Saturday, July 8, 2017

何か変ですよ! 61: よくあるタカ派礼賛



*1


今回は、経済学者の惜しい勘違いを御紹介します。
共著「世界経済の勝者と敗者」での浜田先生のお言葉です。
なんとゲーム理論を使ってタカ派こそが中国を制すると説いています。


浜田先生のお言葉
この本の最後に、『コラム 中国編: 「ゲーム理論」から考える中国との向き合い方』があります。(216~219頁)

僭越ながら抜粋要約します。

危なっかしい中国と付き合うには、囚人のジレンマ(ゲーム理論の一つ、注釈1)によるコンピューターシュミレーションの結果(注釈2)を援用することです。
つまり「しっぺ返し戦略」が最良なのです。
これは最初は相手を信頼して協力しあうのだが、相手が裏切って敵対してきたら、確実にやり返す戦略です。
この点、タカ派の安部首相が最適です。

またニクソン大統領は電撃的に中国と和解した。
さらにレーガン大統領も冷戦を終結させた。
この二人もタカ派(共和党)でした。
                      』

私はこれを読んで、やはり安部首相の側近になる人は凄いなと感心した。
しかし、著名な先生の発言だけに悪影響が大きいので、少し誤解を解きたいと思います。


 
*2


「しっぺ返し戦略」引用のおもしろさ
これは動物行動がどうして進化したかを知るには面白いテーマで、かつ有名です。
しかし知ったかぶりの都合の良い御説はいただけません。

この手の実験は、コンピューター上の行動が実際の個人や社会と異なり、相手の行動を予測したり学習出来るのか、また協力した時の利益と裏切られた時の不利益の配分が問題になります。
例えば、不利益は単に利益が減るだけなのか、極論すれば1回でも裏切られれば死を意味するかなどです。
とりあえず、一国の外交戦略に即使えるものではありません。

しかし、この手の多くの実験や理論から動物や人間行動(利他行動、同胞愛)の進化などがある程度説明出来ることも事実です。

ここでは長谷川寿一著「進化と人間行動」(2000年刊)から、この「しっぺ返し戦略」の解説を一部引用します。

「しっぺ返し戦略」は、「上品さ」(何はともあれ初回は協力する)、「短気さ」(やられたらすかさずやりかえす)、「寛容さ」(古い過去にとらわれず、相手が協力に出たら、すぐに協力する)、「わかりやすさ」(単純である)という特徴を備えています。
人間社会でも、これらのキャラクターを兼ね備えていれば、つきあう相手として皆に好かれるでしょう。
「しっぺ返し戦略」に限らず、上位を占めたコンピュータープログラムの特徴は、基本的に「協力」的な(少なくとも初回は「協力」から入る)ものでした。

・・・
これらの研究から得られたメッセージは、互いに何度もつき合いを続けていくような関係においては、協力行動は遺伝的に進化し得るということです。
つまり、社会生活を送るのが常であるような動物には、「他個体によくする」という行動が進化し、それを引き起こすような心理メカニズムが存在するだろうということです。
                       』

素人の浜田先生と専門の長谷川先生の違いはどうでしょうか?
まったく正反対の解釈に思えます。
おそらく、浜田先生は右翼の心性をお持ちか、その手の解釈を教条的に受け入れているだけなのでしょう。
この手の人は、どうしても強い者や力で抑えること、未知の者を敵視する傾向が強い。
この人に悪意は無く、軽い気持ちで都合の良い引用しただけなのだろう。


多くの研究(注釈3)では、動物の進化と共にタカ派的な行動(裏切りや攻撃が主な行動)を緩和するハト派的な行動(思いやりや協力が主な行動)が発展して来たことが知られています。
単純に言えば、タカ派的な行動が社会を覆ってしまえば、その成員は生命の危機を招き、社会は利益を減らし、発展出来なくなります。

私が驚いたのは、本の最後に安部さんを讃えるために、このテーマを取り上げていることでした。
経済学は財の数量を扱うものであり、財を扱う人々の心理を扱うのは苦手だと思うが、これはお粗末な人間理解です。
実は、経済を動かし、バブルを生み出しているのは合理的でないアニマルスピリットなのです。
これを扱えてこそ、浜田先生は本当の経済の指南役になれるでしょう。
是非とも精進して欲しいものです。


 
*3


事実は奇なり
浜田先生の御説は危なっかしいが、本来、この手の研究(注釈3)は私達に社会や人間への正しい理解を与えてくれています。

数多くの中から二つ重要な知見を紹介します。

動物は弱肉強食の世界だと一般に強く信じられていますが、儀式的な闘争(儀闘)が進化し、無駄な争いを防いでいます。
よく知られているように、鮎やライオンなどは同種の相手が縄張りに侵入した時、徹底的に殺し合うことをしません。
基本的に威嚇で始まり、優劣が決まればそこで止めます。
それ以上に進むこともありますが。
詳しくは「心の起源 連載8」に説明があります。
残念ながら、チンパンジーや人類の方が弱肉強食(残酷)になる場合があります。

社会心理学にトラッキング・ゲームがあります。
これは競争(脅迫)と協力(譲歩)のどちらが社会全体に利益をもたらすかを教えてくれています。


 
< 4. トラッキング・ゲームの図 >

この社会実験は二人がA社とB社に別れ、自社のトラックで自社の出発点から目的地へ、多くの荷物を運ぶのが目的です。
曲線の道は時間がかかり過ぎるので、真ん中の直線道路を使うと早く運べるのですが、相手のトラックの通行をコントロールゲートで止めることが出来ます。
但し、相談は出来ません。

多くの実験をした結果、二つのゲートが無い場合は、直線道路の前で譲り合う人がいると、共に多くの荷物を運べました。
しかし、ゲートを設けた途端に二人の運べる荷物の総量は極端に減りました。

つまり、互いに相手の足を引っ張り合いを始め、激化し自滅したのです。
これは、如何に「競争関係」より「信頼関係」を築くことの方が得策かを示し、人は「脅迫(軍備)」の力を持つと簡単に自滅してしまうことを教えてくれています。


 
*5


浜田先生の歴史観のおもしろさ
彼はニクソン大統領とレーガン大統領の功績を讃えていました。
確かに、否定は出来ないが、単純で一方的過ぎます。
つまり、相手の存在と歴史の流れをあまりにも無視し、ここでも我田引水なのです。

冷戦終結は、レーガン大統領の功績だと喧伝されているのは事実です。
しかし、少し考えれば疑問が湧くはずです。

レーガンが大統領になったのは1981年でした。
一方、ゴルバチョフの書記長は就任こそ1985年でしたが、1978年頃から中央で改革を主導し頭角を現していた。
また彼は書記長就任の年、外相にシェワルナゼを抜擢していた。

そして1987年、大統領と書記長が「中距離核戦力全廃条約」に調印し、冷戦が終息に向かった。
大統領の圧力(スターウォーズ)と言うより、既にソ連内部に変革の兆しがあり、書記長と外相の融和的な方針が功を奏したように思える。注釈4.
また冷戦の軍拡競争によるソ連の経済疲弊や米ソの軍縮は以前から進んでいた。


1972年2月のニクソン大統領の電撃的な中国訪問は驚きでした。

これにはキッシンジャーの活躍もあるが、やはりここでも中国の周恩来の存在が重要です。
この年の9月には、彼は早くも田中角栄と日中共同声明を調印しているのです。
周恩来の融和的な姿勢が無ければ不可能だった。
また1971年、対米強硬派(タカ派)の林彪が死亡したことも幸いしている。

こうしてみると、ソ連と中国のハト派の貢献が浮かび上がり、浜田先生のタカ派絶賛は怪しくなりました。
要は、身びいきが過ぎると言うことでしょうか。

成功のポイントは、タカ派二人の大統領の交渉意思と、相手国のハト派二人のトップの存在があってこそなのです。
もしも、両国がタカ派同士、ハト派同士であればどうなっていたでしょうか?
一方だけを強調するのは、よくある右派と左派の言説で、注意が必要です。


最後に
せっかく愉しみに買ったクルーグマン共著の「世界経済の勝者と敗者」でしたが、先に結論辺りから読んだのが悪かった。
興覚めです。
諦めないで、また初めから読むつもりですが。




注釈1.
二人の間で、共に協力する方が多くの利益を得ることが分かっていても、相手の行動が予測できない時、協力しない方が確実に少しの利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマを指す。

注釈2.
1980年、米国の政治学者ロバート・アクセルロッドが、様々な研究者からゲーム戦略を募集し、コンピュータープログラムで総当たり対戦を行った。
そして様々な戦略の中から「しっぺ返し戦略」が最高得点を取って優勝した。

注釈3.
動物行動学、ゲーム理論、進化心理学、進化生物学、社会心理学など。
このジャンルの本を推奨します。
「生物の社会進化」ロバート・トリヴァース著、産業図書:難しいが驚くべき慧眼です。
「共感の時代へ」フランスア・ドゥ・ヴァール著、紀伊国屋書店: 動物の愛に涙します。目からうろこです。
「進化の人間行動」長谷川寿一著、東京大学出版会: 大学のテキスト。全体像がわかる。
「社会心理学キーワード」山岸俊男著、有斐閣: 要領よくまとまっている。

注釈4.
創元社刊「世界の歴史10」JM.ロバーツ著。
p186~188に、似たような記載があります。




Friday, July 7, 2017

フランスを巡って 20: ボーヌからストラスブールまで



*1


今日はボーヌからストラスブールまでの車窓の景色を紹介します。
ボーヌ郊外のレストランでの昼食も紹介します。
撮影は旅行日5日目、5月21日(日)、12:00~18:30です。



 
< 2. 走行ルート >

上の写真: 昼食のレストランがある丘からの景色。
ブドウ畑が広がっている。

下の写真: ボーヌからストラスブールまでのルート。
地図の上が真北です。

今回の旅行では、1日の合計走行距離が500km近くなるのが2回、300km台が2回ありますが、この日は合計約500kmになる最初の日になります。



 
< 3. ボーヌ市街からレストランまで >

上の写真: ボーヌ市街を抜け、直ぐ近くの丘の上のレストランに向かう。
時間は12:15頃。

中央の写真: 木立に囲まれたレストランの全景。
中央がテラス席、左がレストラン建物、右がテントのレストランで、ここで私達は昼食をとりました。
丘の上にあるが、周囲は木立が多く、眺望は遮られる。
レストランに12:20に入り、13:40には出発しました。

下の写真: 少し丘を散策すると、赤色や黄色の花が陽を受けて輝いていた。



 

< 4.昼食 >

エスカルゴが出ました。
私にはすべてが美味しかった。



 

< 5. いざ出発! >

レストランのある丘を下って高速道路へ向かう。



 

*6

やがて広い平野が続くようになる。



 
*7


 
*8

やがて遠くにヴォージュ山脈が見えて来た。
およそ道のりの半分は来たでしょう。


 
*9


 
*10


 
*11

のどかな風景が続く。
私達はライン地溝帯の中、ライン川の左岸(西側)のヴォージュ山脈の麓を走っている。
ライン川がフランスとドイツの国境になっている。
右岸(東側)遠くにドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)が広がる。
残念ながら、撮影は進行方向左側(西側)のみで、写真はありません。



 
*12

上の写真: 東に面した丘陵の斜面や麓に村が散在する。
おそらくブドウや果樹の栽培に適した村なのだろう。
ここはアルザス地方、アルザスワインの産地です。

中央の写真: サービスエリアにて休憩。


 
< 13. ストラスブールに到着 >

ここは沃野と水運に恵まれ、東西のドイツとフランス、南北のスイスとベネルックス三国を結ぶ交通の拠点として発展して来た。
この地はドイツとフランスが何百年間も奪い合い、国名が幾度も替わった。
また宗教改革の先駆けとなる農民戦争の激戦地の一つでした。

私はこの地を訪れ中世以降に起きた事を少しでも理解したいと願っていた。
そして、ついに願いが叶った。
幸い、ここにで2連泊することになりました。


次回に続きます。




Tuesday, July 4, 2017

フランスを巡って 20: ボーヌからストラスブールまで




*1


今日はボーヌからストラスブールまでの車窓の景色を紹介します。
ボーヌ郊外のレストランでの昼食も紹介します。
撮影は旅行日5日目、5月21日(日)、12:00~18:30です。



 
< 2. 走行ルート >

上の写真: 昼食のレストランがある丘からの景色。
ブドウ畑が広がっている。

下の写真: ボーヌからストラスブールまでのルート。
地図の上が真北です。

今回の旅行では、1日の合計走行距離が500km近くなるのが2回、300km台が2回ありますが、この日は合計約500kmになる最初の日になります。



 
< 3. ボーヌ市街からレストランまで >

上の写真: ボーヌ市街を抜け、直ぐ近くの丘の上のレストランに向かう。
時間は12:15頃。

中央の写真: 木立に囲まれたレストランの全景。
中央がテラス席、左がレストラン建物、右がテントのレストランで、ここで私達は昼食をとりました。
丘の上にあるが、周囲は木立が多く、眺望は遮られる。
レストランに12:20に入り、13:40には出発しました。

下の写真: 少し丘を散策すると、赤色や黄色の花が陽を受けて輝いていた。



 

< 4.昼食 >

エスカルゴが出ました。
私にはすべてが美味しかった。



 

< 5. いざ出発! >

レストランのある丘を下って高速道路へ向かう。



 

*6

やがて広い平野が続くようになる。



 
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*8

やがて遠くにヴォージュ山脈が見えて来た。
およそ道のりの半分は来たでしょう。


 
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のどかな風景が続く。
私達はライン地溝帯の中、ライン川の左岸(西側)のヴォージュ山脈の麓を走っている。
ライン川がフランスとドイツの国境になっている。
右岸(東側)遠くにドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)が広がる。
残念ながら、撮影は進行方向左側(西側)のみで、写真はありません。



 
*12

上の写真: 東に面した丘陵の斜面や麓に村が散在する。
おそらくブドウや果樹の栽培に適した村なのだろう。
ここはアルザス地方、アルザスワインの産地です。

中央の写真: サービスエリアにて休憩。


 
< 13. ストラスブールに到着 >

ここは沃野と水運に恵まれ、東西のドイツとフランス、南北のスイスとベネルックス三国を結ぶ交通の拠点として発展して来た。
この地はドイツとフランスが何百年間も奪い合い、国名が幾度も替わった。
また宗教改革の先駆けとなる農民戦争の激戦地の一つでした。

私はこの地を訪れ中世以降に起きた事を少しでも理解したいと願っていた。
そして、ついに願いが叶った。
幸い、ここにで2連泊することになりました。


次回に続きます。




Monday, July 3, 2017

何か変ですよ! 60: 残念なこと



*1



私は、日本の野党が残念でしかたがない。
日本が良くなるためには、健全な野党が是非とも必要です。
それが叶えられそうにない。


はじめに
今、現政権に憤慨している方は少なからずおられるでしょう。
しかし、現政権が倒れても、次に誰が日本のトップになるのか?
9分9厘、与党の中から少し見栄えの違う人物がトップになるだけだろう。
母体が何ら変わらない限り、結果は五十歩百歩と思いませんか?

野党は森友や加計の不正暴露に全精力を注ぎ込んで、トップを引きずり降ろそうとしているが、与党が引き続き政権を担うなら、それこそ元の木阿弥ではありませんか。
では、野党が政権を担えるのですか?
おそらく国民の大半は、今の野党にそれを望まないでしょう。
これでは、結局、今までと変わらない堂々巡でしょう。

今、我々にとって最重要課題は経済と平和であり、希望の未来を手に入れることです。
その足場を作る時です。

今日は、この問題を考えます。


残念な野党
多くの国民が政治に期待することは、景気が良くなることでしょう。
他に近隣諸国との軋轢とか、軍事的なこと、憲法改正もあるでしょうが、大多数はこれらを差し迫った問題とは捉えていない。

それでは野党に経済政策を託して良いと思う人がどれだけいるでしょうか?
私は、野党の個々の政策、大企業より国民優先、教育や育児負担の軽減などの施策は良いと思うが、大きなものが欠けていると思う。
それは景気を良くする金融と財政の一貫した施策です。

私は、野党に格差拡大と金融危機を招かない着実な成長戦略を持って欲しいのです。
今まで、野党はまったくこの姿勢が欠如していた。
只々、与党の政策を批難し、あわよくば国民の批難が高まるのを望んでいる節がある。
左翼系のマスコミも同様です。
この繰り返しでは、日本の政治は旧態依然のままです。

とは言っても、野党が与党の悪い政策を批難することには意味がある。
日本の与党(保守)は米国の保守(共和党)などに比べ、大きな政府の政策(福祉重視など)を取り入れており、良い結果を出している。
これが野党のおかげだと言い切れないが、批難していなければ、こうはならなかっただろう。
ここはやはり、二大政党の実現が不可欠です。

重要なことは、国民が野党に政権を担わせても良いと思えるように野党が変わることです。
与党を批難するだけでは、先はない。



*2


現政権の経済政策を考える
当然、与党には長期政権に付き物の弊害や、現政権の目に余る危さもある。
しかし、野党が反省すべき点を現政権から見出すことが出来る。

アベノミクス―インフレ目標、円安誘導、金融緩和、財政出動について見ます。

*インフレ誘導はインフレが安定し金利高騰が起きなければ、景気は良くなり、膨大な累積赤字が減ることになる。
先を予測することは難しいが、インフレ目標がいつまでも達成出来ないのは何か決定的なマイナス要因があるのだろう。

*円安誘導は、輸出を増やす効果を出している。
しかし一方で物価を上げ、結果的に賃金低下になるので、もう少し様子を見ないと分からない。
私が期待していなかったのは米国が円安誘導を許さないと考えたからでしたが、これは免れたようです(米国追従で)。

*金融緩和をかなりやっているが、効果が出ていない。
現時点では問題もなさそうだが、他国発の金融危機が日本に大惨事をもたらさないか心配です。

*財政出動は景気刺激に必要だが、相変わらず土建屋優先なのが問題です。
野党が唱えている人やサービスにもっと費やすべきです。

個々に長所短所はあるが、全体としてみれば米国の経済学者クルーグマンが唱える論理的な景気浮揚策に近いと思う。
たしかに、財政赤字の増大や大企業と土建屋優先は気になるが、狙いは良いと思う。


消費増税を見送ったことは良かったのか?
平気で嘘をつくことは許せないが、景気を交代させないためには良かった。
ただ、国の累積赤字は増えるばかりで止まる気配がないのが心配です。
本来なら無駄な出費を減らし、増税するなら累進性のある所得税が良い。

アベノミクスは、現状、効果が乏しく、目立ったマイナスも無いと言ったところでしょうか。
現状の経済指標の良し悪しには海外要因(石油、米国の景気)が大きく関わっている。
また日本では、高齢労働者の退職がピークを迎え、今後、労働者人口の減少を加速させていることが、失業率の低下と経済成長率鈍化を招くことになる。

ざっと現政権の経済・金融政策を振り返りました。
これほど大胆に景気浮揚を目指したことが国民の人気を得た大きな要素でしょう。
しかし、これら経済・金融政策で抜け落ちている重要な事がある。


与党に出来ない経済政策を目指せ
たとえ与党の経済政策が一時上手くいったとしても将来に大いに不安がある。

それは繰り返す金融危機と経済格差の拡大、増大する累積赤字です。
現状の欧米が進めて来た資産家・金融業優遇策が続く限り、被害が深刻になる一方の金融危機と拡大し続ける経済格差が大問題になる。
この為に既に欧米で火が付き、世情は不安になっており、やがて日本にも及ぶでしょう。
これらは規制緩和と税制改悪が招いたもので、また野放しのグローバル化によって世界中が巻き込まれ、競合するように悪化を深めている。
米国はこの推進の主役で、良くなる兆候はまったくない。

累積赤字の問題は、景気拡大が永続すれば薄らぐでしょう。
しかし、ほぼ10年ごとに繰り返している金融危機によって、その効果は打ち消される可能性がある。
またインフレが高進するだけなら、累積赤字の目減りと同時に庶民の生活は苦しくなる。
この問題はリフレ策をもっと検証しないと判断出来ない。


少し話題を変えましょう。
国民が経済面で望むものとは何か?
おそらく働き続けられること、低賃金からの脱出、将来の年金・社会保障制度の確保でしょう。

このためには経済成長が欠かせません。

安直な非正規雇用や首切りを規制することは必要ですが、現状のグローバル化した経済では、企業がすんなりと認めないでしょう。
年金・社会保障制度の確保には、当然、政府支出の見直しは必要ですが、これも持続的な経済成長が前提となります。

確かに、これからの時代は経済成長やGDP一辺倒ではなく、精神面重視に転換すべしとの意見があり、私もそうあるべきだと思います。
だからと言って、経済が低迷して良いわけではありません。

例えば、精神的な充足に必要なサービスを豊かにするにはその業界を支える経済成長が必要です。
例えば育児や教育のサービスを充実させるには、その産業の発展拡大が必要です。
つまり、箱物ではないサービス重視に移行すれば良いのです。

これらのことを野党は真剣に取り組み、実施可能な論拠を国民に示して欲しい。



*3


なぜ今の与党に期待できないのか?
与党が上記問題を解決する可能性はあるのか?
ゼロでは無いが、ほぼ無理でしょう。

東京都の選挙、米国やフランスの選挙からわかるように、国民は長く政権を担っていた政党を見限っている。
これには大きな潮流があるように思う。

この潮流とは何か?
私の見る限り、これは1980年代に始まった欧米の変革が発端でした。
これはサッチャー、レーガン、中曽根らによる大きな政策転換でした。
中でも大きいのは国営企業の解体とマネタリズムの採用でした。
この政策自身が悪いとは言えないが、これらにより労働組合の衰退、金融の規制緩和が進み、巨大な金融資産家が頻出した。
こうして金融資産家らのモラルハザード(節度を失った非道徳的な利益追求)と莫大な資金を使った政界支配と世論操作が常態化した。
これは米国において圧倒的な経済格差を生み出し、米国主導のグローバル化によって、世界と日本に伝染することになった。

こうなると国民の声は政治に届かず、やがて政治と政党に失望した国民は新しいものに飛びつくことになる。
これが現状です。

特に日本の場合、与党はまったくの米国追従なので、米国発の伝染病―経済・金融の悪弊による格差拡大と繰り返す金融危機、に罹患せざるを得ない。
これを打破できるのは、しがらみのない与党外と言える。
当然、官僚も同様ではあるが、官僚を排除してはならない。

大きな政策転換は可能なのだろうか?
19世紀末から米英を筆頭に労働運動が盛り上がり、労働者や女性の権利が向上した。
これが賃金上昇と格差拡大の是正に向かわせた。
そしてルーズべルトによるニューディール(ケインズ的な経済政策)が追い風となった。
残念ながら、国民が等しく経済成長を享受出来たのは1970年代までとなったが。

言えることは、良くも悪くも国と国民が、ここ百年の間に2回、政策転換を図ったのです。
今は、3回目の時なのです。



*4

野党が頑張るしかない
現状、日本は失業率が低く、格差も少なく、安全で福祉制度に大きな欠点はない。

今の与党の姿勢を放置すれば、金融危機を深め、格差を拡大させ、さらに浪費が続けば年金・社会保障制度の存続が脅かされる。

最大の経済低下の要因は労働者人口の長期減少でしょう。
これを補うには与党の箱物中心の財政出動ではなく人材・育児・移民への投資が不可欠です。

したがって野党は、与党に対抗して景気浮揚策を真剣に練り上げ、国民優先の政策に向かうべきだ。
それでなければ、いつまで経っても反対だけの野党で終わってしまう。
せっかく小選挙区にして、二大政党に向けた改革を行って来たのです。
今回の安部一強も、前向きに解釈したら、これまでのころころ替わる首相の状況から脱したとも言える。

どうか国民の皆さんも、二大政党を育て、まともな議論が国会で出来るような世の中にしようではありませんか。


どうもお読み頂きありがとうございました。