Thursday, November 2, 2017

何か変ですよ! 81:  何が問題か? 4









 
*1


前回、日本の賃金が下がり続けている状況を知りました。
その一方、企業は空前の利益を上げ続けています。
それでは企業の好業績は私達に恵みをもたらすのでしょうか?


豊かになった企業は日本経済を救うのか?
政府は大企業が儲けなければ、庶民に恩恵が行かないと言う
今後、企業が賃金を上げ、設備投資をしてくれればそうなるのだが。
この可能性を調べてみましょう。







 

< 2. 豊かになった企業がしていること >


上のグラフ: 東洋経済 山田記者のグラフ。

労働分配率が長期低下傾向にあり、さらにリーマンショック後も低下し続けている。
こうして企業は労働分配率(付加価値に占める賃金)を下げ続ける一方で、内部留保を長期にわたり積み上げている。
もっともこの内部留保が設備投資に向かえば日本経済は浮上するのだが・・・・
そこで下のグラフを見てください。

下のグラフ: 日本政策投資銀行 田中氏のグラフ。
これは民間企業の設備投資額のGDPに占める割合を示している。
一目瞭然だが、企業は内部留保(資金)が潤沢にあるにも関わらず、設備投資を抑えている。
これでは生産性向上は見込めない(設備投資だけが生産性の要素ではありませんが)。

これでは踏んだり蹴ったりだ!


それでは企業のあり余った資金は何処に向かっているのか?




 

< 3. 企業が目指していること >

上のグラフ: 日本政策投資銀行 田中氏のグラフ。
これは企業家が抱く期待成長率と設備投資の関係を示す。

このグラフは、設備投資が少ないのは企業家マインドの冷え込みに起因していることを示している。

政府は声高に法人減税は景気浮揚策と説くが、どうだろうか。
米財務長官時、ポール・オニールは「まともな経営者は法人税が減税されたからと言って、むやみに設備投資を行わない。」とブッシュに進言していた。
企業や富裕層への大減税は米国のレーガンや子ブッシュの例が示すように、概ね赤字を増やしただけでした。
だがこの手の減税は米国主導により先進国は安売り競争の状態に陥っている。


下のグラフ: 内閣府の国民経済計算(GDP統計)より。
これは設備投資と財貨の輸出、海外からの所得の推移を示している。
このグラフから日本経済の成熟度、悪く言えば衰退の始まりが見える。

設備投資(青線)は横這いなのに、海外に資金(赤線)がドンドン流れ、そして海外に蓄積された資金のもたらす利益(灰色)がドンドン還流し、その傾向が益々強まっている様子が分かる。
(但し、このグラフの資金は家計と企業の分を含んでいる)

この状況を肯定するエコノミストもいるが、これが続けば企業は国内ではなく海外に投資し続けることになり、やがて国内産業が衰退することになる。
実は、これは19世紀、英国が衰退した状況と似ている。

しかし政府は意欲の萎えた企業に法人減税や公共投資、金融緩和で大量のカンフル剤(通貨供給)を大量投与し続けて来た。
一方で、消費者には消費増税、賃金低下、非正規雇用、低金利、円安(生活用品高)で負荷をかける一方です。

この結果、労働者減とも重なり消費が増えず、膨大な資金は実需に繋がらず、巨大な投機資金となって世界を駆け巡り、いずれどこかでバブル崩壊が起こり、金融危機が繰り返される。
こうして、軒並み先進国は膨大な累積赤字を積み上げ、破綻の道を進むことになる。


最後に日本経済を俯瞰してみましょう



 

< 4.GDPと消費と賃金の推移、内閣府の国民経済計算(GDP統計)より >

このグラフは、企業が所得と内部留保を増やす一方で、労働者が賃金低下によって貯蓄分を減らすことで消費を続けている状況を反映している。
この間、家計の貯蓄の伸び率はドンドン低下している。

国内総生産の半分を占める家計消費が伸びなければ、国内総生産は伸びず、経済成長はあり得ない。
さらに低調な設備投資が足を引っ張る。
21年間で賃金が10%低下するなかで、国民は家計消費を6%増やしたが、国内総生産は2%低下した。

皆さんは、何が問題なのかが見えて来たでしょうか?


まとめ
上記の説明は大雑把な説明ですが、大まかに日本が何をして来たか、そして何を重視し何を放置して来たかがわかったと思います。

今の状況を作りだしている三つの政治経済の潮流とは何か?
A: 1980年代からの米国主導による自由放任主義経済の潮流
B: ここ半世紀の与党の企業優先の政治の潮流
C: 2013年からのアベノミクスの潮流

今の日本の経済状況は、上記三つの潮流が合流したものですが、結局、この三つは米国の圧力(構造改革要求、プラザ合意など)と米国主導による自由放任主義経済で繋がっています。

日本国民としては、「先ずは企業が豊かになり、やがてトリクルダウンの恩恵を受ける」と言う政府の言葉を信じたいでしょう。
しかし、米国と日本の過去40年間の実績から、今後もバブルが繰り返され、賃金低下と所得格差の悪化は必然です。


私達は疑いの目を持ち、自ら検証する姿勢を捨てるべきではありません

次回に続きます。









No comments:

Post a Comment