。私も惹かれますが、やはり怖い。提唱者は、通貨発行が大量になり、インフレが加速すれば、課税して抑え込めば良いと、唯一の欠点に対して、解決法を提示している。これが信用できない。理屈は簡単だが、政治的には簡単ではない。暗号資産についても同様の不安があります。暗号資産(仮想通貨)で良く言われるのが、ブロックチェーンは完璧なので贋金のような事態は起こらず、マイニング(実質的な通貨発行権)も管理出来ているので、順調に伸びるとされている。しかし、2016年、イーサリアムが約60億円ほど不正流出したのを皮切りに、その後も、様々な攻撃や不正流出が起きている。しかし最重要な事は、人類がこの300年間、国(中央銀行)が貨幣発行と管理で苦しんで来た経緯を考えると、雨後の竹の子のように、暗号資産が参入してくる事態は、とてもじゃないが許容できない。インフレ抑制のために貨幣供給量を減らすとか、失業者を減らす為に供給量を増やすとかの制御を適切に出来るはずがない。現状は、金儲けに目がくらんで、ねずみ講のように、先駆けた者が多くの利益を得られるからであり、今一つは資金洗浄の為に利用したいのでしょう。私には愚かな喧噪にしか映らない。

 

 レーガン政権が当時華々しく喧伝した「ラッファー曲線」と言うのがありました。非常に単純で分かり易いものでした。これは税率を下げれば労働や投資の意欲が高まって経済が活性化し、最終的には税収が逆に増加するという主張でした。私はあまりの単純さゆえに驚いた。しかし、結果としてこの政策は巨額の財政赤字(と貿易赤字)をもたらすことになりました。失敗は、国防費の巨額増、議会に拒否された社会補償費削減、FRBの高金利政策による景気の落ち込みが、大きかったようです。この理論はサプライサイド経済学(供給側の経済学)の一部ですが、この逆がケインズのデマンドサイド経済学(需要サイド経済学)です。実は、この半世紀はこの学派が対立し、レーガン以降、それまでのデマンドサイド経済学に代わってサプライサイド経済学に取って代わられたのです。サプライサイド経済学は、減税や規制緩和により、企業の生産意欲や供給力を高める。「モノを作れば売れる」という考え方がベースにあります。デマンドサイド経済学は、政府支出(財政出動)や減税などで、人々の消費や需要を刺激する。「買いたい欲求(有効需要)が経済を動かす」という考え方がベースにあります。ニューディール政策はデマンドサイド経済学の成功例でした。現状の悲惨さは、サプライサイド経済学によると言えます。

 

 これらの経済政策の失敗事例から学べる教訓は、経済政策や経済のコントロールは難しく、必ず修正が必要だと言うことです。しかも、修正の目的が国民の利益に叶うべきなので、民主主義が不可欠なのです。必ず、常時、民主主義体制が維持されている必要があるのです。独裁は絶対に避けなければなりません。

 

 

 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。