Saturday, February 24, 2018

デマ、偏見、盲点 24: 何がバブル崩壊と戦争勃発を引き起こすのか? 3


 
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前回に続き、怪しい戦争予防策を採り上げ、次いでバブル崩壊と戦争勃発に共通する要因を考えます。
これが今、社会に蔓延り、放置すれば取返しのつかいないことになる。



 
*2


* 危なげな戦争予防策

前回見た日独の事例だけでなく経済封鎖は往々にして逆効果を生むことがあります。
例えば、1991年の湾岸戦争後の長期の経済封鎖は、イラクを疲弊させ次の暴挙を生み出す背景ともなった。
(イスラム国ISの台頭を例に、様々な戦争の予防策がむしろ危険を増大させてしまったことを注釈1で説明します)

現実に即して見るなら、北朝鮮はなぜ核兵器や長距離ミサイル開発に踏み切ったのだろうか?
経緯から察するに、それは日本や中国が標的ではなく、米国の攻撃を抑止するのが目的と考えられます。
これはイスラエルの核保有に対抗したイランやイラクの核開発、インドとパキスタンの関係と同様です。(核拡散について、注釈2で簡単にみます)
それがこのまま進むと、片棒を担ぐ日本も北朝鮮の標的になる可能性が高まります。
これは当然の成り行きなのですが、問題にならないのが不思議です。

また海に囲まれた細長い日本列島においてミサイル迎撃がほとんど不可能なだけでなく、この防衛システムが整った段階で米国と中国、ソ連を巻き込んだ核ミサイル配備競争になることは間違いない(不可能な理由、注釈3)。
1962年の核戦争危機を招いたキューバ危機は、米国が1959年にソ連に隣接するトルコへのミサイル配備が発端になった。
つまりソ連はキューバへのミサイル配備で抑止力の均衡を図ったのです。
これもよく起こる軍拡競争のパターンですが、危険この上ないものでした。

数年前まで、日本の右派の評論家は口を揃えて、中国は北朝鮮への経済封鎖に協力しないと断言していたが、今はどうだろうか?
常識的に見て、これしか次善策は無かったのだが、嫌中が足枷となり大局を見誤ってしまった。

どちらにしても、平和維持は武器だけで出来るほど単純ではない(米国の銃蔓延が好例)。
だからといってまったく武器が無くても良いとは言えないが。
別の手段と知恵がより重要なのです。



*二つの破局に共通するもの

これまでバブル崩壊と戦争勃発のメカニズムを簡単に見て来ました。

バブル崩壊では、真っ先に崩壊の被害から逃れようとする心理が市場をパニックに陥れていた。
そして、崩壊の大きさは溢れた投機資金が多ければ多いほど巨大になりました。
さらに被害は、元凶の投機家だけでなく、一国に留まらず世界までを窮地に追い込むのです。

戦争勃発では、戦争を回避しようとして軍拡競争が始まり、これが疑心暗鬼を一層駆り立て、一触即発になるのです。
また様々な安易な戦争予防策(軍事援助、軍事介入、経済封鎖など)も、逆に火に油を注ぐことになった。

そして勃発の可能性と被害の甚大さは、軍事力の巨大化や兵器の拡散、軍事同盟、国民の疲弊(敵意増大)によって高まるのです。(軍備増強の落とし穴、注釈4)
さらに核兵器による戦争ともなれば被害は地球上すべてに及ぶことになる。


 
*3

* 破局を招く感情の暴走

上記二つの破局は、ある感情が広く社会を覆い尽くしてしまったことよる。

バブル崩壊では、投資家の旺盛で短絡的な金銭欲がバブルを生み、そして抜け駆けの心理が崩壊を招いている。
(短絡的な金銭欲とは、地道な生産活動ではなく賭博で儲けようとする心根です。抜け駆けの心理とは、他人が損をしてこそ自分が儲かる、つまりエゴであり公共心の逆です。)

戦争勃発では、恐怖心が敵意となって軍拡競争を加速させ、そして相手国への無知による疑心暗鬼が戦端を開くことになります。
軍拡などの威嚇合戦が始まると、敵意が増し相互理解がより遠のくことは社会心理学が明らかにしています。
民主国家間でもこの過程を経て、やがて戦争に突き進む可能性が増すのです。

問題は、金銭欲と抜け駆け、または敵意と疑心暗鬼の感情が社会で連鎖反応を起こし暴走し始めると制止することが困難になることです。
現在、人々はこれらの感情をありふれたものと見なし、この感情の暴走に何ら疑念を持たなくなってしまっている。
放置しておくと破局を招くことは既に見た通りです。

これこそが厄介なのです。
これら感情の暴走を止める必要があるのです。


 
*4

* この感情の暴走がなぜまかり通るのか

先ずは、この感情の暴走が危険であり、これを看過する今の社会が異常である事を認識する必要があります。

実は、この不感症さはここ数十年の間に生じたものなのです。
この間に、人々は刹那主義に陥り、理性を麻痺させてしまった。

バブル崩壊で言えば、金銭欲と抜け駆けの欲望は留まるところが無い。
ここ半世紀、自由放任主義(規制緩和と累進課税放棄)がもてはやされ、やりたい放題(累積赤字と格差の増大)なのです。
しかし、20世紀初頭から世界大恐慌後しばらくの間は、先進国(英米筆頭)においてこの欲望を制限して来た。
北欧は当初から別の手段(社会保障)によって、この難を逃れている。

戦争勃発で言えば、現在、敵意と疑心暗鬼の感情が益々剥き出しになっています。
現在はこの感情を抑制することが軽蔑の対象すらなる(平和ボケ、国賊と呼ばれる)。
大戦後しばらくの間は、反省からこの感情を抑制し平和の構築を目指していました(EU統合、国際連合平和維持活動が始まり、北欧の平和貢献は続いている)


次回はなぜ、今の社会が理性を麻痺させてしまったかをみます。



注釈1
イスラム国が誕生した背景に何があったかを簡単に見ます。

様々な要因が絡んでいるのですがポイントを振り返ります。

まず、直近は2003年のイラク戦争によるイラク社会と経済の崩壊でした。
特に米軍占領下で報復としてスンニ派で占められた軍人を大量解雇し、これがイスラム国に加担した(シーア派を敵とすることで一致)。

これに遡って米国はアフガン戦争において、中東イスラム圏からの義勇兵(アルカイダ)をソ連に対抗できる近代兵器を有する武装集団に育成していた。
これがアフガン戦争後、イラクやシリアに戻って来た。

既にイラクでは、1991年の米国主導の湾岸戦争とその後の経済封鎖で極度に疲弊していた。
またイスラエルとの中東戦争に介在した欧米、キリスト教国への憎しみが中東で蔓延していた。

これら欧米の施策がイスラム国の台頭を招いたと言える。
つまり安易な大国の戦争予防策が裏目に出てしまっている。


注釈2
イスラエルはフランスより核施設を導入し、米国が黙認し核兵器を保有することが出来た。
これを脅威としてイランとイラクは核開発(平和利用だけかは不明)を進めた。
これに対してイスラエルはイラクの核施設を空爆し、イラクは開発を断念した。
またイスラエルはイランの核科学者を多数暗殺し、研究工場と研究者を爆殺し、またイランも核開発を放棄した。
このイスラエルの犯行はモサドによって秘密裏に行われたので、確たる証拠はないが公然たる事実です。

インドとパキスタンの核兵器保有の発端は、中国と国境紛争を起こしていたインドが中国の核への対抗策として行ったと見られている。
そしてインドが保有すると、これまた国境紛争を起こしていたパキスタンが対抗して核兵器保有に走った。

こうして連鎖的に核拡散は進んだ。


注釈3
近海の潜水艦や偽装船から複数のミサイルによる攻撃が同時に行われれば完全な迎撃は不可能です。
これは単純な理屈で、日本列島はほぼ無数に近い迎撃ミサイルの配備と2~3分以内の発射が不可欠です。
攻撃側には楽な手段なのだが、防衛側には想像したくない悪夢となる。
かつての米ソの核開発競争も、このような状況を経て膨大な保有数となった。


注釈4
歴史上、戦争は巨大な軍事力を保有する国が始めるものでした。
次いで、それは経済力にとって代わられた。
しかし、ここ1世紀あまりの間に、状況は様変わりしている。

小国日本が日露戦争で勝利できたのは、実は巨額の外債発行が可能になったからです。(ユダヤ金融家がユダヤ人を虐待したロシアを憎んで斡旋)
かつてヨーロッパの大国は自国の富豪から借金し戦費を調達出来たが、日本では不可能でした。
今は、経済力が小さくても借財(国債)によって戦争を始めることが可能になった。
元来、借金は困難なのですが、何らかの取引条件(軍事同盟など)で合意できれば簡単なのです。

こうして現在は弱小国やテロ集団も軍事力を持つようになり、さらに軍事援助が加わり、戦火は至る所で起きているのです。




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