Monday, September 28, 2026

短縮版 迫る多難な危機  第三章 3-8,3-9

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-8 分断と対立の深みに喘ぐ世界  

       まとめ

  3-9 世界は協力しなくなった  

       何が世界で起きているのか?

 

     

 

 

第3章 我々が直面している危機

 

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-8 分断と対立の深みに喘ぐ世界

 

 現在、先進国で概ね共通して宗教・移民・人種・LGBTQ を巡る対立が深まっている。かつて「多様性の尊重」や「寛容」を掲げた融和の精神が先進国に満ちた時代があった。しかし現在は異なる集団を差別し敵視する社会的分断から、さらに排除へと先鋭化しつつある。何が人々をこうも駆り立てたのだろうか。この半世紀の先進国の分断の経緯を簡単に追います。

 

1960〜1970年代、多文化主義と移民: 欧米諸国(カナダ、オーストラリア、欧州の一部)が移民労働者の定住化を受け入れ、多文化主義や寛容を公的な価値観として掲げ、異なる文化や宗教の共存を目指した。この時代、旧来からの差別は残存していたが20世紀初頭の労働運動・民主主義運動の息吹が息づいており、米国では公民権運動、女性解放運動、学生運動、同性愛者解放運動が次々に登場した。欧州でも福祉国家の拡充と社会解放が進んだ。一方で、移民の増加と、米国への移民が白人から有色人種(ラテン、アジア)へと変化し増えた。

 

1970〜1990年代、保守革命が始まる:それまでのリベラル化(市民権運動、女性解放、性の解放、宗教的寛容の拡大)と、白人以外の市民が増えることで保守派は価値観の喪失を恐れるようになり、政治的にリベラルに対決姿勢を取るようになる。特に米国では1970年代後半から、福音派などの保守的キリスト教勢力が多文化主義を否定する政治運動を強めました。米国では、宗教上の道徳観を国家のアイデンティティにするまでなった。共和党が保守的キリスト教勢力を取り込むことで保守革命は強大な力を得ることが出来た。また冷戦終結前後で、欧米は移民の受け入れを増加させた。

 

1980~2000年代、経済格差が深刻化: 1980年代に保守改革の一環として始まった新自由主義政策は、市場の自由と小さな政府を標榜し、リベラルの人権や権利を優先する福祉政策を否定していった。またグローバル化が進んだので産業の空洞化が進行した。空洞化に対応する労働者転職や産業転換をないがしろにした事と、金融経済の発展が、福祉政策低下と相まって、格差拡大を進行させた。リーマン・ショックなどの世界金融危機が頻発する度に格差は拡大し、経済・金融・福祉政策に問題であるにも関わらず、格差の不満は移民や政治エリート、グローバリズムに向けられるようになっていった。理由は簡単で「外国人が仕事を奪った」が最も納得し易いからです。こうして文化戦争や経済的な不満は、分かり易い敵を生み続け、リベラルに対立する右派ポピュリズムの台頭に向かうことになる。また9.11同時多発テロが起こり、イスラムへの警戒感が高まり、さらに宗教的・文化的な対立が先鋭化した。

 

2010年以降、欧州難民危機とポピュリズムの台頭: シリア内戦等に伴い大量の難民・移民が欧州に流入し、社会統合の限界や治安への懸念から排外主義的な政治勢力が急伸した。



 まとめ

 

 この分断と対立に繋がる社会変化をもたらした背景とは何か? 端的に言えば、20世紀初頭の労働者優位等にみられる民主主義の大躍進が、保守層に反感を抱かせた事から始まった。保守層(伝統重視の人々と富裕層)にとって、この大躍進が社会の後退に思えた。一つは、権利の平等を広げる事は、従来の男尊女卑や家父長制を温存する伝統を否定する事に繋がった。今一つは、富の再分配は富裕層の富の減少を確実にしたことだった。保守層は、伝統を破壊してはならない根拠として聖書(宗教的権威)を担ぎ出した。また、富の再分配は、労働意欲を減退させるので、より自由が不可欠だと復古思想を持ち出した。そして、国の保守的なエスタブリッシュメント達は、経済と社会政策の大転換のキャンペーンを行い、実行に移した。当然ながら格差拡大は広がった。こうなると、中間層以下の人々にとって所得が伸びないゼロサム社会では、他者に与える施し(再分配)を与える余裕はなくなったと考える人が増えた。こうした中、中間層以下の人々の窮地は、グローバル化と移民、リベラルな福祉政策(税の徴収)が原因だと煽られるようになった。こうして、他者を憎み、排斥することで解決出来ると考える人々が増えた。この精神状態、社会状況、懐古・復古主義に陥る宗教、それを利用する政治家は、歴史上繰り返され、ファシズムや独裁に繋がって国を滅ぼすことになることが多い。

 

 ところが、より社会を不安定にしポピュリズムに向かわせているものが二つ生まれた。一つはSNSです。アルゴリズムの基本設計において、エンゲージメント最大化(いいねを重視)が2010年代中頃から始まり、さらに怒りの感情を優先するようになったことで、利用者は知らず知らずの内に煽情され、フェイクニュースに飛びつくようになってしまった。もう一つは、ロシアのプーチンが、2014年のクリミア併合以降、欧米の右翼ポピュリズム政党を裏で支援を始めた事も大きい。彼は強力な諜報網を使い、金銭的支援からSNSによる米国大統領選挙への介入まで行っている。彼の意図は世界に自分に連なる独裁者を増やし、ロシアと自身の存続を確実にすることだろう。

 

 

 

 

3-9 世界は協力しなくなった

 

 大戦後、世界はグローバル化を背景に、協力体制を整えて来た時期もあったが、今やエゴむき出しになり、多数による協力は期待出来なくなった。幾つかの協力に失敗した例を見ます。

 

*イスラエル入植地に関する安保理決議案(1972年以来)

 イスラエルの入植地問題を巡る安保理の決議案は、米国の50回以上の拒否権行使や主要国間の対立で採択を逃すことがあり、国際社会の統一的立場が示せない場面が繰り返された。

*国連海洋法条約(UNCLOS / 1982年採択)

 「海の憲法」として採択されましたが、深海底の鉱物資源開発に関する規制を巡り、米国が自国産業への制約を嫌って現在に至るまで批准していません。

*生物多様性条約(CBD / 1992年採択)

 欧州主導で環境・生態系保護の枠組みが作られましたが、米国はバイオテクノロジー企業の知的財産権が侵害される懸念などから署名のみで未批准であり、国連加盟国で唯一の未締約国です。

*包括的核実験禁止条約(CTBT / 1996年採択)

 国連総会で採択されたものの、米国上院の反対で批准せず、中国も未批准です。さらに2023年にはロシアが批准を撤回し、核軍縮体制の亀裂が決定的になりました。

*国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程(1998年採択)

 戦争犯罪などを裁く常設裁判所の設立に対し、欧州諸国は推進しましたが、米国は自国軍兵士が政治的な動機で訴追されることを恐れて署名を撤回。ロシアや中国も参加を拒否しています。

*クラスター弾に関する条約(オスロ条約 / 2008年採択)

 欧州のNGOや政府が主導して非人道的な兵器の禁止をまとめましたが、米国、ロシア、中国という主要軍事大国がこぞって参加を拒否し、現在も加盟していません。

*デジタル課税(デジタルサービス税)(2010年代後半〜)

 巨大IT企業(GAFAなど)から適切に税を徴収するため欧州各国が独自の課税を進めたのに対し、米国は「自国企業への狙い撃ちだ」と猛反発し報復関税をちらつかせました。OECDを通じた世界統一ルールの導入は現在も難航しています。

 

 

何が世界で起きているのか?

  

 世界は、この半世紀ほど徐々に一致協力出来なくなっています。途中、一度だけ冷戦終了後の1990年代、世界は最もまとまる事が出来たのです。

 

 1990年代には、国際環境法、国際経済法、国際刑事法、テロ対策、化学兵器禁止機関、旧ユーゴ・ルワンダ国際刑事裁判所、ICCローマ規程など、非常に多くの国際制度が発展しました。国連は1990年代を「国際法の発展における重要な時代」と評価しています。しかし、その後は、協力体制は崩れて行き、特に、2016年以降2025年と急激に悪化している。2006~2015年の10年間の安保理拒否権は19回でしたが、2016~2025年には49回と2.6倍に増えている。

 

 様々な原因が積み重なり、今に至っているが、大きな原因を挙げます。

*国内の巨大産業のロビー活動が議会を動かし、条約批准を拒否させる。米国。

*多くの国が独裁化を強め、特に大国が自国の地政学的利益を優先する。ロシア、米国、中国。

*最大の理由は、国内の不満が右翼ポピュリズムを招き、内向きになった。トランプ現象。

 

 これまで見て来たように、過去と比べものにならないほど、現在は世界の一致協力なしには解決出来ない重大な危機が、それも数多く迫っている。現状の、各国の内向きな態度を改め、また米国の横暴に耐えるだけではなく、多くの国が協力して米国と対峙し、さらに米国の立ち直りを促すまで行かないと、世界を救うことが出来ない。今は、その時なのです。

 

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

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