Sunday, March 1, 2020

中国の外縁を一周して 24: 新幹線で西安から蘭州まで




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今回は、前回に続いて新幹線からの車窓風景を紹介します。
この西安から蘭州までは、かつてのシルクロードで、
おおよそ漢民族の支配の限界地でした。
少し西域の雰囲気を味わうことができます。


 
< 2. 新幹線のルート >

下: 赤線が今回の車窓風景の範囲です。
写真はすべて撮影順に並んでおり、線路の北側を撮っています。
写真の左側が進行方向になります。

西安は広い盆地ですが、やがて剥き出しの山々の間を列車は進みます。
幾つもの黄河の支流、渭河(渭水)などが曲がりくねり、深い谷間が行方を遮ります。
列車は幾度もトンネルを抜け、河を渡り、時折、谷間の盆地を通過します。
そして山を越える度に空は澄んでいきます。


 
< 3. 西安駅を出て >

写真は西安の都市部から外れまでです。
高層マンションが林立しています。

下から2番目の写真: 今から20年ほど前まで見られた煉瓦積みの農家は沿線でほぼ見られなくなった。
今は、新しい造りの2か3階建ての家か、高層マンションに替わった。

一番下: 前回も合わせて6時間、車窓から墓を探していたのですが、撮影できたのはこれだけでした。
肉眼では他にも一つか二つ見たのですが。
畑の中央に、白い墓石らしきものがポツリ、ポツリと左右に見えます。
ここでも墓が集約されておらず、一つづつ独立しています。
もしかしたら井戸の設備かもしれませんが。


 
< 4.杨陵南站付近 >

ここもまだ西安を中心とした広大な盆地の一角です。

一番下: 珍しいキリスト教会。
現在、中国ではキリスト教が普及しており、政府が警戒しているとの話を耳にしました。
共産主義国家で宗教が認められていることが不思議ですが。

もう一つ、不思議な光景があります。
それはここから西に進むとブドウ畑が増えてくることでした。

 

< 5. 岐山の辺り >

下から1番と2番: 岐山站前後の風景です。
ここもまだ広大な盆地の中です。

この岐山辺りには歴史的な魅力があります。
一つは、周王朝の発祥の地であり、紀元前7百年前頃まで、周王朝(西周)の中心地でした。
秦の始皇帝の時代は、これより東側、今の西安西の咸阳に首都が造られた。
秦の時代も、盆地北側にある岐山を神聖視していた。

いま一つは、三国志で最後の舞台となる五丈が原もこの辺りです。
諸葛孔明と司馬仲達が戦った所です。
その台地は、おそらく線路の南側にあるので確認できませんでした。


 
< 6. 宝鸡南站 >

この駅に停車したのは13:10です。
ここで盆地と別れ、列車は山岳部の谷間に入って行きます。

ここでも高層建築群の建設中が目立ちます。
今回、特に印象深かったのは、高層マンションの建築は数棟ではなく百棟を越える規模で同時進行していることです。
しかも、いたるところで、奥地でも。

これまで30年ほどの間に、7回ほど中国を旅行したが、益々中国全土の津々浦々まで、開発が及んでいることに驚かされた。

下の写真: 建築工事の様子。
今から10年以上前までは、建物は煉瓦積み、高層建築でも工事現場の足組に竹を使用していたのを見た。
様変わりしている。



 
< 7. 宝鸡南站と天水南站の間 1 >

宝鸡南站を出ると、直ぐ山間に入り、長いトンネルを抜けると、少し視野が広がって来た。
明らかに空の様子が異なる。
今までのどんよりとしたぶ厚い雲ではなく、湧き上がる雲の間に微かに青空が見えるようになった。

それでもこの辺りの平野部は、曲がりくねった渭水の両側に幅1~2kmの幅しかない。
山肌は荒れて、草木で完全に覆われている所はない。
河はどこでも泥流だった。



 
< 8. 宝鸡南站と天水南站の間 2 >

天水南站に近づくと、平野部が少し大きくなり、高層のビル群が増えた。
またブドウ畑も多い。


 
< 9. 天水南站を過ぎて >

天水南站に着いたのは13:57です。
この辺りが、西安と蘭州のほぼ中間地点になります。
益々、周辺の山々は深くなっていきます。
この天水から東南約50kmの所に麦積山石窟(世界遺産)があります。

上から二番目の写真: 山の頂上に寺院らしい建物が見える。
その右側の急斜面には、この地方特有の民家群が段々状に連なっている。


 
< 10. 秦安站辺り >

一番上の写真: はじめて山頂に狼煙台らしいものを見た。
ここは秦安站の手前になります。
この駅には停まりません。

他の三枚の写真: 秦安站を過ぎてから。


 
< 11. 通渭站に至る >

この駅に停車したのは14:28です。
蘭州までは後1時間弱で、これが最後の停車駅です。

上: また狼煙台を見つけた。
唐代まで遡るのだろうか?

下から二番目の写真: 風力発電機の製造。
こんな奥地に、金属加工の製造メーカーがあることに驚いた。
他にもいくつか見た。

実は、天水から蘭州、敦煌を含む甘粛省は中国最大の石油埋蔵量があり、、また鉱産物が豊富で、多くの希少金属の埋蔵量でも中国第一位です。
この細長い盆地に中国10大工業都市があるのです。






< 12.定西北站まで >


 
< 13. 定西北站 >

ここは通過するだけです。


 
< 14. 蘭州に到着 >

蘭州西駅に到着したのは15:20です。
さすが甘粛省の省都だけあって、高層ビル群がさらに増した。

追記
やはり新幹線は車窓の景色が楽しめるので良かった。

西安(長安)から蘭州もシルクロードの一部なのですが、蘭州から以西の敦煌までが、黄河を渡って進むので河西回廊と呼ばれた。
地図で見ると、大きく北に迂回していた黄河が、一気に南に遡上しこの蘭州を横切る。
黄河を渡河しなければならないことが、境界となり、旅人の逗留地となり、蘭州の役割を高めたのだろう。

今回、西安から蘭州までの道のりで既に緑が少なく険しいことを知った。
かつての交易商人や西域に仏典を求めた僧らが、この険しく長い道のりを行き来したのだと感慨深かった。

シルクロードを少しでも味わってみたいと思い、今回の旅行に蘭州を組み込んだ。
中国旅行でビザを必要としない限度の15日間で、中国の外縁部一周、廈門、北京、(開封)、西安以西のシルクロードの一都市、成都、麗江、昆明、
広州)、香港を一周しようとしたら、蘭州までが精一杯でした。
香港と広州は、香港の騒乱で直前に取止めました。
蘭州には新幹線で入り、一泊して次の夜には航空機で成都に飛ぶ強行軍でした。
列車で成都に向かうのは時間が掛かり過ぎるので止めました。

残念だったのは、世界遺産の炳霊寺(へいれいじ)石窟に行けなかったことです。
本来、丸1日(約7時間)で観光出来るのですが、観光シーズンが終わっており、ボートでの渡河時間が読めず、夜の飛行機に乗るのが無理だったからです(高額でも良ければ可能なのですが)。


次回に続きます。



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