Friday, June 24, 2016

何か変ですよ! 44: 本当に恐ろしいことは・・・


    

安全や平和を守るには我々は何を優先すべきか?
身近な所にその答えはあります。





< 2. 日本の交通事故と銃による死者数 >

車社会と銃社会
日本では、交通事故の死者は毎年約4千人、銃による死者は毎年10人ほどで共に減少しています。
米国では、交通事故の死者は毎年約3万人、銃による死者は毎年約3万人で近年増加傾向にあります。
尚、米国の人口は日本よりも2.5倍多い。

両国共に、非常にたくさんの人が死んでいますが、日本の方が遥かに安全で平和です。
この違いにヒントがあり、最も本質的な視点が隠れています。

交通事故と銃犯罪には共通点があり、それは国民が被害者にも加害者にもなることです。
そこで、日本では加害者の発生を減らすべく、警察が交通違反と暴力団の取り締まりを強化することで、共にピークの1/4に減らすことが出来ました。
一方、米国では有効な施策がとれず、特に、銃による死者は増加傾向にあります。注釈1.
米国の一人一丁以上の銃保有率は、明らかに銃犯罪と自殺者の増大を招いている。注釈2.

そこには基本的な社会通念の違いがあります。注釈3.
日本では、銃は武器と考えられ禁止されているが、米国では逆に防具または抑止力とみなされ奨励されている。




< 3. 米国の交通事故と銃による死者数 >
上の図: 米国の銃社会の一面。
下の図:赤線が銃殺人、青線が交通事故死。


このことから言えること
人々は毎年多くの人が周囲で死亡していても、その事件や事故に自分が遭遇するとは考えず、ましてや加害者になるとは思わない。
しかし、加害者の発生を極力減らすことで、社会の安全性は格段に高まる。
米国社会は、銃によって死者だけでなく、あらゆる犯罪も増大させてしまった。

米国はなぜ日本のように銃規制が出来ないのだろうか?
色々理由はあるが、一つ重要なことがあります。
それは一度、銃が蔓延してしまうと、そこから徐々に銃を無くすことが困難だと言うことです。
その理由は、個人にとって銃使用(攻撃)のメリットは明確だが、保有する損失がほとんどないことで保有競争に陥り易いことによります。
しかし社会全体、長期的にみればその損失は非常に大きいのです。
この理解は重要で、最新科学でかなり解明されています。注釈4.


まだ解決手段は一つ残っており、かつて各国で、日本でも行われたことはあります。





< 4. タカハトゲーム >
重要な要件として、ハトは全員に餌が行き渡るメリット、タカは怪我をするデメリットがある。

皆さんに知って頂きたいこと
安全や平和を確保することは容易ではありません。
目先の危険や恐怖に目を奪われ、一歩道を踏み誤ると取り返しのつかないことが起こりうるのです。
そして逆戻りは困難で、行き着くところまで行ってしまうのです。

それは日本の明治維新から太平洋戦争への道、米国のトールマンドクトリンからベトナム戦争への道、英国の委任統治領パレスチナから中東戦争への道が語ってくれています。
このことから教訓を得ることは難しいが、一度進み始めると止めることが不可能だったことだけは理解出来るはずです。

一つの問題点が判明しても、まだまだ現実の恐怖や他の危険がこの社会にはあります。

次回に続きます。


注釈1
かつて米国の銃保有率は、銃規制世論の高まりを受けて低下傾向にあったのですが、現在はまた高まっている。
米国の二大政党は銃規制と銃擁護と正反対の政策を採っており、州や年代によって銃保有率と犯罪発生に差があります。

注釈2
テロ事件が起きると銃が買われ、その必要性が訴えられるが逆効果です。
米国の2003年から10年間の銃による死者は35万人で、テロによる死者は312人で、その差には1千倍の開きがある。(US版『WIRED』より)
むしろ銃が増えるほど、犯罪と自殺者が増える。
米国の自殺は銃によるものが多く、銃の保有率と自殺率はほぼ比例している。
この状況は、私の連載「私達の戦争17~22: 銃がもたらすもの1~6」で詳しく説明しています。

注釈3
米国では、憲法で自衛権として銃の保有と自警団が認められています。
これは建国時、英国から銃で独立を勝ち取った事、さらには北米原野を銃で開拓していった経緯が今に尾を引いていると言えます。
この自警団と各州の独立性を堅持する姿勢により、第二次世界大戦後の国連で米国が戦争拡大の主要因であった集団自衛権を強く唱えることになり、米国の離反を恐れた各国が条約に盛り込まざるを得なかったのです。
もし盛り込むことが出来なければ、米国議会が批准せず、国連による団結は瓦解したのです。

注釈4
この手の問題は、タカ―ハトゲームと呼ばれるゲーム理論で扱われています。
これは闘争を好む固体と闘争を好まない固体が、一つの集団内で淘汰を繰り返しながら安定する状態をシュミレーションしています。
その結果は多くの人にとって常識とは異なりますが、実際の動物社会と比較しながら研究が続いています。
この理解は、社会や進化への理解を助けてくれます。
本「進化ゲームとその展開」佐伯・亀田編著、共立出版刊をお奨めします。
認知科学、進化論、動物行動学、心理学で研究されています。











Thursday, June 23, 2016

Bring peace to the Middle East! 19: Israeli-Palestinian conflict 1: voices of the young 1




< 1. the book >

I introduce voices of people living in Israel and Palestine where the conflict continues, several times.
My reference comes from the books reported on the actual place.
"Seeing the Middle East and Arab world in films" finished.


The book
This book was published in 2003.
The book's title means "would talk about own honest feeling".
The author is Yagi Kenji, photographer, is addressing the Palestinian issue, and interviewed 100 people locally.
In the book, he introduces voices of Muslim and Judaist, the will of an Israeli refusenik or a Palestinian suicide bomber.
He does 15 common questions to 45 youths and the readers can understand their thought about the conflict.
The targets of the questions are 25 men, 20 women, 22 Judaist of Israeli, 21 Muslim of Palestinian, 2 persons from other religion, and their age is 15-25 years old.

I choose five cases from the questions, summarize the result and introduce my impression and the background in twice.
A note, total number of people isn't equal to total number of the answers because the answers to the questions have the plural number.





< 2.  Israel and autonomous Palestinian areas >

Black dashed line indicates the cease-fire line in 1949, green part does the autonomous Palestinian areas, cream part does Israeli territory, and many triangle marks are Israel forces garrisons.


Question,  " What do you think religion?  Do you think that God exists?"
Something seeing from the answers

Their religious devotion is fervent, and all the Palestinians believe in God.

This may be caused by Palestinian is earnest Muslim, and in addition, their religious devotion is deep when the society becomes hopeless.

Four Israelis occasionally doubt God and think that God may bring an evil.
As Israel becomes dominant and rich, the young feels war-weariness from the protracted conflict.





< 3. the conflict and change of the territory >

4 pictures are arranged in order of the following titles from the top, the First Middle East War in 1948, Israeli territory (white) keeps spreading, and the Fourth Middle East War in 1973.
The bottom map shows the autonomous Palestinian areas of the current West Bank.
The red lines show the separation barrier described in mentioned "the other son", and many blue points are the Jewish settlement that keeps increasing.




Question, "What is the war?"
Something seeing from the answers


The most of them consider in common that the war is an evil and due to a stupid act objectively.

I feel that they have a feeling of war-weariness from a lot of the answers.
I think that they together come to regard themselves as the victims by the war and terrorism, during half a century from beginning of the war.

However, some Palestinians think they should continue the war for justice.




    


Question, " Who is in fault concerning the war during this 50 - 100 years? "
Something seeing from the answers

I was surprised they one-sidedly don’t consider each antagonist in fault.
The answers indicating this are 11 cases of Palestinians, and 17 cases of Israelis, and this tendency is strong in Israeli.

I include "both side's fault, no comment, obscurity, all the members, a fate, and nobody's fault" in the answers.
The second most answers of Palestinian are 8 cases of neighboring countries (Arab, radicals, Jordan, Iran, Iraq), next 6 cases of the U.S.A, 5 cases of the U.K., and 3 cases of Israel.
There was not Palestinian answering own country is in fault.


The reasons that I suppose
l       The Arab countries began the Middle East war, but they suffered a crushing defeat and recognized Israel with forsaking Palestine.
l       The neighboring countries only arrange everything to suit their own convenience, and don’t rescue Palestine. Jordan of the east side seems to have been regarded that way in particular. And the oil-producing countries such as Saudi Arabia close to the United States, after all, it brings benefits to Israel.
l       Various radicals repeat terrorism and let the conflict spread, but the neighboring countries (including Saudi Arabia, Syria, Iran) support each radical separately.
l       The United States performed various interventions in the Middle East and the Islam zone (Arab and Afghan) more than half a century and planted the war and confusion.
l       The U.K. established a border in the Middle East after the World War I without permission, and finally escaped when it became problems.



The second most answers of Israeli are 2 cases of Arab, 2 cases of anti-Judea, 2 cases of Europe and America (include the U.K.), and next 1 case of the own country.
There wasn’t person answering Palestine is in fault.

I was surprised there is the anti-Judea in the answers.
When the world criticizes the severe act of Israel, they seem to consider it as age-old discrimination against Jew (anti-Judea).
Israel became more and more high-handed (the right wing) since Prime Minister Rabin (winning Nobel Peace prize) of the moderates was assassinated in 1995 by the Jewish young man objecting to the peace.
As one of the outcome, the separation barrier began to be made in the West Bank since 2002, and the total extension becomes 700km now.
In contrast, the United Nations did censure resolution, and there is certain American Jew group that stood up to have to correct such Israeli excessive act.

The young of the both sides don’t blame the responsibility of the war on each other, and consider that the causes are due to both sides, Arabic neighbor countries, and European and American.

This continues next time.











Tuesday, June 21, 2016

何か変ですよ 43: 何がちがうの・・




 


    


私は技術者として、日々、新しい事や困難な事、また職場改善を行って来ました。
成功するには的確な分析と予測が不可欠でした。
そこで今日は、平和を求める意見の違いについて考察し、その対立がなぜ起きるかを見ます。


    


次の要望に対して、あなたはどう思いますか?

1問目
「ある集落が武装集団に襲われるようになり、村民が銃の携行を望んでいます。」
この現場は中東の紛争地域だとします。

2問目
「ある学校でいじめが横行しており、被害者の親が子供に武器の携行を望んでいます。」
これは日本の場合です。

3問目
「抗争相手の暴力団の規模が遥かに大きいので、部下が重火器の武装を望んでいます。」
あなたは日本の小さな暴力団の親分だとします。



    


どう答えますか
あなたは武器携行や武装に賛成、反対、それとも別の解決案を提示しますか。

武装に賛成する人は、弱者や被害者の身を思っての判断でしょう。
反対する人は、なぜそれを軽視するのだろうか。
反対する人は一度、武装を許すと巷に武器と暴力が氾濫し、むしろ被害が拡大すると考えるらしい。

どちらが正しいのでしょうか?
答えは皆さん次第ですが、幾つかのヒントはあります。

1問目は、多くの人は賛成するでしょう。
米国でテロ事件後に銃購入が増えるように、当事者の身になると武器携行を拒否するのは難しい。
しかし、中東での大国の武器供与による武力衝突の拡大、米国の銃社会における銃犯罪の増大を知ると賛成出来ない面もある。
そして一度、それを許すと逆戻りは不可能に思える。

これは大いに悩むところです。
犠牲や被害にこだわり手を打たずに放置すると災厄は大きくなるばかりです。
もし、第2次世界大戦で連合軍が10万人の戦傷者発生をためらい、ノルマンディー上陸作戦を敢行しなければ、死者5千万人を超えた戦争を終わらすことは出来なかったかもしれない。
また南アフリカで、マンデラが同胞1万人の虐殺被害にこだわって和睦を求めなかったら、アパルトヘイトは終わらなかったかもしれない。
凡人にはこんな判断は出来ないが、英断が世界を救った事例です。


2問目はあり得ない設定ですが、おそらく賛成する人はいないでしょう。
非力な我が子が暴力的ないじめを受けるかも知れないのに、権利として対抗手段(武器)をなぜ与えないのでしょうか。
一番の理由は、別の解決方法(学校がいじめを減らす対策)を採るべきだと考えるからでしょう。
これは、日本人が社会を信頼し、個人が紛争に直接手を出さないという暗黙の了解があるからでしょう(別の理由もあるが)。
私はこの事が平和の為に重要だと考えていますが、今回は触れません。
米国なら違う結果になるでしょう。


    

3問目では、おそらく、あなたは現実的に判断し武装闘争を諦め、相手の傘下に入ることでしょう。

このような事例は幾つもあります。
冷戦時代の米ソが保有していた核弾頭は合計5万発でしたが、この時、日本列島を迎撃ミサイル網でカバーすべきだと真剣に考えた人はいないでしょう。
今より、不透明で遙かに恐ろしい時代でした。
例え核弾頭の飛来を迎撃しても、一度核戦争が始まれば無意味だったからです。
もっとも迎撃も不可能でしたが。

北朝鮮ミサイルの迎撃は現時点で100%では無く、今後益々完全防御は遠のくでしょう。
まして中国やソ連の核攻撃まで含めると、迎撃構想は破綻します。

往々にして、核ミサイル配備の抑止効果よりも、近隣に核兵器開発や配備の競争を招くことになります。
このことは米ソの核開発競争が物語っています。
詳しくは「私達の戦争 44、45」で扱っています。


何がポイントか
この平和を求める議論が噛み合わないのには理由があります。
それは、ある人は現実の恐怖を重視し、別の人は未来に起きるかもしれないより大きな惨劇を予想するからです。

現実の恐怖心を無視出来ませんが、社会が共有した恐怖が些細な誤解や対立から徐々に高まり、さらにマスコミや政府によって煽られた事実は世界や日本に幾つもあります。
また、そのような発端と動機はいつの時代にも存在します。

一方、軍拡競争が戦争を招く事例も事欠かないが、今回もそうなると言い切ることは出来ません。

一つの事実に対して、なぜこうも認識が異なるのでしょうか。
ある人は現実の社会に概ね満足し、権威や秩序に信頼を置きます。
この人は社会の現状維持を望み、時には過去の美徳を礼賛することになります。
一方、異なる外部社会に対して排他的になる可能性が高いようです。

ある人は現実の社会に不満を持ち、権威や秩序に疑いを持ちます。
この人は社会の変革を求め、理想の形を想定することになります。
一方、外部社会にその理想の事例を見出そうとします。

両者は、信頼するものが異なり、自分に合った情報やマスコミを取捨選択するようになって行きます。
ついには、都合の悪い歴史や科学的な情報をそれぞれ無視するようになります。
こうなると、両者の意見の違いは埋まらなくなります。


    


結論
知って頂きたいことは、それぞれ信頼している論理(平和を求める案)が、両者の脳にとって心地良いだけ、錯覚かも知れないことです。

そうであるなら、あなたの確信を疑ってみることをお薦めします。










Monday, June 20, 2016

Visiting from Tajima shore to Tango Peninsula 6: Daijyo-ji temple and Maruyama Ōkyo 1





< 1.  a temple gate of Daijyo-ji >


Today, I introduce the temple being on the way to the mountain from Kasumi Port in Hyogo.
There were amazing things in the seemingly ordinary temple.
Many pictures of Maruyama Ōkyo and the pupils were breathing there.
I introduce them several times from now on.



About Daijyo-ji temple

This is a temple of the Shingon sect of Buddhism, and it is said that priest Gyogi founded it in the 8th century.
Afterwards, it became extinct, but a chief priest of it achieved the restoration in the end of 18th century of the latter half of the Edo era.
When this chief priest visited Kyoto, he knew the talent of Maruyama Ōkyo, and gave him much money.  
After Maruyama Ōkyo became successful as an artist, he provided many pictures to this temple with 12 pupils to show its gratitude.
In this temple, there are more than one hundred of pictures and carvings, and the main works are still used in each room now.
So this temple is called Ōkyo temple.







< 2.  a main gate and the stone wall







< 3.  the entrance and an Ōkyo statue >

Upper photo:  if I passed through the main gate, I saw the excellent entrance hall that an Ōkyo statue was set in the center of.
Essentially, visitor enters the reception hall from this entrance hall, and opens the back shoji and enters a waiting room.
Tourist enters from kitchen of the right hand and pays the admission 800 yen.
And the tourist looks around many paintings of fusuma (sliding door), folding-screen paintings, and fretworks of ranma (transom) in the reception hall along with receiving explanation.





< 4.  the reception hall and a masterpiece of Ōkyo >

Upper photo:  the kitchen side of the reception hall.
This building is more than 200 years old.

Lower picture:  this is a national treasure, the half of folding-screen paintings that Ōkyo described pine trees covered with snow, and other museum has this.





< 5.  views of the main gate from in front of the reception hall  >




< 6.  main buildings >

Upper photo:  the reception hall.
Lower photo:  The right hand is Kannon-do hall and the left hand is Yakushi-do hall.





< 7.  views from in front of the Kannon-do hall >

Upper photo:  there is a garden between the reception hall and the left mountain, but I couldn't see it.
Lower photo:  Water just spouts out of the top point of a globular stone in the center of the stone washbasin.
The water flowing from the mountain gushed out of it intermittently, but I don’t understand the mechanism.

I introduce paintings of Ōkyo next time.









Friday, June 17, 2016

何か変ですよ 42: 今、不思議な事が・・・





< 1. 寄付で豪華な返礼品 >

今、米国の大統領選挙で起きていることは、日本と無関係だろうか?
突如降って湧いたようなトランプ氏の過激な発言。
実は、これと日本の「ふるさと納税」が結びつくとしたら?
かいつまんで説明します。



< 2. トランプ氏とふるさと納税? >


米国で起きていること
共和党のトランプ氏は排他的で、民主党のサンダース氏は社会主義志向で、双方とも主流から外れている。
しかし共通していることがある。
双方が両極端な主張を唱え、彼らを支持しているのは低所得層や若者層です。
既存の政党やホワイトハウスに絶望し爆発寸前に見えます。注釈1.

これはリフレ策を多く取り入れているヨーロッパ諸国も同様で、右傾化が目立っています。
この原因を難民問題とするのは早計で、これに遡る若年層の高失業率が長期にありました。
ここ半世紀にわたる欧米の経済政策と貧富の差の拡大がありました。
この不満に付け込むように過激で単純な解決案が発せられ、大衆は共鳴し始めている。

社会の鬱積しつつある不満を放置すると、何かを切っ掛けに突然爆発し、取り返しのつかないことになります。
歴史は繰り返します。注釈2


欧米の背景にあるもの



< 3. 米国の経済状況 >

グラフA: 米国の経済は日本に比べて素晴らしい成長を遂げています。
これは一重に米国のFRBやホワイトハウスのお陰です。

グラフB:  グラフAの赤枠の時期、リーマンショックから景気回復までの期間の所得階層毎の実質所得の変化を示しています。
これは、バブルが弾けた後、上位20%の所得は回復するが、残り80%は益々貧しくなっていることを示しています。

グラフC: 1970年代以降(黄枠)、上位所得層10%の所得の伸び、シェア50%に今にも届きそうで、格差拡大は確実なのです。
この格差拡大の傾向は欧州も日本も同様ですが、まだ米国ほどには悪化していない。
この日米欧の格差について、私の別の連載で説明しています。注釈3




< 4. 踊る「ふるさと納税」 >


日本の状況はどうか 
不思議な事例として「ふるさと納税」を取り上げます。
これは納税と言うより寄付なので、個人の自由であり、故郷を思う気持ちを大事にしたい。
しかし、そこには現代を象徴する奇妙なからくりが潜んでいます。
功罪は色々あるでしょうが、ここでは3点について考察します。


先ず、経済効果を見ます
寄付受け取り側の自治体の多くは財政規模が小さく、税収不足に苦しんでいるはずで、寄付金はすぐに有効利用されるはずです。注釈4.
さらに返礼品(特産品)を地元業者に発注するのですから、地元経済の浮上に繋がる。

一方、「ふるさと納税者」が暮らす自治体の住民税と所得税はほぼ同額減額(控除)されます。
例えば、年間給与600万円の独身の場合、年間上限額77000円の「ふるさと納税」を行って、2000円の自己負担だけで残り全額75000円が税金控除されます。
こうして全国から返礼品目当てに別の地方に税金(寄付)が動くだけなのです。
そうは言っても全員が控除するわけではないので、全体で税収は若干増えるでしょう。(現在10%ぐらいか?)注釈5.
もちろん善意の人もいますので、ここでは大勢について語ります。

ここまでの説明では、経済効果はプラスマイナスゼロで、全体として増収分だけがメリットと言うことになります。



< 5. ふるさと納税の仕組み >

何が問題なのか
「ふるさと納税」の返礼品の相場が寄付の4割だとすれば、前述の例で77000円を寄付して30800円分の肉や魚、焼酎を受け取り、寄付をした人はそれらの購入費用を節約することになる。
この例では、2千円の手数料で15倍相当の商品が貰えるのです。
それも高額所得者になればなるほどその倍率(寄付限度額)がアップします。
この費用は国と自治体が負担、つまり国民の税金なのです。
現住所に納税している人にはこの特権がありません。





< 6. ふるさと納税の問題点 「ふるさと納税制度の検証」より >

表4より、2013年の「ふるさと納税」は総額142億円、一人平均107000円で、その控除額は住民税43%、所得税34%の計77%でした。
赤線が示すように年を追うごとに、ほとんど控除されるようになっています。

表3の赤枠が示すように、所得階層別の寄付金額シェアは、2000万円~1億円の所得階層が35.2%を占め、彼らの所得税控除は最大の40%になっています。
また黄帯の所得層が、寄付金総額のちょうど中位になっています。
つまりこの制度は高額所得者に有利になっており、節税の一手段として便利です。

言い方を替えれば、高額所得者向けの還付金のようなもので、贅沢品の無駄遣いに税金が使われていることになる。


さらに本質的な問題がある
それは個人が税制を恣意的に差配していることです。
本来、税制の大きな役割に再分配制度があります。注釈6.
しかし現状は節税や返礼品欲しさに、特定の焼酎や高級牛肉の購入に税金が使われ、本来必要としている公共サービスや社会福祉などに使う分が減ることになります。




< 7. 何が起きているのか >

寄付してもらう自治体は5割の返礼を行っても損をしませんし、寄付する方は節税や節約が出来るので、ブームが加熱して当然です。
グラフDが示すように、「ふるさと納税」は、2013年142億円、2014年341億円、2015年1653億円と幾何級数的に増加しています。
日本は全国的に税収不足なのに、こんな愚かなことが起きているのです。

つまり、個人と自治体は我欲につられ、この基本的な社会システムをなし崩しにしているのです。
それを政府は便宜を図り、加勢しているのです。
なぜこのような事が起きるのでしょうか?


欧米と共通するもの
この「ふるさと納税」は、2008年に耳目を集め、軽い気持ちで始められた。
その後もエコノミストや政府はこの問題に触れない。
そして大方の国民は好感を持って傍観している。

皆が傍観している間に、高所得者層の節税や節約が進み、経済格差は徐々に広がって行くことになる。
さらに弱者をカバーする再分配制度も崩して行きますので、追い討ちをかけることになります。

グラフEが示すように、国民は日本政府の経済優先を信奉し盲従することにより、欧米と同じ道を急追しているのです。

「ふるさと納税」は些細な例ですが、気づかずに悪化を促進させている意味で特徴的な事例です。
これは違法でないタックスヘイブンや、所得税でなく消費税で増税したい政策と同じなのです。

今、国民の良識が問われているのです。


注釈
注釈1
クリントンが良いと言っているわけではありません。
ここ数十年、共和党と民主党への支持離れが徐々に進んでいました。
つまり、既存政党への失望は進んでいたのですが、今回、一気に噴出した。

注釈2
当然、ヨーロッパでリフレ策を採用していない国や、社会主義的な国、
難民を多く受け入れている国があり、状況は様々です。
しかし、どこかで難民問題に火がつくと燎原の火のように不満の捌け口として広がりました。
この状況は、19世紀半ばにヨーロッパで帝国主義が始まった時、1920年代にヒトラーが台頭した時と少し似ています。

注釈3
欧米の経済格差については「ピケティの資本論 12,14,29」で、
日本については「ピケティの資本論 25」で扱っています。

注釈4
税収不足の自治体ほど、寄付金は市民に直結する事業に直ぐ使用され、公共サービス向上と返礼品の売り上げ増で大いにメリットがあるはずです。
しかし、寄付が一過性のブームで終わる可能性がある為、自治体は計画的な事業計画が出来ない。
また返礼品競争の過熱は財政的なメリットを小さくしている。

注釈5
通常、寄付の税金控除は確定申告しなければなりません。
しかし、2015年4月からは「ふるさと納税」の控除手続きの簡易化と控除額アップを行いました。
色々、政府は通常の寄付に比べ優遇税制を行っています。

注釈6
再分配制度の目的には弱者救済や格差是正もありますが、景気浮揚の効果もあります。
例えば、還付金を高額所得者と低所得者のどちらに与える方が景気浮揚に繋がると思いますか。
低所得者ほど、その金を貯蓄出来ず消費に回さざるを得ないので、実体経済が循環し始めます。
一方、高額所得者は貯蓄か金融商品への投機の可能性が高い。
つまり、再分配制度を崩すことは、景気後退に繋がる可能性もあるのです。




Tuesday, June 14, 2016

地中海とカナリヤ諸島クルーズ 19: テネリフェ島 1




 


< 1. テイデ山 >

今日から、数回に分けてスペイン領カナリヤ諸島にあるテネリフェ島を紹介します。
この日の観光は、自然の神秘さや雄大さ、異様さに驚かされた1日でした。
2016年3月8日に訪れました。

テネリフェ島について
この島は標高3718mの火山テイデが大西洋から突き出した形をしており、島の最大長さは約80kmあります。

私が旅行前に興味を持っていたのは、この大西洋上の島々がイベリア半島の航海者達に遠洋航海を慣れさせ、大航海時代が始まるとアメリカ大陸への中継地となったことでした。
しかし来てみると、この島は人口90万を擁する瀟洒な建物が並ぶ大リゾート地でした。

しかし、驚きはそれだけではなかった。




< 2. テネリフェ島の地図 >
上の地図: 三つの赤丸は寄港地を示しています。
黄線は航路で、我々はカサブランカからテネリフェ島に行き、次いでマデイラ島に寄り、地中海に戻ります。

真ん中の写真: 我々の船は赤矢印のサンタクルス港に着岸し、そこからバスに乗り黄線の峰伝いに進んだ。
青い矢印が途中、休憩したレストランです。
今日の写真は、この間のものです。
テイデ山の火口部とサンタクルスの町の紹介は後になります。



< 3. 漆黒の向こうに、島の灯りが >

夜明け前から、待ちきれずデッキに出て島影を追いました。
遙か遠くに、町の灯りで皿を伏せたような島影が浮かび上がっていました。
島に近づくにつれて、島は厚い雲で覆われているのがわかりました。
全景が見られないのは無念であったが、微かに見える海に落ち込む裾野はその長大さを想像させるには充分だった。




< 4. テネリフェ島に上陸 >

夜明け後、下船し観光バスに乗り、一路、テイデ山に向かう。
途中、飛行場のあるかつての主都、ラ・ラグーナを抜けて進む。
厚い雲に覆われた森林を進む内に、私は意気消沈気味になっていた。




< 5. 厚い雲を抜けると >

かなり標高を上り森の様子が変わる頃、厚い雲は途切れ始め、やがて大きく視界が広がった。
我々は、何時しか雪で覆われた山肌に囲まれていた。
そしてギラギラ輝く太陽が降り注いでいた。




< 6. 雲海の上 >

雲海はテネリフェ島から遙か遠くまで広がっていた。




< 7. テイデ山の山頂を望む >

途中、バスを下車して、しばし撮影タイム。

この場所で撮影した18秒の映像です。




< 8. レストランにて >

道路の分岐点にレストラン、Restaurante El Portilloがあり、ここで休憩を取りました。
着いた時は晴れていたのですが、またガスがかかり始めました。
ここには観光客だけでなく、登山を楽しむ人がここから出発していました。
テイデ山の頂上が大きく見えて来ました。
次回は、この道を進んだ所にある山頂の南側に広がる火口を紹介します。




< 9. テイデ山に別れを告げて >

この2枚の写真は、火口を観光後、午後、帰路についたバスから撮影したものです。
正に、神が与えたもうた景色。
この時期、大西洋上で雪山を見るとは思っていなかった。




< 10. 雲海に向かって下山 >

素晴らしい景色ともお別れです。


次回は火口を紹介します。