Sunday, January 12, 2014

社会と情報 5: 告発者の苦闘

映画「インサイダー」、ワイガンド役のラッセル・クロウ 


< 映画「インサイダー」、ワイガンド役のラッセル・クロウ >

前回に続いて、内部告発者ワイガンド博士の闘いを紹介します。

タバコメーカーの首脳らが下院の保健環境小委員会に喚問された。
そこで首脳達はぬけぬけと「ニコチンに中毒性はないと信じている」と証言した。
彼は、沈黙を続けることで、この首脳連中と同じ罪を犯すことに気づいた。
彼は政府の食品医療品局に、匿名を条件で協力することにした。


インサイダー」、番組プロデューサー役のアル・パチーノ

< 「インサイダー」、番組プロデューサー役のアル・パチーノ >

1年後、彼はさらに一歩踏み込んだ。
彼は、CBSの人気ドキュメンタリー番組のプロデューサーに、タバコ会社の不正を告発する極秘ファイルを送った。
そのプロデューサーは、嫌がらせ受けて恐れる彼を説得し、インタビューに成功する。
博士は、会社がタバコの健康調査データの改竄、首脳の中毒性を知っていながらの偽証、有毒物資の使用などを、カメラの前で語った。
「私は会社の中で不正をやめさようと努力しましたが、それが出来なければ外でやるしかない。」
「私は、他人を害している会社への忠誠よりは、社会への義務を選ぶ。」


インサイダー」、番組プロデューサー役のアル・パチーノ

< 「インサイダー」 >

しかし、そのインタビューは放映されなかった。
それは、CBS首脳がタバコ会社からの巨額の賠償請求を恐れたからでした。
ワイガンド博士もタバコ会社から秘密保持契約違反で提訴された。
一方、報道の役割を信じCBS首脳に訴え続けた番組プロデューサーは番組を降ろされ、辞めることになる。
その間、正体不明の強迫、プライバシーを暴く怪文書がばらまかれ、彼と家族は窮地に追い込まれていた。

数ヶ月後、ミシシッピ州政府がタバコ会社を相手に起こした訴訟で、彼は証言することにした。
彼は世間に訴える最後の機会だと考えたが、これもタバコ会社の申し立てで非公開となってしまった。
逆に、彼が法廷で証言した日に妻と子供が消え、妻からの離婚請求で家族は崩壊した。



映画「インサイダー」、ワイガンド役のラッセル・クロウ

< 「インサイダー」 >

しかし、堕ちていくのはここまでだった。
先ず、ニューヨーク・タイムズ紙がCBSの放送見送りを取り上げ、厳しく非難した。
次いで、ウォールストリート・ジャーナル紙が、先述のミシシッピ州政府の非公開裁判での彼の証言をすっぱ抜き、さらに彼を中傷する怪文書が事実に反することを一面の記事にした。
するとCBSは一転して、ワイガンド博士のインタビューを放映した。

ついに、タバコ会社BWは屈服し、各タバコ会社は各州政府からの訴訟において和解金40兆円を支払うことで合意した。
BWはワイガンド博士の訴訟を取り下げ、その合意書には「タバコ産業の『内部告発者』に、最大限の保護を提供する」との規定が盛り込まれた。

次回、その後について書きます。

注、主に「内部告発の力」奥山俊宏著を参考にしました。





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