Monday, May 18, 2015

ピケティの資本論 17: 格差是正を巡って 2

  
    

前回、格差是正を躊躇させている「規制撤廃信仰」の間違いを見ました。
今回は、最も強力なデマ「増税は経済を悪化させる」を検討します。


増税は経済を悪化させる、それほんと?
確かに増税だけでは消費を減らし経済を悪化させます。
しかし政府が増税分を直ちに全額投資(貯蓄零)すれば景気は必ず上昇します、少しですが。
今回の悪化は赤字国債発行(将来の増税)を消費税増税に替えたからです。
わざわざ政府は消費減退を招く最悪の増税方式を採用したのです。
また低所得層は必需品さえ購入出来ないのに、増税分を政府が無駄に使えば悲惨です(箱物の公共投資)。
そこで、富裕層に多く課税すれば良いと考えるのは人情です。
それをしないのは何か問題があるのでしょうか?

それでは簡単にどのような税制が良いのかを試算してみましょう。
答えは実に簡単で、税制審議会の偉い先生方の出る幕はありません。




< グラフ2.消費税3%増による所得階層毎の消費額 >

簡単に3種類の徴税方式を試算してみましょう
例えば、1億円の所得で600万円(グラフ2から算出)を消費する富裕者A1人と、100万円の所得で全額消費する低所得層B100人を想定します。注釈1

案1.消費税10%の場合。
税収総額1,060万円A60万とB,000万)、消費総9540万円(A540万とB9000万円)。

案2.所得税10%の場合。
税収総額2,000万円A,000万とB,000万)、消費総額9,600万円A600万とB,000万円)。

案3.累進所得税をA富裕者に50%、B低所得者層に5%の場合。
税収総額5,500万円A,000万とB500万)、消費総額10,100万円A600万とB,500万)。


何が一番良い税制だろうか?
案3の累進所得課税が税収額と消費額共に最大となっています。
さらに、低所得層の消費を減らさず、優しい税制と言える。
これのどこが悪いのでしょうか?
逆に、消費税は最悪でした。
このことが政府(税制審議会)やマスコミから聞こえて来ない理由は、賢明な皆様なら察しがつくはずです。

巷で言われている景気の落ち込みどころか、消費税に比べ5.2倍多い税収で公共投資を行えば間違いなく景気は良くなる(笑い)。
さらに財政赤字の救世主になるかも。

このように常識と異なるのは、グラフ2が示すように、金持ちは所得が増えてもそれに比例して消費を増やさず、投機しているからです。
実際、彼らは法人の経費(接待費など)で消費するので心配はいりません。

富裕層への課税分を公共投資や福祉予算に回せば景気を上昇させ、低所得層への格差是正が進み、公正化が図られ社会全体の活性化を生むことになる。
これは20世紀前半、先進国で実際に行われていたことで、なぜか国民が意欲に燃え急成長した時代と重なるのです。
当然なのですが、北欧は所得の55%ほど徴収されても成長を続けています。

結論、増税方式次第(累進制の直接税)で社会は良くなり、国家経済は救われます。

次回、世界で進行している格差の奥にあるものを見ます。


注釈1: グラフ2より、所得200~250万の消費額177万(消費性向=消費額/所得=0.79)、1250~1500万で477万(0.35)がわかる。
また所得200万以下の消費額110万、所得1500万以上で557万がわかる。
これらの数値から、所得5千万円と1億円の消費性向を0.1と0.05、消費額を共に500万円と算出し、600万円とした。
案1,2,3の試算では、所得の中間層を無視して、分かり易くしています。




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