Sunday, January 18, 2015

社会と情報 36: 著書「朝日ともあろうものが」から見えてくるもの


1. 著書 >

今日は、真相に迫る本を紹介します。
著者は朝日の記者でしたが、朝日を陳腐極まりないと吐き捨てます。
新聞社の日常が暴かれます。

著書 : 「『朝日』ともあろうものが」
著者 : 烏賀陽弘道。朝日と雑誌「アエラ」の記者を17年経てフリーランス。
出版社: 徳間書店。2005年刊。
補足 : アマゾンのカスタマーレビュー(33件)の評価が4.5と高い。

はじめに
著者は朝日の旧態依然とした官僚的な体質に幻滅し、「幻想を捨てろ」「変えるしかない」と言います。
それは著者が実際に体験したもので偽りはない。

私はこの本を読み終え暗澹たる気持ちになった。
この先、どうして民主主義を支えていけば良いのか?
「第四の権力(行政・立法・司法に並ぶ)」と「ウォッチドッグジャーナリズム(権力監視型報道)」をどこが担うのか?

幾日が経って、あることに気づいた。
著者は多くの切実な問題をさらけ出してくれた。
そして、多くの問題は朝日だけでなく横並びの新聞業界にも当てはまり、むしろ指摘されていない部分は朝日の良さと言えるのでは・・。



< 2. 著者 >

著者が訴えること
著者は新米記者として地方と大都市で苦労するようすを累々描き、その苦労を馬鹿げているとする。
著者の業績については控え目で、目につくのは上役の横暴と横領、無能さ、そして組織の腐敗と捏造、癒着体質です。
6年後に雑誌記者に転籍となり、その後10年間、著者は活躍の場を得て才能を発揮した。
途中、2年間の米国留学を自ら勝ち取り、果たす。
その後、落ち目の他の雑誌編集に回され、冷や飯を食わされ退職する。

全編、悪態に尽きるが、朝日の記者と新聞社の問題点が実感を持って伝わって来る。
日本企業にありがちな年功序列と官僚化による弊害が蔓延している。
それは有能で意欲ある若い人材を殺し、セクショナリズムと自己目的化した取材姿勢を蔓延らせた。
これが天下の新聞社だと言うのだから悲しくなる。

しかしそれだけではなく、新聞業界共通の問題も見えてくる。
「記者クラブ」に端を発する、情報発信元(政府、警察、自治体、企業、業界団体など)との癒着がある。
記者クラブの横並び体質は各社を意味の無いスクープ合戦に向かわせる(どうせ発表される情報を他者に抜け駆けて取ること)。
それゆえ真の取材力が育たず、昼夜にわたる個人的な繋がり(家庭訪問、恩の貸し借り)による取材を最良とし、その結果、匿名報道や個人的な癒着が横行する。
記者のエネルギーと論功行賞は、これに集中することになる。
さらに悪いことに、記者クラブの情報待ち姿勢は、自ら問題点を掘り起こす意欲を失わせてしまった。

もう一つが「新聞の再販制度(特定の不公正な取引方法)」による業界の過保護で、これが自らに甘い官僚的体質の温床にもなっている。

これらは「報道を麻痺させている最大の理由」ですが、私達読者はどっぷり浸かってしまって自覚出来ない。
実は、この事を強く自覚するには米国でのマスコミ経験が必要だったようです。
この著者の烏賀陽弘道や上杉隆、牧野洋などは米国駐在の後、確信を深め新聞社を退職しています。



< 3.朝日新聞珊瑚記事捏造事件、1989年 >

この本から学んだこと
1980年代後半のこととは言え、朝日が如何に官僚化したエリート組織であることがわかった。
さらに記事の捏造が小さなものから常態化していることもわかった。

しかし面白いことに気がついた。
著述から読み取れる著者は意欲と創意に溢れ、良い記者になることだけを望み、出世や警世には無欲だと言うことです(無色透明、中庸と言える)。
その著者が希に指摘する、数は少ないが優秀で清廉潔白な記者が非主流(政治部・経済部・社会部)の出世コースから外れた所におり、またペンで世の中を変えたいと望む人(警世の記者)が少なからずいると。

私はこの本を読む前、朝日の左派傾向(革新)に不安があった。
しかし著者は、特段その偏向を指摘していなかった。
読み取れるのは、空回りはしているが反権力気質の社風が朝日にはあることです。
それが社会悪や反権力の姿勢を際立たせる捏造記事に繋がるようです。
しかし記者達を洗脳するシステムや権力構造(トップダウン)は見あたらない。
朝日のエリート官僚臭さは大いに問題だが、著者の言う「悪平等意識」が蔓延していることにより独裁者の存在を許さないのかもしれない。


最後に
朝日の欠陥はよくわかった。
しかし日本の報道、「社会と情報システム」、はさらに多岐にわたる大きな問題を抱えている。
逐次明らかにしていきますが、未だほんの一部しか見ていません。

著者がさらに活躍されることを期待し、日本の報道が良くなること切に望みます。



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