Saturday, April 15, 2017

平成イソップ物語 14: 津波とモグラ

  

*1


昔々、ある所にモグラがたくさん住んでいました。
そこは山と海に囲まれた平和な所でした。
しかしある日から事態は急変しました。



 
*2



モグラ達がたくさん集まっています。

一匹の白いモグラが大声で皆に訴えています。
「皆、聞いてくれ!
津波が来たら、我々の住んでいる所は海に沈んでしまうぞ!」

誰かが聞きました。
「そんなことが起きたら大変だ。 どうすれば良いのですか?」


白いモグラが答えました。
「それは海岸に堤を作るしかない。
そうすれば海からやって来る大きな波を防ぐことが出来る。
私達は土を掘って集めることが出来る。
今やらなくて何時やるのだ!」


皆は騒ぎ始めた。
「この話は本当かな?」
「しかし万が一、津波が来たら終わりだぞ。」


この時、一匹の子供モグラが母さんに言いました。
「以前、僕は地中を深く掘っていた時、底の方で水が流れているのを見たことがある。」

お母さんは言いました。
「山にたくさん雨が降れば、洪水になるかもしれないね。」

母さんは周りのモグラに危惧を伝えましたが、皆は口を揃えて言いました。
「お前は津波の恐ろしさを無視するのか。話にもならない。」


やがて皆は力を合わせて堤を造ることにしました。

そんなある日、その親子はこの浜を去り、離れた高台に住み始めました。

やがて数年が過ぎて、雨が降る日が多くなりました。

ついに川が増水を始め、堤で囲まれた浜は水没してしまいました。

とうとう津波は来ませんでした。



 
*4







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