Thursday, February 12, 2026

連載 取り戻せ豊かな暮らし! 危機に陥る前に 第Ⅲ部 要約

 




 今、世界は危機に晒されているが、これから脱出するには意識改革、言い方を変えれば洗脳から脱するしかありません。手始めに、ここ1世紀の植民地支配や独裁から脱出した国々をみます。そこには、民主化を求める多くの市民とそれを導く指導者達の存在が不可欠であり、また世界の支援も必要だった。意思があれば流血を避けることは可能だった。国民の為の社会を取り戻すには、強い改革意識、問題の本質の理解、適正な改革目標が重要でした。けしてポピュリズムの勢いだけで事は成就しない。そうは言っても、保守層と富裕層に牛耳られた社会(金権政治)にあって、これを覆すことは至難の業です。資金力で選挙は左右され、議会と報道はコントロールされ、さらにSNSで踊らされ、貧しさに喘ぐ人々は、立ち上がる気力を失くしている。

 障壁の一つは我々の改革目標の選定ですが、模範例は北欧にある。北欧は70年近く福祉国家として成功しています。経済的豊かさと幸福度は全世界で、いつも10位以内にあります。さらに抜群の国際競力と健全な財政を併せ持ちます。しかも資本主義を受容し、グローバル経済と10%を越える移民受け入れている。
 残念ながら日米英は北欧のやり方を取り入れる前に、民主主義を取り戻すことが先決です。なぜなら、両者には政治姿勢だけでなく、それを支えている国民の意識があまりにも違い過ぎるからです。北欧政治の神髄は、企業と労働者が協働して経済成長と豊かさを手に入れ、幸福や安らぎを充分な公共サービスでカバーしていることに尽きます。実は、かつてこの政治姿勢は、19世紀後半から20世紀前半の英米で率先して取り入れられていたのです。残念ながら日本は軍事国家だった為に、このチャンスを逃しました。

 二つ目の障壁は、民主主義とグローバル化への疑念です。右翼ポピュリズムは軍事独裁に走り易い。またトランプ周辺のIT企業家は極端な自由主義(リバタリアン)を求めている。この二つは戦争誘発と労働者の待遇をより悪化させることになります。結論は、自由民主主義と適切な規制を伴うグローバル化が、今後も必要です。日米は既に民主主義から逸脱している。その端的な例は、大半の国民の実質賃金が数十年も横這いでありながら、超富裕層が続々と生まれ、男女差別が強く残っている事にある。

 野放図なグローバル化が様々な問題を引き起こして来た。しかし、やり方の間違いを正せば良いのです。その例として国内産業の空洞化を見ます。本来、先進国は絶えず付加価値の高い新規産業を創出し続け、古い産業は国内から徐々に消えるのが自然なのです。これに対応するために労働者は転職に耐えるスキルアップと転職支援の政策が不可欠なのです。ところが政府は安直に、新規投資を国内ではなく海外に向け、円安を目論み、人気取りの為に古い産業と労動者の保護を謳い、国を衰退させてしまったのです。この逆を北欧は行っているのです。一方で、グローバル化こそが、多くの発展途上国を豊かにし、公衆衛生の水準も向上させ、先進国に豊かな商品を届けるようになった。今後、地球の限られた資源と環境を守り、紛争を抑制するには、一層の国際協調が迫られます。この為にもグローバル化は必然なのです。

 人類進歩は改革の連続でした。その例を男女平等の歴史から見ます。この問題の発端は約800万年前、チンパンジーの祖先とヒトが分岐した時に始まった。メスは、巨大な頭脳を持つ胎児から幼児迄、長期に育児に専念しなければならなかった。これはオスとの強力な配偶関係を必要とした。この事がメスとオスの性差を進化させた。後に、人間社会が大きくなり始めると、家庭で育児に専念する女性と社会組織を操る男性に役割が別れていった。この事が、神話や聖典に記され、後の社会にまで影響を与えるようになった。やがて技術進歩により女性の社会進出が起こり、権利意識の向上が相俟って女性から権利獲得が求められ今に至っている。権利平等への道のりは長いが可能なのです。

 未来を予測することは難しい。1970~90年代に書かれた経済書には、現状の経済格差、分断、産業空洞化を予測出来たものはなかった。1980年代に始まる新自由主義の末路を指摘し始めるのは2000年代になってからです。経済の底流を読み、かつ労働者の立場を考察した日本人は数人を除いていなかったが、米国人には、非常に重要な警鐘を鳴らし、的確に今を予測していたものがあった。

 最後に、アセモグル著「技術革新と不平等の1000年史」を取り上げます。著者は、現在進行中の技術革新を自由放任すれば、社会全体をむしろ悪化させると説く。著者は、その悪い例として英国の産業革命、20世紀初頭の米国の自動車黎明期を、その打開策の好例として、ルーズベルトのニューディール政策を挙げている。さらに現在の新自由主義経済のままでは、悪化は必定としている。

 我々国民は、先ず民主主義を取り戻すことから始めなければならない。



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