Sunday, September 29, 2019

北欧3ヵ国を訪ねて 86: 北欧の旅を終えて 7 : 北欧の国民性 2









< *1 かつての日本人の海外移住 >

ヴァイキングが教えてくれたこと


日本のある著名人は、心優しい日本民族が虐殺などするはずが無いから、隣国からの非難は嘘だと言う。
そして多くの国民も溜飲を下げる。

私はヴァイキングの子孫の国、北欧を訪れたが、彼らが凶悪だと感じたことはなく、むしろ非常に親切です。

一方で、900年前のヴァイキングによる虐殺や略奪は真実です。
彼らはヴァイキングの冒険家と交易者の側面を誇りにしているが、その一方、かつての悪行も認めている。
前回見たように国民性はなかなか変わらないので、上述の説は辻褄が合わない。

この稚拙な説を採り上げるのは気が引けるのですが、残念ながら多くの人が真に受けている。

これも戦史や心理学、人類学を少し学べば、人は容易に状況に支配され異常行動をとること、またその程度は国民性によって左右されることが理解出来るはずです。

日本の国民性には著しい特徴があり、良くも悪くも大きく作用して来た歴史がある(ドイツと似ている)。

良い例としては、明治維新や戦後復興などを国民が一丸となって行ったことです。
悪い例としては、日清日露戦役から太平洋戦争に至る道でした。
心配な点はヒトラーのような独裁者が居なくても、一丸となって闇雲に突き進んでしまうことです。
現在も、省みることなく惰性のまま進んでいる。


 
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なぜ日本は閉鎖的なのか

北欧と日本は同じように海で囲まれ大陸の端にある細長い国土に住みながら、なぜかくも異なってしまったのか。

一つは語族です。
デンマークは同じゲルマン民族であるドイツと陸続きで、北欧三ヵ国は同じゲルマン語族です。(フィンランドは異なる)
後に新旧教徒の違いはあるが同じキリスト教を受容し、大陸との繋がりは深い。

一方、日本は隣国と言語を異にし、宗教も異なる。

もう一つは生業です。
日本は稲作農耕民のお陰で食料が豊富で、また南北に伸びる列島の産物が自給を可能にし、巨大都市を出現させた。

日本にも、かつて遠洋航海の交易民、倭寇がいた。
彼らはヴァイキングに3世紀ほど遅れ数世紀間活躍した。
しかし彼らは海流・海風に恵まれた北西九州の島嶼部を拠点にしたに過ぎない。
海賊は日本各地に多数存在したが、その活動は近海に限られていた。
幸か不幸か、日本では危険な遠洋航海で生計を立てる必要がなかった。

これらの違いが大きい。


 
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閉鎖性が招く衰退

現在、海外志向を持つ日本の若者が減っている。
1ヵ月程度の語学留学は増えているが、長期海外留学は減っている。
一方、日本の政府や経済界は巨大なインフラ輸出(原発など)を次世代の産業に育成しようとしている。
おそらく多くの国民は、この政策に夢を抱くかもしれない。
残念ながら、この二つの現象は表裏一体であり日本をさらに衰退へと向かわせる。

日本が活況であるなら、若者が日本に残ることも良いだろうが、現在急速に衰退している。
所得低下が災いしているので同情するが、かつて大正時代に前後して100万人以上が日本から海外移住したこともあった。

またインフラ輸出は聞こえが良いが、産業の空洞化を加速させ、後に日本国民が発展途上国のカントリーリスクを長期に背負うことになる(原発事故の補償など)。
(実はこのパターンは西欧が帝国主義に邁進した結果、国民が税負担と命を投げ出すことになったのと同じです)

二つに共通していることは日本が惰性に流れ、世界から目を背けていることから起こっている。
やはり海外との差、特に衰退を自覚することが出来ないのが問題です。
またインフラ輸出の問題は、日本が諸外国の実情と世界史に関心がないことから気づかない。

明らかに我々は閉鎖的な民族であって、余程意識して海外に目を向けていないと、同じ轍を踏むことになる。
我々には、この自覚が必要です。

このことをヴァイキングが教えてくれた。


次回に続きます。



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