Tuesday, May 13, 2014

人類の歩みと憲法 6: 絵に描いた餅にしない為に 

 

< 1. ヒトラー >

これから、憲法の重要な二つの問題を扱います。
それは国家権力を暴走させない、国家間の戦争を防ぐ工夫です。

国家権力を暴走させない工夫
多くの血を流して手に入れた理想の国家が国民に牙を剥き、腐敗・暴走することは多い。
古代アテネは数百年を掛けた改革により民主主義を体現したが、百年と続かなかった。
市民が王を倒したフランス革命による共和制も、ナポレオンの独裁により20年と保たなかった。
つまり人権擁護の文だけでは絵に描いた餅にすぎない。


ヒトラー首相とヒンデンブルグ大統領 

< 2. ヒトラー首相とヒンデンブルグ大統領 >

ヒトラーの独裁
あれほど先進的で民主的なワイマール憲法の下、ヒトラーは独裁者となり、15年で憲法の命脈は絶たれた。
ヒトラーの行動を追い、憲法の欠陥を見ます。

1923年、ドイツで最も鷹派のバイエルン邦のミュンヘンで、中央政府(ベルリン)転覆のクーデター未遂事件が起きます。
逮捕抑留されたヒトラーは、この時の高潔で愛国心に満ちた態度が好感され、広く知られるようになります。
29年の世界恐慌による極端な経済悪化は、彼の明快で悪をなで切る言動によって、共産党、社会党、保守党などを尻目にナチ党は票を伸ばします。
32年、彼は2度目の大統領選にも敗れたものの、ナチ党は国会で第一党に躍り出ます。


ドイツ国会議事堂放火事件

< 3. ドイツ国会議事堂放火事件 >

この年、国会議事堂放火事件が起きます。
即、首相である彼は大統領に戒厳令(憲法の人権条項停止)を奏上し、認可を得ます。
彼は犯人が共産党員だとし、多くの国会議員を逮捕し、さらに「社会党員は投票出来ないとする規則」を追加し、ナチ党は憲法改正に必要な2/3議席の賛成を可能とした。
そして一気に、全権委任法を可決し、憲法改正を行った。
これによってナチ党の一党独裁、彼の総統が確定した。

こうなると議会と大統領は完全に意味を無くし、憲法の理念は葬られた。
34年、大統領は以前から体調をこわしていたが、在任のまま死去した。
この年、ヒトラーの国民の支持率は90%あった。

そして第二次世界大戦へと突き進み、世界の死者は5千万人を越えた。

ドイツ軍の進軍を歓待する人々 

< 4. ドイツ軍の進軍を歓待する人々 >

何がヒトラーの独裁を許したのか?
一番大きな理由は、彼が言葉巧みにあらゆる人々を味方につけたことです。
政権を長らく握っていた大統領や国軍の参謀達をうまく騙した(戒厳令など)。
先鋭化した突撃隊を自ら粛正し、資本家や保守層を安心させ援助を得た。
やはり彼が大多数の国民を心酔させたのが一番大きい。

突撃隊

< 5. 突撃隊 >

憲法の欠陥とは
一番は、国会議員の大量逮捕を許す戒厳令を大統領の一存で実施出来たことです(騙されたが後の祭り)。
この事が、ヒトラーが反発を招くことなく独裁者になることを可能にした。
当時、違憲裁判が行われていれば、違った結果を生んだかもしれない。
もう一つは、比例代表制を採用していたために少数多党化が起きやすく、このことが不安定な内閣を生み、政治の混乱を招く遠因になった。


















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